激動の80年代を刻む未詳里 未詳番地の衝撃。韓国演劇界の鬼才キム・ジンマンが描く、記憶の消えない住所

韓国ドラマや映画を観ていると、俳優たちの圧倒的な演技力に引き込まれることがよくありますよね。その「演技の力」の源泉ともいえるのが、韓国の演劇界です。今回は、長年韓国演劇の最前線を走り続け、多くの名優たちとも関わりが深い演出家・劇作家の活動にスポットを当てたニュースをお届けします。

東洋大学の教授であり、芸術学博士でもあるキム・ジンマン(김진만)氏が、自身の戯曲集「未詳里 未詳番地(ミサンリ ミサンボンジ)」を出版し、韓国の文化界で大きな注目を集めています。

■「2人劇」のパイオニアが描く、濃密な人間ドラマ

キム・ジンマン氏を語る上で欠かせないのが、「2人劇(俳優が2人だけで進行する演劇形式)」への深い愛情です。彼は2000年に、世界初となる「2人劇フェスティバル(現在はワールド2人劇フェスティバル)」を企画し、25年もの間、この祭典を牽引してきました。

韓国では、ソウルの大学路(テハンノ:100以上の小劇場が集まる「韓国のブロードウェイ」と呼ばれる聖地)を中心に、2人劇というジャンルが非常に人気があります。俳優にとっては逃げ場のない真剣勝負の場であり、観客にとっては息遣いまで聞こえるほどの緊張感を味わえるのが魅力です。日本でも人気の俳優キム・ソンホ(김선호)やパク・ウンビン(박은빈)など、多くのトップスターたちが演劇舞台でその実力を磨いたことは有名ですが、キム・ジンマン氏はそうした「純粋な演技の場」を広げてきた立役者なのです。

今回の戯曲集は、通常とは異なり、実際に舞台での上演を何度も重ねて評価を得た後に一冊の本としてまとめられました。これは、作品としての完成度が非常に高いことを裏付けています。

■消し去ることのできない「80年代」という激動の記憶

戯曲集のタイトルにもなっている「未詳里 未詳番地」は、韓国の現代史、特に1980年代という激動の時代を背景にしています。

韓国において「80年代」は、単なる過去の1ページではありません。1980年の光州事件(クァンジュサゴン:民主化を求める市民と軍が衝突した悲劇的な事件)から、1987年の民主化宣言に至るまで、学生や市民が血を流して自由を勝ち取った、魂の歴史が刻まれています。人気ドラマ『スノードロップ』や『青春の光(5月の青春)』などを通じて、当時の重苦しくも熱い空気感を知ったファンの方も多いのではないでしょうか。

この作品は、タイトルの通り「住所さえ定かではない(未詳)」場所に葬られた人々の声や、現代まで癒えることのない歴史の傷跡を描き出しています。キム・ゴンピョ(김건표)大慶大学教授(演劇評論家)は、この作品を「消し去ることのできない80年代の激動の現代史」と評しており、過去の痛みをどう記憶し、現代とつなげるかを問いかけています。

■古典とエクストリーム・スポーツの融合? 常に挑戦を続ける演出スタイル

キム・ジンマン氏の魅力は、重厚な歴史テーマだけではありません。彼の演出スタイルは非常に実験的でエネルギッシュです。

かつて国立劇場の「シェイクスピア・ナンジャン(乱場:お祭りや騒ぎを意味する言葉)」の開幕作に選ばれた『エクストリーム・ロミオとジュリエット』では、なんとシェイクスピアの古典にエクストリーム・スポーツを組み合わせるという、破天荒なステージを披露して話題をさらいました。この作品はオーストラリアで開催された世界学術大会でも紹介されるなど、韓国国内のみならず、世界からもその独創的な演出感覚が高く評価されています。

今回出版された戯曲集には、「未詳里 未詳番地」のほか、「雨中の散歩(ウジュンサンチェク)」、「宝石より輝かしい(ボソクポダ チャルナン)」、「抱きしめてください(アナジュセヨ)」、「老人と海(ノインド パダ)」など、ジャンルを越えた多様な作品が収録されています。

■俳優の「生」の演技を感じる、演劇の世界へ

ドラマや映画の華やかなスクリーンの裏側には、こうした情熱的な演出家たちが守り続けてきた、泥臭くも熱い演劇の土壌があります。キム・ジンマン氏が25年間守り続けてきた「2人劇」の世界を知ることは、韓国俳優たちがなぜあんなにも力強い演技ができるのか、その秘密に触れることにも繋がるでしょう。

今の韓国の繁栄の裏側にある「80年代の記憶」や、極限まで削ぎ落とされた2人劇の緊張感。次に韓国旅行へ行く際は、ドラマのロケ地巡りだけでなく、大学路で「2人劇」の舞台を体験してみるのも、より深く韓国を愛するきっかけになるかもしれませんね。

皆さんは、好きな俳優さんの「舞台での演技」を見てみたいと思ったことはありますか? もし推しの俳優さんが2人きりの舞台に立つとしたら、どんな作品を演じてほしいですか? ぜひ皆さんの想像をコメントで教えてください!

出典:https://www.imaeil.com/page/view/2026030517091579507

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