「人生とは、自分だけの『レンズ』を探していく過程ではないでしょうか?」
そんな深い問いかけを私たちに投げかけるのは、韓国の主要な経済週刊誌「メギョン・エコノミー(매경이코노미)」で30年間記者として第一線を走り抜け、編集長まで務めたキム・ソヨン(김소연)局長です。経済というシビアな世界に身を置いてきた彼女が、10年前にある出会いをきっかけにどっぷりとハマったもの。それが「お茶(茶)」でした。
今回は、お茶を通じて世界を見つめ直し、人生の機微を綴ったエッセイ『お茶は日常(차가일상)』を出版したキム・ソヨン局長のインタビューをお届けします。韓国映画やドラマ好きの皆さんなら、劇中の「お茶のシーン」に込められた意味がもっと深く理解できるようになるはずです。
■ 経済記者から「お茶オタク」へ。きっかけはソウルの伝統街・仁寺洞(インサドン)
キム・ソヨン局長は、自らを「チャドク(차덕후/お茶オタク)」と呼びます。ちなみに「ドク(덕후)」とは、日本語の「オタク」が韓国語化した言葉。一つのことに徹底的にハマる気質を指します。
彼女がお茶に目覚めたのは、ある大先輩記者との縁でした。その先輩に連れられて行ったのが、ソウルの「仁寺洞(인사동/伝統的な茶屋や骨董品店が集まる有名な観光地)」。そこでプーアル茶(보이차)を振る舞われたことが、彼女の運命を変えました。
「最初は、コーヒーの味もわからないような私にお茶なんて……と思っていたんです(笑)。でも、勉強を始めてみると、お茶の中には面白い映画や文化、歴史のストーリーが詰まっていることに気づきました」
以来10年間、彼女はお茶を学び続け、ついには世界茶連合会の会長に弟子入りするほどの情熱を注いでいます。30年のキャリアを持つ経済記者の視点と、お茶への深い愛情。この二つが合わさることで、彼女にしか書けない「お茶の物語」が誕生したのです。
■ 映画「パラサイト」や「はじまりのうた」にお茶が登場する理由
キム・ソヨン局長が特に情熱を傾けているのが、「映画の中のお茶」の読み解きです。
「監督や脚本家は、映画の中に意味のないシーンは入れません。お茶を飲むシーンがあるなら、そこには必ず理由があるはずだと思ったんです」
例えば、世界的に大ヒットしたポン・ジュノ(봉준호)監督の映画『パラサイト 半地下の家族(기생충)』や、パク・チャヌク(박찬욱)監督の『別れる決心(헤어질 결심)』、『お嬢さん(아가씨)』。これらの中にも、キャラクターの心理や状況を象徴するお茶のシーンが登場します。
インタビューの中で、彼女が最も思い入れのある一作として挙げたのが、ジョン・カーニー監督の映画『はじまりのうた(Begin Again)』です。
劇中、ミュージシャンのデイヴが大切なレコーディングを前に「抹茶(말차)」を飲むシーンがあります。恋人のグレッタに「侍は戦争に行く前に抹茶を飲んだんだって。僕たちソングライターも一種の侍だから」と語る場面です。
キム・ソヨン局長は、このシーンに涙が止まらなかったと言います。
「30年働いたベテランでも、3年目の若手でも、私たちは毎日それぞれの重荷を背負って生きています。デイヴが感じていたであろうプレッシャーが、お茶一杯に込められている気がして、自分の人生と重なったんです」
お茶はただの飲み物ではなく、戦いに挑む前の儀式であり、自分を整えるための大切なツール。そう考えると、お茶を飲むという日常の動作が、なんだかとても尊いものに感じられませんか?
■ 「急須とマグカップがあれば、それで十分」
お茶と聞くと、「作法が難しそう」「道具を揃えるのが大変そう」とハードルを高く感じてしまうかもしれません。しかし、キム・ソヨン局長は「急須とマグカップさえあれば十分です」と優しく語ります。
韓国では近年、伝統的なお茶を現代風にアレンジした「ティーコース」や、静かにお茶を楽しむ「ティーハウス」が若者の間でも流行しています。忙しい日常の中で、スマホを置いてお茶の香りに集中する時間は、究極のヒーリングとして注目されているのです。
「緑茶も紅茶もウーロン茶も、実はすべて同じお茶の木の葉から作られていることを知っていますか? 加工の仕方が違うだけなんです。それはまるで、環境や選択によって多様に変化する私たちの人生のようでもあります」
キム・ソヨン局長は、この本が読者の皆さんに「自分だけのレンズ」を見つけるきっかけになってほしいと願っています。
次に皆さんが韓国ドラマや映画を観るとき、もしキャラクターがお茶を手にしていたら、少しだけ注目してみてください。そこには、言葉以上のメッセージが隠されているかもしれません。
皆さんは、映画やドラマの中で印象に残っている「お茶を飲むシーン」はありますか? お気に入りのお茶を片手に、ぜひコメントで教えてくださいね!
出典:https://ch.yes24.com/Article/View/81997
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