「あの大物俳優、〇〇期の公募タレント出身だってさ」
韓国の名俳優のプロフィールを読んでいると、こんな記述に出会うことがあります。「KBS第〇期公募タレント」「MBC〇期出身」——。練習生制度でもなく、芸能事務所所属でもない、この「公募タレント(공채 탤런트/コンチェ・テルロントゥ)」という独特の経歴。これは韓国エンタメ業界が、いま私たちが知る形になる前の「俳優育成の原型」を示すキーワードです。
今ではほぼ廃れた制度ですが、この制度が生んだ俳優たちは、今なお韓国ドラマの屋台骨を支え続けています。今回はこの「韓国俳優の起源」とも言える公募タレント制度の世界を、深く掘り下げてみましょう。
公募タレント制度(コンチェ)とは?
公募タレント制度とは、韓国の地上波テレビ局(KBS、MBC、SBS)が定期的にオーディションを開催し、合格者を「専属タレント」として採用して、自社の制作するドラマやバラエティに出演させてきた制度です。事務所を経由せず、放送局が直接俳優を選抜・育成する仕組みでした。
韓国語の「공채(コンチェ)」は「公開採用」の意味。新卒採用に近い感覚で、毎年あるいは隔年で新人タレントを募集し、合格者を「○期生」として番号化していくのが特徴でした。「KBS公採6期」「MBC公採25期」という形で、所属期によって俳優の「世代」が分かる仕組みです。
制度の歴史:1960年代〜2000年代まで
始まりは1960年代
韓国でテレビ放送が本格化した1960年代初頭、放送局には「ドラマを作るための俳優」が圧倒的に足りませんでした。そこで各局は、自前で俳優を採用・教育する仕組みとして公募タレント制度をスタートさせました。KBSは1961年、MBCも1969年に第1期生を採用したと言われています。
1970〜80年代:黄金期
テレビが韓国家庭に普及し、ドラマが国民的娯楽になった70年代〜80年代。公募タレント制度はまさに「韓国俳優の最大の供給源」でした。この時期に採用された俳優たちは、現在も韓国ドラマで重鎮として活躍しています。
1990年代後半〜:芸能事務所の台頭
1990年代後半、SMやJYPなど芸能事務所が台頭し、練習生制度が広まると、公募タレントから事務所所属タレントへの転換が進みます。事務所はドラマ・映画・音楽を統合的にマネジメントできるため、放送局による単独採用は次第に競争力を失っていきました。
2000年代以降:制度の終焉
2000年代に入ると、地上波各局は公募タレント制度を縮小・休止していきます。KBSは「KBS公採」を継続的に行っていた期間が長かったものの、2010年代以降は新人採用の主な舞台は事務所主導のオーディションに移っていきました。
公募タレント出身の名俳優たち
公募タレント制度が生んだ俳優は数え切れません. 特に有名な方々を一部紹介します。
KBS公採出身
- イ・スンジェ(이순재):1956年デビュー、韓国俳優界の最長老の一人。「国民の祖父」として、いまも現役で活躍する伝説的存在と言われています。
- チェ・ブラム(최불암):チェ・ブラムは1959年に演劇『ハムレット』でデビューした(1965年は国立劇団に入団し芸名での活動を開始した年)。
- キム・ヨンオク(김영옥):声優出身でもあり、後にKBS等のドラマで「国民のおばあちゃん」と称される名脇役と言われています。
- コ・ドゥシム(고두심):「国民の母」と呼ばれる女性俳優の代表格。重厚な母親役で韓国ドラマの厚みを支えてきた存在と言われています。
MBC公採出身
- ナ・ムニ(나문희):MBC関連を経て、長く韓国ドラマの母親役・祖母役を担ってきた名優。映画『あなた、その川を渡らないで』『私を忘れないで』などで国際的にも評価されています。
- イ・ボヨン(이보영):イ・ボヨンはドラマ『マザー』や『ハイド-私の夫の秘密-』で主演を務めたが、2013年のドラマ『秘密』の主演はファン・ジョンウムである。
- ハン・ソッキュ(한석규):MBC公採経由で俳優デビュー。『シュリ』『八月のクリスマス』『ベルリンファイル』など、韓国映画黄金期の代表格と言われています。
