2026年5月21日公開の『アイアム・ポポ』は、監督のキム・イルドン(김일동)が一人で約2カ月で完成させた韓国初の全編生成型AI映画です。中国でもAIが制作全般を担う新作映画が今夏公開を控えています。
■ 全編生成型AIによる韓国初の長編映画『アイアム・ポポ』
韓国映画界で、全てのシーンを生成型AI(人工知能)で制作した初の長編映画が登場し、大きな注目を集めています。2026年5月21日に公開を控えているキム・イルドン(김일동)監督の作品『アイアム・ポポ』は、意識と感情を持ったAIが家庭や公的機関、警察組織など社会の至る所に浸透し、影響力を行使する未来を描いた物語です。
内容自体はAIを扱った従来のSF作品と似ていますが、特筆すべきはその制作手法です。劇中に登場するロボット犬と散歩するランナー、夕食のメニューに悩む女性、ニュースキャスターといった全てのキャラクターの姿と動きを、生成型AIが作り出しました。ただし、感情豊かな表現を維持するため、キャラクターの声は専門の声優が担当し、シナリオもキム・イルドン監督自身が執筆しています。
現在の技術力では、映像美や完成度の面で既存の商業映画のレベルには及ばない部分もあり、観客にとっては物語を「観覧」するというよりも、生成型AIの作業成果を「見物」する側面が強いと指摘されています。しかし、俳優や大規模なスタッフを動員することなく、監督一人の力でわずか2カ月という短期間で長編映画を完成させた点は、映画制作の新たなパラメーターを提示したと言えるでしょう。
■ 制作過程の全てをAIが担当する中国映画や韓国の先行事例
AIを活用した映画制作の波は韓国国内に留まりません。隣国の中国でも、制作の全過程をAIが担当した映画『霊魂擺渡・浮生夢(영혼파도・부생몽)』の公開が控えています。この作品は、2014年に放送された人気ドラマを原作としており、キャラクターの生成から場面構成、視覚効果はもちろんのこと、音声合成や背景音楽、さらには最終的な編集作業までをもAIが担ったとされています。これは、生成型AIの活用範囲を一気に拡大させた事例として業界から注視されています。
韓国国内におけるAI映画の先駆けとしては、昨年、映画『犯罪都市』のカジノ版とも言われるドラマ『カジノ』を手掛けたカン・ユンソン(강윤성)監督が、国内初のAI活用長編映画『中間界(중간계)』を発表しています。この作品にはピョン・ヨハン(변요한)やキム・ガンウ(김강우)といった実力派俳優が出演しており、外見上は既存の商業映画と変わりありません。しかし、怪獣(クリーチャー)の描写や車両の爆破、建物の崩壊といったスペクタクルなシーンにAI技術が投入されました。
従来のコンピュータグラフィックス(CG)を活用する場合と比較して、時間と費用を大幅に削減できるメリットがある一方で、AIが生成した映像がCGのクオリティに達していないため、一部のシーンで不自然さや違和感が残るといった課題も浮き彫りになりました。
■ 「1人映画時代」の幕開けとAI技術の急速な進化
キム・イルドン監督は、2024年4月24日にソウル映画センター(韓国映画の振興と支援を行う公的施設)で開催された記者会見において、「今回の作品を通じて最も主張したいのは『1人映画時代』の開幕だ」と述べました。映像制作やシナリオ作成の大部分を一人で完結できる環境が整いつつあることを強調しています。
映画評論家のチョン・チャンイル(전찬일)氏は、「『アイアム・ポポ』は可能性と限界を同時に持った映画だ」と評価しています。韓国を含む全世界のAI映画が今後どのような方向へ進むか予測がつかない中で、今作が重要な参考資料になるだろうと付け加えました。
AI技術は日々目覚ましい発展を遂げており、キム・イルドン監督は「AIは遅く学ぶほど有利だ」という冗談を交えつつ、昨日よりも今日の方がより使いやすく新しい技術が登場している現状を語りました。実際、昨年映画を完成させた時点と現在では技術レベルに大きな差があるとし、完成直後に公開できなかったことへの惜しさを滲ませる場面もありました。今後、AI技術がCGに匹敵するリアリティを手にした時、映画制作のあり方は根本から変わる可能性があります。
出典:https://www.yna.co.kr/view/AKR20260425019000005?input=1195m
📚 Buzzちゃんの豆知識
■ 韓国の「一人映画(1인 영화)」という概念
これまでの映画制作は多額の予算と数百人のスタッフが必要不可欠でしたが、デジタル技術の発展により、監督が企画・撮影・編集を一人でこなすスタイルが注目されています。特に生成型AIの登場で、CG制作のハードルが下がり、インディーズ映画界を中心に「一人で長編を作る」という挑戦が増えています。
■ 韓国の「映画センター(영화센터)」
記事に登場する「ソウル映画センター」などは、韓国政府や自治体が映画産業の育成のために運営している施設です。ここでは独立映画の支援や最新技術のセミナー、試写会などが行われ、新しい才能や技術が世に出る重要な拠点となっています。
私は『財閥家の末息子』みたいな重厚なミステリーが大好きなんですが、そういう複雑な伏線があるドラマも、いつかAIが一人で作れるようになるのかと思うと不思議な気持ちです。でも、やっぱりソン・ジュンギ(송중기)さんやキム・スヒョン(김수현)さんのような俳優さんの細かい表情の演技は、AIには真似できない「魂」があると思うんですよね。皆さんは、100%AIが作った映画を映画館で観てみたいですか?それとも、やっぱり生身の俳優さんの演技が一番だと思いますか?
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