韓国ドラマを観ていると、友人や恋人の間で「どうして連絡してくれなかったの?」「水臭いじゃない」と詰め寄るシーンをよく目にしませんか?日本人からすると「体調が悪い時に連絡するのは迷惑かな」と遠慮してしまう場面でも、韓国では「なぜ頼ってくれないのか」と寂しさをぶつけることが多々あります。
こうした日韓の微妙な「感情の温度差」を、9年にわたり両国を行き来しながら発信し続けている女性がいます。元朝日新聞の記者で、現在は作家・文化伝道師として活躍するナリカワ・アヤ(나리카와 아야)さんです。彼女が韓国の老舗月刊誌『新東亜(シンドンア)』のインタビューで語った、日韓の心のあり方の違いが、多くの共感と驚きを呼んでいます。
今回は、ナリカワさんの視点を通じて、私たちが愛してやまない韓国エンタメの裏側にある「リアルな韓国人の心」を紐解いてみましょう。
■「寂しい」では言い表せない韓国独自の感情「ソウナダ」とは?
ナリカワさんが韓国と初めて出会ったのは1994年の夏。家族旅行で訪れたソウルでしたが、滞在中に北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席が死去するという歴史的な事件に遭遇しました。さらに、一緒にいたお兄さんが急性盲腸炎で入院するというハプニングまで重なり、少女だったナリカワさんは、期せずして韓国の病院を体験することになります。
「不慣れな環境で戸惑う私たちを、看護師さんたちが本当に温かく接してくれたんです。その活気と親切さが忘れられなくて、大学生になったら絶対にソウルへ留学しようと決めました」
その決意通り、2002年の日韓ワールドカップという熱狂の真っ只中に留学を果たした彼女は、その後、記者を経て再び韓国へ渡りました。そんな彼女が今でも「慣れない」と笑うのが、韓国人の友人たちから言われる「ソウナダ(서운하다)」という言葉です。
日本語では一般的に「寂しい」や「名残惜しい」と訳されますが、ニュアンスは少し異なります。ナリカワさんが手術を受けた際、日本の友人は「今は大丈夫?」とまず容態を気遣ってくれたのに対し、韓国の友人は「どうして手術することを教えてくれなかったの。ソウナダ(水臭くて寂しい、残念だ)」と、連絡がなかったことへの不満を口にしたそうです。
「ソウナダ」とは、相手に対してある種の期待をしていたのに、それが満たされなかった時に感じる、甘えの裏返しのような感情です。親しい間柄であればあるほど「共有して当然」と考える韓国流の「情(チョン)」の深さが、この一言に凝縮されています。日本人の「迷惑をかけたくない」という配慮が、韓国では時に「距離を置かれている」と寂しく受け取られてしまうことがあるのです。
■「ひとり飯」への視線が変わっても、根底にある「繋がり」の意識
近年、韓国でも「ホンパプ(혼밥 / 一人での食事)」という言葉が定着し、一人で食事を楽しむ姿は珍しくなくなりました。しかし、ナリカワさんは「それでも日本とはまだ少し違う」と分析します。
日本では一人で食事をすることはごく日常的で、むしろ「誰にも気を使わずに済む自由な時間」としてポジティブに捉えられることが多いですよね。一方、韓国で一人で食べていると、友人から「なぜ私を呼ばなかったの?」「誰と食べているの?」と聞かれることが今でも多いといいます。
韓国で大ヒットしたドラマ『孤独のグルメ(日本の人気漫画をドラマ化した作品)』が、なぜこれほどまでに韓国人を惹きつけたのか。ナリカワさんは「堂々と一人で食事を楽しむ姿が、韓国人には新鮮でかっこよく映ったからではないか」と語ります。韓国社会にとって、一人でいることは「孤立」というネガティブなイメージが強かったのですが、それがようやく「自立した個人の自由」として認められ始めた過渡期なのかもしれません。
■日韓を繋ぐ「架け橋」として、文化の翻訳者に
ナリカワさんは現在、韓国の映画についても研究を続け、博士号を取得しています。朝日新聞の文化部記者時代に韓国映画の魅力に惹かれましたが、日本の新聞社では異動が多く、一つの分野を突き詰めることが難しいと感じて退職を決意。現在はフリーランスとして、日本のメディアに韓国のリアルを伝え、韓国のメディアに日本の複雑な事情を伝える「双方向の翻訳者」として活動しています。
彼女の著書『至極私的な日本(지극히 사적인 일본)』では、こうした日常の些細な違和感から、フェミニズムや政治的な背景まで、深く掘り下げられています。
「日本人は自分の感情を抑える『感情労働』に慣れすぎていて、時々自分自身の本当の気持ちが分からなくなることがあります。対して韓国は、感情をストレートに出すことがエネルギーになっています。どちらが良い悪いではなく、その違いを知ることで、もっと深く理解し合えるはずです」
ドラマやK-POPを通じて韓国を知った私たちにとって、こうした「心の仕組み」の違いを知ることは、作品をより深く楽しむためのスパイスになります。
ヒロインがなぜあんなに怒るのか、主人公がなぜあんなに家族にこだわるのか。その裏側にあるのは、ナリカワさんが触れたような「熱い情」と「繋がっていたいという切実な願い」なのかもしれません。
皆さんは、韓国の友人や推しの言動に「日本とは少し違うな?」と感じた瞬間はありますか?文化の違いを知ることで、もっと推し活が楽しくなるかもしれませんね。ぜひ皆さんの体験もコメントで教えてください!
出典:https://shindonga.donga.com/3/all/13/6118321/1
コメント