韓国大手通信3社がMWC26で仕掛ける次世代AI戦略――SKT・KT・LGUプラスが描く未来図

2026年3月、スペイン・バルセロナで世界最大規模のモバイル通信展示会「MWC26(Mobile World Congress 2026)」が開催されます。韓国の通信業界にとって、このイベントは単なる技術展示の場ではなく、グローバルステージでの国家的威信がかかった大舞台。SK텔레콤(SKT)、KT、LG유플러스(LGUプラス)という韓国通信3社が、それぞれ独自のAI(人工知能)ロードマップを公開することになり、業界関係者からは高い注目が集まっています。

注目すべきは、3社が「技術デモ」ではなく「実装できる本物のAI」を全面に押し出そうとしていることです。韓国のデジタル産業は世界で最高水準を誇ってきましたが、AI時代の到来で、その競争軸が大きくシフトしています。今回のMWC26での発表は、韓国がAI競争にどのように立ち向かうのか、その戦略の違いを明らかにする重要な機会となるのです。

■SKT――独自開発AIモデルで技術力をアピール

SK텔레콤が掲げるのは「独自AI基盤モデル(A.X K1)」による差別化戦略です。1月に段階的進展を遂げたというA.X K1は、519B(5190億個)という圧倒的なパラメータ規模を誇ります。これは単なる数字ではなく、韓国がグローバルなAI技術競争で戦える水準の基盤を整備したことを示す証拠といえるでしょう。

SKTの展示エリアでは、このモデルの実際の動作をリアルタイムで見学者に示す予定です。技術仕様だけを説明するのではなく、目の前で動く実機を見せることで、単なる理論ではなく実用化段階のAIであることをアピールする戦略は、グローバル参観客を納得させるのに効果的でしょう。

展示の中身も多彩です。仮想世界で現実をシミュレートする「デジタルツインプラットフォーム」や、ロボットに学習能力を付与する「ロボットトレーニングプラットフォーム」など、物理的なAI(フィジカルAI)の領域にも力を入れています。さらにSKグループの傘下企業であるSK하이닉스(ハイニックス)やSK인텔릭스(SKインテリックス)の事例を並べることで、グループ全体でのAI活用の広がりを示す構成も見どころです。

SKが強調する「T.H.E. AI(by Telco, for Humanity, with Ethics AI)」というガバナンス体系は、AI倫理や規制対応への配慮を示すもの。AIが急速に社会に浸透する中での「責任あるAI開発」というメッセージは、グローバル企業から好感を持たれやすいポイントです。

■KT――「韓国的美学」と企業向けAIの融合

一方、KTが選んだ戦略は「光化門広場」をテーマにした展示空間です。세종대왕(世宗大王)の銅像を配置し、ソウルのシンボルである光化門の風景を再現するという「最も韓国的」なコンセプトは、一見するとテック企業の展示会場では意外性があります。

しかし、これは単なる装飾ではなく、深い意図があります。韓国の伝統文化と最先端技術の融合を視覚的に表現することで、「韓国型AI」の個性を世界に示そうとしているのです。

技術面では「에이전틱 패브릭」という企業向けAI運営システムを軸に据えています。このシステムは、複数のAI技術やエージェント(自動処理プログラム)を有機的に連携させ、企業の業務全般を自動化・効率化するものです。「エージェントビルダー」という標準テンプレート機能により、導入企業が素早くAIソリューションをカスタマイズできる仕組みも用意されています。

特に「エージェティックAICC」(AI基盤カスタマーセンター)という音声認識やチャットボット機能を統合したシステムは、コールセンター業務の大幅な自動化を実現する可能性を持ちます。これは日本でも課題となっている人手不足対策として、グローバルな関心が高まることでしょう。

展示エリアにはK-POPアイドル「코르티스(コルティス)」のAR(拡張現実)ダンスプログラムや「AI韓服体験」といった参加型コンテンツも盛り込まれています。技術と文化をうまく組み合わせる、いかにもKTらしい演出といえます。

■LGUプラス――「人間中心AI」で新時代を宣言

3社の中で唯一、昨年に続いて2年連続での単独展示館を拡張するLGUプラスは、「사람중심 AI」(人間中心AI)というコンセプトを掲げます。この表現は、AIが人間の労働を単に奪うのではなく、人間の能力を拡張し、より豊かな生活を実現するためのツールであるべき、という哲学を端的に示しています。

LGUプラスの展示の中心となるのが「익시오」(エクシオ)というボイスベースのパーソナライズドAIサービスです。これを物理的AIと組み合わせることで、日常生活にどのような変化をもたらすかというシナリオを提示する予定となっています。

同時に企業向けのAICC、そしてインフラレベルでの「AI데이터센터」(AIデータセンター)の運営や、ネットワーク全体にAIを適用する「자율운영네트워크」(自律運営ネットワーク)も出展されます。セキュリティ領域では「익시가디언2.0」というソリューションブランドも前面に打ち出され、単なるサービス提供者ではなく、インフラレベルでの総合的なAI対応企業としての立場を強調しています。

홍범식(ホン・ボムシク)LGUプラス社長は、MWC26の開幕式で基調講演を行う予定で、「콜 에이전트 시대」(コールエージェント時代)というメッセージを発信するとのこと。これは顧客対応の領域におけるAIの革命的な活用を示唆するもので、3社の中でも最も社会変化への言及が直接的なアプローチとなっています。

■背景にある韓国AI産業の選別圧力

なぜ3社がこれほど力を入れるのか。背景にはAI時代における通信企業のポジション危機があります。従来、通信企業は「パイプ役」に徹してきましたが、AI時代には自らが知識集約型のサービス企業へ転換することが求められています。

MWC26での発表は、単なる企業のPRではなく、韓国IT産業全体が世界的なAI競争にどう対抗するかを示す国家的なメッセージでもあるのです。中国のテック企業の躍進、米国のAI覇権確立という状況下で、韓国が培ってきた高度な通信インフラと技術人材をいかにAI領域で活かすかという戦略が、まさにこれから問われることになります。

日本のテック愛好家にとっても、このMWC26での3社の動向は見逃せません。AI時代における東アジアの技術覇権を巡る競争が、この展示会で一つの形を見せることになるでしょう。

出典:https://www.bloter.net/news/articleView.html?idxno=654859

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