韓国の政治系ユーチューバーが企画したコンサートが、出演予定だった有名歌手たちの相次ぐ不参加宣言によって窮地に陥っている。このニュースは、韓流ファンの間でも注目を集めており、K-POPアーティストが政治的な活動にどう向き合うかという重要なテーマを浮き彫りにしている。
■出演者の相次ぐ不参加宣言で大混乱
事の発端は、保守系の政治ユーチューバー・ジョンハンギル(전한길)が主催する「3・1節記念自由音楽会」にある。3月1日の独立運動記念日を祝うコンサートとして、ソウル近郊の京畿道高陽市キンテックス(一山 킨텍스、大型イベント会場)での開催が予定されていた。
ジョンハンギルは2月21日、このコンサートのポスターを公開。そこには、テジンア(태진아)、ソプラノ歌手のジョンチャンヒ(정찬희)、元MBCアナウンサーのイ・ジェヨンなどの出演が予告されていた。
ところが、ポスター公開の直後から、すべての出演者が相次いで不参加を表明したのだ。
テジンアの所属事務所・ジナエンターテインメント(진아엔터테인먼트)は公式声明を発表。テジンア本人が出演を了承した事実は全くないと明言したうえで、「政治的な行事を一般的なイベントとして偽ってスケジュール確認の連絡をしてきた関係者を、名誉毀損で告訴・告発する予定」と法的対応を予告した。さらに同事務所は、ジョンハンギルが運営するユーチューブチャンネルが、テジンアの写真を無断で使用したことについても法的対応を準備中だと述べている。
■アーティストの苦悩が垣間見える
ジョンチャンヒも自身のSNSで不参加を明かし、詳細な経緯を説明している。彼女は口頭で出演依頼を受けていたが、ポスターを友人から送られて初めて、このコンサートの政治的性質を知ったという。その後、主催側に連絡して出演しないことに決めたそうだ。
イ・ジェヨンも聯合ニュースのインタビューで、「前日の夜に行事の性格を認識し、すぐに主催側に連絡して司会を務められないと伝えた」と説明。初めは「音楽会部分の司会をするだけ」という説明を受けていて、ジョンハンギルが関わっていることは知らされていなかったと述べている。
これらの発言からは、招待時に事実が隠蔽されていた可能性が浮き彫りになる。多くのアーティストが政治的なイベントとして最初から説明されていれば、判断が変わったであろう。また、自分たちの名前が無断で使用されることで、ファンに誤った情報が伝わるリスクに対する慎重さも感じられる。
■わずか6%のチケット販売率が示すもの
最も顕著な影響は、コンサートのチケット販売率に現れている。公演予定日の1週間前の時点で、R席3000枚中249枚(約8.3%)、S席7000枚中394枚(約5.6%)しか売れていない。合計で10000席のうち643席、つまり全体の約6.4%という深刻な状況だ。
これを他のコンサートと比較すると、その差は一目瞭然。同じ会場で同月13日に開催されたテジンアのファンコンサート「今日を越えて明日再び出会う道」は、チケット販売開始5分で満席になったというのだから、その落差は大きい。
■ジョンハンギルをめぐる背景
ジョンハンギルは元々、韓国史を教える予備校講師だった。だが最近数年間、ユーチューブで政治的な発言を増やしており、特に保守系の視点からの主張が顕著だ。1月には不正選挙論を展開し、その後も前大統領・ユン・ソクヨルの弾劾に反対する立場を明らかにしている。
こうした言動は物議を醸し、ネットフリックス(Netflix)のオリジナルドラマ「大暴落に騙された」では、講師役の特別出演シーンが編集で削除され、別の俳優に差し替えられるという措置にまで至った。その後、ジョンハンギルは講師の仕事を辞め、現在は極右系のユーチューバーとして活動している。
■コンサート開催直前の泥沼化
不参加宣言が相次ぐなか、ジョンハンギルは自身のユーチューブコミュニティで反論を投稿。「公演まで政治的立場によって忖度しなければならない現実が悲しい」「誰も来なくても、一人で『尹またもや』『ユン・ソクヨル大統領万歳』と叫ぶ」とコメントしている。
このドラマティックな展開は、K-POPやエンタメ業界での政治的中立性の重要性を改めて考えさせるものとなった。アーティストたちは、ファンとの信頼関係を守るために、慎重に判断しなければならない立場にある。テジンアなどが示した毅然とした対応は、そうした職業意識の表れともいえるだろう。
出典:https://www.asiatime.co.kr/article/20260223500178
コメント