韓国ドラマや映画のロケ地としておなじみの、あの「宇宙船」のような建物がなくなってしまうかもしれない……。そんな衝撃的なニュースが韓国で話題となっています。
その建物とは、ソウルのランドマークである「DDP(東大門デザインプラザ)」。東大門(トンデムン)エリアの中心に位置し、その近未来的なフォルムで観光客を圧倒する巨大な建築物です。今、このDDPを取り壊し、跡地に「ドーム球場」を建設しようという政治的な公約が飛び出し、大きな論争を巻き起こしています。
今回は、なぜこのような話が出てきたのか、そしてDDPという場所が持つ深い歴史的背景について、韓国現地の声を交えてお届けします。
■ 突然浮上した「DDP解体論」の真相とは?
事の発端は、次期ソウル市長への出馬を準備しているチョン・ヒョニ(전현희)議員が掲げた公約でした。彼女は、現在のDDPを取り壊し、その場所に「多目的ドーム球場」を建設すると発表したのです。
これに対し、韓国国内では「せっかく定着したランドマークを壊すなんて、あまりに無謀だ」という批判の声が噴出しています。特に、現在のソウル市長であるオ・セフン(오세훈)氏が推進して作られたDDPを、政治的な対立から否定しようとしているのではないか、という見方もあります。
しかし、この論争の裏には、韓国の人々が抱く「失われた場所への郷愁」も複雑に絡み合っています。実はDDPが建っている場所は、かつて韓国スポーツの聖地と呼ばれた「東大門運動場」があった場所なのです。
■ 忘れられた「東大門運動場」とスポーツへの熱い想い
1925年、日本の統治時代に「京城(キョンソン)運動場」として開場したこの場所は、韓国初の総合競技場でした。暗い時代を生きる当時の若者たちにとって、スポーツは唯一の感情の噴出口であり、日本との試合に燃えた歴史的な場所でもあります。
解放後、名前を「ソウル運動場(後の東大門運動場)」と変え、韓国初の夜間照明が設置された野球場では、数々の名勝負が繰り広げられました。1982年に韓国でプロ野球が発足した際の開幕戦もここで行われ、当時のファンにとっては、まさに「思い出の詰まった聖地」だったのです。
しかし、2000年代に入り、老朽化と東大門エリアの再開発を理由に、多くの反対を押し切って運動場は解体されました。その後に誕生したのが、現在のDDPです。元記事を書いたイ・ヨング(이영철)教授は、「当時、運動場を残してドーム球場にしていれば……という未練は今も残っているが、だからといって今あるDDPを壊すのは間違いだ」と指摘しています。
■ 韓流ファンにとっても大切な「DDP」の価値
紆余曲折を経て2013年に完成したDDPは、イラク出身の世界的な建築家ザハ・ハディッド氏の遺作としても知られています。完成当初は「周囲の景観に合わない」という批判もありましたが、今ではソウルを象徴する圧倒的なアイコンとなりました。
韓流ファンの方なら、一度は映像で目にしたことがあるはずです。
例えば、大ヒットドラマ『星から来たあなた』(キム・スヒョン、チョン・ジヒョン主演)のロケ地として使われたほか、東大門一帯が舞台となった『ヴィンチェンツォ』(ソン・ジュンギ主演)など、多くの作品にその独特な姿が登場しています。また、毎年開催される「ソウルファッションウィーク」の会場としても有名で、K-POPアイドルや人気俳優たちが華やかにレッドカーペットを歩く姿は、ファンの楽しみの一つでもあります。
DDPは、いわば「最初は歓迎されなかったけれど、今では立派に成長した親孝行な息子」のような存在。ソウルを訪れる外国人観光客が必ず立ち寄る場所にまで成長した建物を、政治的な理由で再び壊してしまうことは、あまりに損失が大きいのではないでしょうか。
■ 伝統は壊すことではなく「積み重ねる」ことで作られる
記事の中でイ教授は、「前任者の業績を無視して破壊するだけでは、伝統は作られない」と強く語っています。たとえ成り立ちに議論があったとしても、長い年月を経て人々に愛されるようになった場所には、新しい歴史が宿っています。
ドーム球場や大規模公演会場が必要だという主張には一理ありますが、それが「必ずしもDDPの場所である必要はない」という意見が、多くの市民の共感を得ているようです。
ソウルを象徴する、あの銀色の美しい曲線が消えてしまうのか、それとも守られるのか。これからの議論の行方が注目されます。
皆さんは、近未来的で美しいDDPと、スポーツの歴史を刻む新しいドーム球場、どちらがソウルの街にふさわしいと思いますか?ぜひ皆さんの思い出や意見をコメントで聞かせてくださいね!
出典:https://www.kyeongin.com/article/1760032
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