SBS公採出身
- コン・ヒョジン(공효진):コン・ヒョジンはモデルとして活動後、1999年の映画『少女たちの遺言』のオーディションを経て俳優デビューした。
- チョ・ジョンソク(조정석):チョ・ジョンソクは『最高です!スンシンちゃん(輝く!イ・スンシン)』に出演した(オム・テウンは映画『建築学概論』でチョ・ジョンソクと共演しているため混同の可能性がある)。
このほかにも、公募タレント出身の俳優は無数にいます。韓国ドラマの「重鎮俳優」「ベテラン俳優」と呼ばれる人物の多くが、この制度を通って今があると言われることも少なくありません。
公募タレント制度の特徴と「あるある」
1. 採用後の専属研修
合格者は採用後すぐにドラマに出るわけではなく、まず数ヶ月〜1年の専属研修を受けるのが一般的だったと言われています。演技・発声・身体表現・カメラ作法まで、放送局の演技指導陣が直接教える形です。
2. 番号で世代が分かる
「KBS公採16期」「MBC公採12期」のように、所属期によって俳優の世代が一目で分かるのが特徴です。同期生どうしの結束が強く、何十年経っても「公採同期会」を開いて交流するケースが多いと言われています。
3. 専属期間の縛り
採用された放送局には数年間の専属契約があり、その期間中は他局のドラマに出演できないのが原則だったと言われています。これが結果として、各局のドラマに独特の「常連顔」を生み、世代ごとに局の色合いを作る要因にもなりました。
4. 給料は固定制
事務所所属とは違い、公募タレントは放送局の「社員」に近い扱いで固定給があったと言われています。新人時代の安定性は高かった反面、ヒットしても収入が大きく増えないという課題もあったようです。
豆知識:公募タレント文化の片鱗
- 「16期公採」「25期公採」: 韓国ドラマのインタビューや回想録で、ベテラン俳優同士が「俺たち何期だっけ?」と話す光景は今でもよく見かけると言われています。これは公採制度の同窓的な絆の証です。
- 「公採落ち」エピソード: トップ俳優の中には、若い頃に公採オーディションに落ちて事務所所属に切り替えた人もいると言われています。落ちた話を後年笑い話として明かすケースも多く、韓国エンタメ界の通過儀礼的な逸話となっています。
- 制度の名残としてのKBS研修: 公採制度自体は縮小しましたが、KBSは新人俳優・声優の研修プログラムを部分的に継続していると言われています。
- 「公採同窓」が物語のモチーフに: 『応答せよ』シリーズや『賢い医師生活』のような群像劇では、若き日に同じ場所で過ごした仲間という設定が共感を呼びます。公採同期の絆は、まさにこの種の物語の原型と言えるでしょう。
公募タレント制度が残したもの
公募タレント制度は、現代の韓国エンタメの形が出来上がる前の「全国民が画面で同じ俳優を観る時代」を支えた制度と言われています。今のように世界市場を意識した洗練されたシステムではなくとも、地に足のついた演技教育と、長期的なキャリア形成を可能にした点で、評価される側面が多い制度でした。
今でも韓国ドラマで重厚な母親役・祖母役を演じる名優の多くが、この制度の出身者であることを思えば、韓国エンタメの「演技の厚み」の源流は、この公採制度にあると言っても過言ではないでしょう。
まとめ:「公採出身」と書かれていたら、敬意を持って観よう
練習生制度や事務所所属が主流になった現代でも、「KBS公採〇期」「MBC公採〇期」の経歴は、韓国エンタメ界では「演技の血統書」のような重みを持ち続けていると言われています。プロフィールにこの記述を見つけたら、ぜひその俳優が歩んできた時代と、磨いてきた演技の蓄積に思いを馳せてみてください。
新しい世代のアイドル俳優・事務所所属俳優とは違う、ベテランたちの「演技で生きてきた」凄みが、画面の中の一瞬の表情にも宿っているはずです。
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