韓国ドラマや映画を観ていて、「この俳優さん、たった一人のシーンなのに画面が持つな」と圧倒されたことはありませんか?その圧倒的な表現力の源泉ともいえる「演劇」の世界で、いま注目を集める大きな祭典がソウルで開催されます。
来る3月17日から4月25日まで、ソウルの演劇界を象徴する場所で「2026 ソウル国際モノドラマフェスティバル」が幕を開けます。今回で3回目を迎えるこのフェスティバルは、たった一人の俳優が舞台に立ち、その声と身体だけで観客を物語の深淵へと誘う「モノドラマ(一人芝居)」の祭典です。
■ 演劇の聖地・三一路倉庫劇場で放たれる、俳優たちの圧倒的なエネルギー
会場となるのは、ソウルの中心部にある「三一路(サミルロ)倉庫劇場(1975年に設立された韓国初の民間小劇場。多くの名優を輩出した演劇の聖地)」です。ここはかつて、韓国の「小劇場運動」を牽引した伝説的な場所。韓国の俳優たちにとって、この舞台に立つことは特別な意味を持ちます。
ドラマや映画で活躍するトップスターの中にも、実はこうした小劇場出身の「演技派」が数多くいます。カメラのカット割りがない舞台、それも一人きりの空間で1時間以上を演じ切るモノドラマは、俳優にとって最も過酷で、かつ最も名誉ある挑戦の一つなのです。
今回の制作発表会でパク・ヒョンスン(박현순)劇場長は、「このフェスティバルは単に場所を提供するだけでなく、制作費の支援や広報まで全面的にバックアップします。創作者が作品作りに没頭できる環境を整え、観客には最高品質の公演を届けたい」と、その熱意を語りました。
■ 日本やヨーロッパからも参戦!歴史や社会の深淵を見つめる国際的なラインナップ
今回のフェスティバルには、海外から70チーム、国内から41チームという多数の応募があり、その中から厳選された12作品が上演されます。
注目すべきは、国際色豊かな「海外招待作品」の顔ぶれです。
北マケドニアからは、ミゲル・デリベスの名作を原作とした『カルメン』が登場。スペイン社会の緊張感を、一人の女性の内面独白を通して描き出します。また、インドとスリランカの共同制作による『スイングス・オブ・ラブ』は、色彩や象徴的なオブジェを駆使して、愛と孤独の狭間で揺れる女性の精神世界を表現します。
特に日本の演劇ファンにとって見逃せないのが、日本とドイツを拠点に活動するカワムラ・トモヤ(河村知也)による『知覧からの手紙』です。この作品は、かつての特攻隊の基地・知覧を舞台に、ファシズム体制下での個人の選択を再照明するもの。日本政府による当時の決定や神風特攻隊を美化する視点に真っ向から向き合い、戦争の残酷な側面を浮き彫りにする挑戦的な内容となっています。
さらに、ルーマニアからはシェイクスピアの悪役として有名な『リチャード3世』の内面を掘り下げる作品が披露されます。国境を越え、一人の人間が抱える普遍的な葛藤をどう演じ分けるのか、期待が高まります。
■ 韓国の「今」を映し出す国内作品—「推し活」をテーマにした異色作も
一方、国内選定作品では、韓国社会のリアルな感情を捉えた4つの物語がラインナップされました。
なかでも、日本の韓流ファンに馴染み深いテーマなのが『トッチルの理解(덕질의 이해)』でしょう。「トッチル(덕질)」とは、韓国語で「推し活(オタク活動)」を指す言葉です。誰かのファンであった瞬間の大切さや、誰かを愛する心が人生の支えになることを描いたこの作品は、きっと多くのファンの共感を呼ぶはずです。
また、社会的なメッセージ性の強い作品も並びます。
『朝がある』は、日本の劇作家・柴幸男(しば・ゆきお)の作品を、セウォル号沈難事故や梨泰院(イテウォン)の悲劇を経験した韓国の若者世代の感性で再構成したものです。喪失の後の世界をどう肯定していくのかという問いは、今の韓国社会において非常に重い意味を持っています。
他にも、1905年にメキシコへ渡った1033人の朝鮮人移民の旅路を「音」と「動き」で表現する『ぴしゃりぴしゃり、ドキドキ』や、植民地時代の人気歌手イ・ファジャ(이화자)の音楽を辿る『ガラス陳列棚の向こう』など、歴史の記憶を呼び起こす意欲作が揃いました。
俳優の息遣いまで聞こえてくるような至近距離で、魂の叫びに触れることができるモノドラマ。華やかなドラマの裏側にある、韓国エンターテインメントの底力を肌で感じられる貴重な機会となりそうです。
「一人の人間が舞台を支配する」という、演劇の最も原初的で力強い姿。もしこの春ソウルを訪れる予定があるなら、観光の合間に「演劇の聖地」へ足を運んでみてはいかがでしょうか?
「推し活」が人生の力になるという『トッチルの理解』、私たちファンにとっても他人事ではないテーマですよね。皆さんが「あぁ、ファンでいてよかった!」と心から感じた瞬間はどんな時ですか?ぜひコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.nget
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