韓国映画界で今、最も熱い注目を集めるヒットメーカーの一人、イ・ジョンピル(이종필)監督。イ・ジェフン(이제훈)主演の疾走感あふれるアクション『脱走(탈주)』や、働く女性たちの連帯を描いて日本でも話題となった『サムジンカンパニー1995(삼진그룹 영어토익반)』など、常に「過酷な現実を生きる若者たち」に寄り添った作品を送り出してきました。
そんな彼が今回、満を持して世に送り出したのが、Netflix映画『パ반느(파반느)』です。本作は、それぞれに深い心の傷を抱え、心を閉ざして生きてきた3人の男女が、百貨店の地下駐車場という場所で出会い、互いの存在に光を見出していく物語。韓国で愛され続けるベストセラー小説『死んだ王女のためのパヴァーヌ』を原作とした本作について、イ・ジョンピル監督が並々ならぬ情熱を語りました。
■ 10代からの夢だった「正統派メロドラマ」への挑戦
「この映画が世に出たというだけで、1000万人観客を動員する映画を作るよりも嬉しいし、幸せです」
インタビューの冒頭、イ・ジョンピル監督は照れくさそうに、しかし確信に満ちた表情でこう語りました。韓国で「1000万人映画(チョンマン・ヨンファ)」といえば、国民の5人に1人が観た計算になる、社会現象級の大ヒット作を指す言葉。映画監督にとって最高の栄誉とも言えるこの数字よりも、本作の完成が嬉しいという言葉には、彼の特別な思いが込められています。
監督にとってメロドラマ(恋愛映画)を作ることは、10代の頃からの夢でした。
「若い頃、アクションでもサスペンスでもなく、ただ人と人が出会って対話し、笑ったり泣いたりするだけの映画を観て、言葉にできない感情を覚えました。特に香港映画の名作『ラブソング(첨밀밀)』を観た時は、感動のあまり映画館から立ち上がれなかったほどです」
近年の韓国映画界では、スリラーや復帰劇、あるいはコミカルなラブコメディが主流となり、しっとりと情緒に訴えかける「正統派メロドラマ」は、実は貴重な存在になりつつあります。だからこそ監督は、今の20代に、自分がかつて経験したような「震えるような愛の物語」を届けたかったのだと言います。
■ 原作の「醜い女」という設定をどう乗り越えたか
映画化にあたって、監督が最も頭を悩ませたのが、原作にある「醜い女性」という設定でした。視覚的なメディアである映画において、一人の俳優の顔を「ブサイク」と定義し、格付けすることに強い抵抗を感じたそうです。
「誰かの顔を基準に醜さを規定しようとすること自体、ひどく居心地が悪かった。そうして悩むうちに、原作の本質から遠ざかっている気がしたんです」
そこで監督が辿り着いたのが、「外見の醜さ」ではなく「心の暗さ」に焦点を当てることでした。ヒロインのミジョン(미정)は、単に容姿が優れないのではなく、陰鬱で、どこか目を引く「火の消えた電球」のような人物として描かれます。
「愛を始める前の人間は、誰もが消えた電球のようなもの。けれど、愛を通じて誰もが光を放つことができる。愛する自信がなかった人物が、愛によって光を得て、その力で生きていく。それがこの映画のテーマです」
この解釈の変更は、ルッキズム(外見至上主義)が社会問題となっている現代の韓国、そして日本においても、多くの観客の共感を呼ぶ重要なポイントとなりそうです。
■ 子役出身の実力派、コ・アソンとの10年にわたる絆
ヒロインのミジョンを演じたのは、日本でも『グエムル-漢江の怪物-(괴물)』の子役時代から知られる実力派、コ・アソン(고아성)です。
実は、コ・アソンと監督はこの作品について10年も前から話し合っていたのだとか。監督は当初、彼女があまりに魅力的(美しい)なため、「ミジョン役には向かないのではないか」と断ったそうです。しかし、コ・アソンの放った一言が監督を動かしました。
「私は、この人物の『眼差し』を表現できます」
その言葉通り、彼女は華やかな百貨店という場所の裏側、地下駐車場という暗がりで生きる女性の孤独と、そこから漏れ出す微かな光を完璧に体現しました。役作りのために、監督と共に実際の百貨店の地下駐車場を何度も歩き回り、そこで働く人々の空気感を肌で感じ取ったと言います。
そんな彼女の傍らを固めるのは、ドラマ『シュルプ(슈룹)』で大ブレイクした次世代スター、ムン・サンミン(문상민)と、アーティスト「BIBI」としても世界的に活躍するキム・ヒョンソ(김형서)。この新鮮なキャスティングが、重厚なメロドラマに新しい風を吹き込んでいます。
■ 暗闇の中で光を見つける、すべての人へ
『パ반느』は、決してキラキラしたハッピーエンドだけを描く物語ではありません。ときには痛み、混乱し、別れを経験する若者たちのリアルな感情を丁寧にすくい上げています。
「地下駐車場という暗い場所で、互いに光を照らし合いながら生きていく。そんな彼らの姿を通して、今を生きる人々に温かなエールを送りたい」
イ・ジョンピル監督が10年以上の歳月をかけて温め、Netflixというプラットフォームを通じてついに世界へ解き放たれたこの作品。派手な演出やスカッとする展開はありませんが、観終わった後、自分の隣にいる大切な人、あるいは自分自身の心に、小さな明かりが灯るような感覚を味わえるはずです。
冬の足音が聞こえる季節にぴったりの、心に沁みる極上のメロドラマ。皆さんは、最近いつ「心揺さぶられる愛の物語」に出会いましたか?この作品が、皆さんにとっての「一生ものの映画」になることを願っています。
コ・アソンが10年前から切望していたという今回の役どころ、彼女の「眼差し」の演技に注目せずにはいられませんね。皆さんは、暗闇の中でも自分を照らしてくれるような存在に出会ったことがありますか?ぜひコメント欄で、映画の感想や、皆さんの「心の一本」を教えてください!
出典:http://www.srtimes.kr/news/articleView.html?idxno=198037
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