「ヒップホップは、もう格好良くない(힙합은 안 멋져)」――。
この言葉、最近の韓国エンタメファンなら一度は耳にしたことがあるかもしれません。これは、実力派ユニットAKMU(楽童ミュージシャン)のメンバー、イ・チャンヒョク(이찬혁)が、数年前にある番組のパフォーマンス中に放ったフレーズです。当時は一種の「ウィットに富んだ皮肉」として面白がられていたこの言葉が、今、韓国の音楽シーンで笑えない「現実」として突きつけられています。
その象徴となっているのが、韓国に空前のラップブームを巻き起こした怪物番組「SHOW ME THE MONEY(ショウ・ミー・ザ・マネー、以下:SHOW ME)」の凋落です。
■ 時代を作った「伝説のサバイバル番組」の現在地
「SHOW ME」は2012年に放送を開始し、2023年までに計11シーズンが制作されたMnet(韓国の音楽専門チャンネル)の看板番組です。それまでアンダーグラウンドの文化だったヒップホップを、一気にメジャーシーンへと押し上げた功労者でもあります。
この番組の勢いは、かつて本当に凄まじいものでした。シーズン3で優勝したiKON(アイコン、6人組男性アイドルグループ)のメンバー、バビー(바비)の楽曲や、シーズン5の優勝者であるビワイ(비와이)の楽曲は、韓国の主要音楽チャートを独占。放送の翌日には街中で番組の曲が流れ、出場者のファッションが流行するなど、単なるテレビ番組を超えた「社会現象」だったのです。
しかし、最新の状況は一変しています。最新シーズンである「SHOW ME 11」の視聴率は、なんと0.6%(ニールセンコリア調べ)という衝撃的な数字を記録しました。かつては2〜3%、話題性ではトップを独走していた面影はありません。10年以上続いた長寿番組が、今、最大の危機に直面しています。
■ なぜ韓国の視聴者は「ラップ」に背を向けたのか?
なぜ、あれほど熱狂していた大衆は「SHOW ME」を見なくなってしまったのでしょうか。その裏には、今の韓国社会が抱えるヒップホップへの「疲れ」があります。
第一の理由は、「型にハマった演出」への飽きです。韓国の視聴者は非常に流行に敏感で、飽きるのも早いと言われます。「SHOW ME」は、参加者同士の過激なディス戦(相手を攻撃するラップ)、劣悪な環境から成功を掴むという「土のスプーン(恵まれない環境の比喩)」ストーリー、そして審査員の派手なリアクションといった「お決まりのパターン」を繰り返してきました。これが10年も続くと、さすがに新鮮味を失ってしまったのです。
第二の理由は、ヒップホップ特有の「フレックス(Flex)」文化への嫌悪感です。韓国では数年前から、自分の富や成功を誇示することを「フレックス」と呼び、一種のトレンドとなりました。しかし、長引く不況や格差社会の中で、若者たちの間では「派手な金自慢」に対して共感よりも冷ややかな視線が向けられるようになりました。「ヒップホップは格好良くない」という言葉の裏には、「いつまでお金や車の自慢をしているんだ?」という大衆の正直な気持ちが隠されています。
さらに、一部のラッパーたちによる薬物問題や、SNSでの不適切な発言といった「私生活のトラブル」も、クリーンなイメージを好む韓国の視聴者から敬遠される大きな要因となりました。
■ K-POPアイドルの進化と「境界線」の消失
もう一つの興味深い背景は、K-POPアイドルグループ自体の進化です。
かつては「アイドルがやるラップは本物じゃない」という偏見が強くありました。しかし、今やBTS(防弾少年団)やStray Kids(ストレイキッズ)のように、自ら楽曲制作を行い、世界レベルのラップスキルを持つアイドルが当たり前の存在になっています。
「SHOW ME」の最新シーズンで優勝したのは、女性アーティストとして初の快挙を成し遂げたイ・ヨンジ(이영지)でした。彼女は抜群の実力と親しみやすいキャラクターで人気ですが、彼女の成功は「番組の力」というよりも、彼女自身のYouTubeやSNSでの影響力が大きかったという見方が強いです。
つまり、わざわざ「SHOW ME」という枠組みを通さなくても、実力のあるラッパーはYouTubeやTikTok、そして洗練されたK-POPの楽曲を通じて、いくらでも世に出ていける時代になったのです。
■ 復活か、それともこのまま幕を閉じるのか
制作サイドは、次なるシーズン「SHOW ME 12」の準備を進めているという噂もあります。しかし、今の韓国の空気感を変えるのは容易ではありません。かつてのように「ラッパーが夢を売る時代」から、大衆が「誠実さや等身大のメッセージ」を求める時代へと移り変わっているからです。
韓国エンタメ界の雄であるMnetが、この逆風の中でどんな新しい仕掛けを用意するのか。あるいは、ヒップホップというジャンル自体が、一度「休息期」に入るのか。韓国の音楽シーンは今、大きな分岐点に立っています。
皆さんは、最近の韓国ヒップホップについてどう感じていますか?かつてのギラギラした熱狂が好きだった方もいれば、今の洗練されたアイドルのラップの方が馴染み深いという方もいるかもしれませんね。皆さんが「これぞ本物!」と思うラッパーや、最近お気に入りの楽曲があれば、ぜひコメントで教えてください!
出典:https://www.newsen.com/news_view.php?uid=202603171231212610
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