圧倒的カリスマ女優チン・ソヨンが挑む母性の闇とは?韓国国立劇団の衝撃作 彼の母親 が待望の再演へ

韓国エンタメ界において、今もっとも「強い女性」を演じさせたら右に出る者はいないと言われる俳優、チン・ソヨン(진서연)。映画『毒戦 BELIEVER』で見せた狂気的な演技や、ドラマ『ハピネスバトル』での圧倒的な存在感に圧倒された日本のファンも多いはずです。

そんな彼女が今回、次なる舞台として選んだのは、映像の世界ではなく「演劇」のステージでした。韓国演劇界の最高峰である「国立劇団(국립극단)」が贈る話題作、『彼の母親(Mother of Him)』への主演が決定したのです。

この作品はなぜ、これほどまでに韓国で注目を集めているのか。そして、チン・ソヨンが挑む「新しい母親像」とは何なのか。再演を前に大きな期待が寄せられている本作の見どころを、韓国の演劇文化や背景と共に詳しく紐解いていきましょう。

■「観客が選んだ最高傑作」が再び!国立劇団の重厚な人間ドラマ

まず、この舞台を企画している「国立劇団」について少し触れておきましょう。韓国における国立劇団は、1950年に設立されたアジア初の国立劇団としての歴史を持ち、韓国を代表する俳優や演出家が名を連ねる、まさに演劇の殿堂です。ここで上演されるということは、作品の質と芸術性が国から保証されているも同然なのです。

今回再演が決まった『彼の母親』は、2025年に初演された際、驚異的な記録を打ち立てました。純粋推奨指数(NPS)、観覧満足度、有料客席占有率のすべてにおいてトップを記録し、「2026年に最も見たい公演(観客Pick)」に選ばれたのです。

物語の舞台は、雪の降るカナダ・トロント。一夜にして3人の女性を乱暴した未成年者の息子を持つ母親、ブレンダの物語です。加害者の家族という、社会から厳しい視線を浴びる立場に立たされた母親。彼女の凄絶な心理的崩壊と、逃れられない現実に直面する2週間が描かれます。

■カリスマ女優チン・ソヨンが壊す「韓国的な母親像」のステレオタイプ

今回の再演で最大の注目ポイントは、やはり主演のチン・ソヨンでしょう。これまで彼女が演じてきた役柄は、クールで自立し、時には冷徹なまでのカリスマ性を持つキャラクターが多く、韓国では「ガールクラッシュ(同性も憧れるかっこいい女性)」の代名詞的な存在です。

そんな彼女が演じる「母親」は、私たちがよく知る韓国ドラマの「犠牲的で慈愛に満ちた母」とは一線を画します。

韓国には古くから、儒教的な価値観に基づいた「良妻賢母」や、自分のすべてを投げ打って子供に尽くす母親像が尊ばれる文化があります。しかし、本作の主人公ブレンダは、時には利己的で、時には冷淡な一面も見せる、非常に多層的なキャラクターです。

チン・ソヨン自身も、「一人の未熟な人間が、恐怖を感じて逃げ隠れし、疲弊していく過程を緊張感たっぷりに見せたい」と意気込みを語っています。聖人君子ではない、一人の人間としての「母親」を、彼女がどう体現するのか。その演技は、観客に「果たして私たちは、この母親に石を投げることができるだろうか?」という重い問いを突きつけることでしょう。

■世界が注目する原作と、韓国演劇界の「バリアフリー」への取り組み

本作は、カナダやイギリスで数々の賞を受賞した劇作家エヴァン・プレイシー(에반 플레이시)の、実話に基づいた戯曲が原作です。今回の公演に合わせて原作者の来韓も決定しており、韓国の観客との対話も予定されています。

演出を担当するリュ・ジュヨン(류주연)は、「粉々に砕け散った加害者家族の日常と、罪の重さをありのままに見せたい」と語っており、初演よりもさらに物語の密度を高めるために、ドラマターグ(作品の解釈や演出を支える学術的専門家)のチョ・マンス(조만수)を新たに招き入れた点も、制作陣の本気度を感じさせます。

また、特筆すべきは、韓国演劇界で近年急速に進んでいる「アクセシビリティ(観客の利便性)」への配慮です。今回の公演期間中には、韓国手話通訳、韓国語字幕、音声解説、そして視覚障害者のために舞台の構造を触って確認できる「タッチツアー」などが導入された回が設けられます。

これは、韓国社会がより多様な観衆を包摂しようとする文化的な変化の現れでもあります。日本の舞台ファンにとっても、こうした韓国の進んだ劇場運営の取り組みは非常に興味深いポイントではないでしょうか。

■公演情報と「芸術家との対話」

公演は4月16日から5月17日まで、ソウルのショッピングの聖地としておなじみの明洞にある「明洞芸術劇場(명동예술극장)」で行われます。

この劇場は、1930年代に建てられた歴史的建造物を復元したもので、クラシックな外観と最新の設備が融合した、非常に美しい空間です。ショッピングの合間に、本場の演劇に触れてみるのも贅沢な旅の過ごし方かもしれません。

さらに、終演後には豪華なイベントも用意されています。
・4月26日:原作者エヴァン・プレイシー、演出リュ・ジュヨン、女優チン・ソヨンによるトークイベント
・5月3日:演出家と全出演俳優による「芸術家との対話」

作品の裏側や、役作りの苦悩を直接聞くことができるこの機会は、ファンにとって忘れられない時間になるはずです。

「母性」という聖域が剥がれ落ちたとき、そこには何が残るのか。チン・ソヨンという稀代の役者が、その答えを舞台の上で示してくれそうです。

加害者の母という、逃げ場のない役柄に挑むチン・ソヨンさん。彼女の迫真

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