「推しの国」での過ごし方が、ここ数年で劇的に変わっています。
かつてのK-POPファンの韓国訪問といえば、コンサート会場を駆け足で巡り、推し活グッズを爆買いするというイメージが強かったかもしれません。しかし今、韓国を訪れる日本人ファンたちが求めているのは、もっと多彩で、もっと創造的な経験です。K観光が年間2000万時代を迎える中、特にK-POPファンの訪韓スタイルの多様化が注目を集めています。
■推しになりきる体験へのこだわり
最近のトレンドで目立つのが、「推しの世界に自分も入り込む」という楽しみ方です。推しのアイドルが出演したドラマやバラエティ番組の撮影地を訪れる「聖地巡礼」は以前からありましたが、進化しています。
今どきのファンたちは、推しのメイクやファッションを完全再現するために、韓国でメイクアップアーティストのサービスを受けたり、推しが愛用しているコスメブランドの旗艦店を訪問したりします。さらに注目されているのが、ダンススタジオでのレッスンです。推しが所属するグループのシグネチャーダンスを韓国人プロダンサーから直接習うことで、同じ空間で同じ動きをするという、究極の推し活体験を実現させているのです。
こうした過ごし方は、単なる「推し活」を超えています。ファン自身が推しに限りなく近い存在になることで、アイドル文化をより深く理解し、より親密に感じたいという欲求の表れといえるでしょう。
■SNS時代のコンテンツ消費型観光
もう一つの大きなトレンドが、「映える体験」をSNSにシェアすることを前提とした観光の楽しみ方です。推しのメイク・ファッション・ダンスで身を固めた自分を韓国の風景に収め、TikTokやInstagramにアップする。こうした行動は、ただの自己満足ではなく、グローバルなK-POPコミュニティに自分も参加しているというアイデンティティの確認につながっています。
ソウル市内の人気スポット——明洞(ミョンドン)、江南(カンナム)、弘大(ホンデ)などでは、K-POPアイドルのメイクやファッションに身を包んだ外国人ファンの姿が日常的に見られるようになりました。彼らは単なる観光客ではなく、K-POPカルチャーの「アンバサダー」として機能しているのです。推しへの愛を表現することが、同時に韓国の魅力を世界に発信する手段になっています。
■推し活の「旅」化
韓国への訪問が長期化・多様化しているのも特徴です。従来は「コンサートで訪韓」という限定的な時間設定でしたが、今は「推し活を軸にした3泊4日の旅」「推しの出身地巡りの小旅行」といった、より計画的で体験志向の滞在が増えています。
推しの故郷を訪れ、推しが幼少期に通った学校の周辺を歩いたり、推しが好きだとインタビューで語ったカフェで時間を過ごしたり。こうした「推しを知る旅」は、アイドル個人への理解を深めるとともに、韓国という国そのものへの関心も喚起させています。結果として、ファンはK-POPという入口から、韓国の歴史、文化、食べ物まで幅広く関心を拡げていくのです。
■インバウンド観光の新しい柱
韓国観光公社の統計では、訪韓外国人の増加の一部は確実にK-POPファンが占めています。特に日本からの訪問者は、韓国ドラマや映画、そしてK-POPというエンタメコンテンツへの親近感が高く、推し活と観光を融合させた独自のスタイルを確立しつつあります。
この変化は、韓国の観光産業にも影響を与えています。ダンススタジオやメイクアップサロンの中には「K-POPファン向け体験パッケージ」を用意するところが増え、ガイドブックにはアイドルゆかりのスポットが次々と掲載されるようになりました。推し活が、観光経済の重要なセグメントへと成長しているのです。
何より興味深いのは、ファン側にとっても観光地側にとっても、この新しいスタイルが「Win-Win」になっているという点です。ファンは推しへの愛をより豊かに表現でき、韓国は新たな層の観光客を獲得できます。
K-POPの愛好家にとって、韓国はもはや単なる「アイドルの本拠地」ではなく、推しの息遣いを感じられる「生きた舞台」へと変わりつつあります。推しになりきり、推しが見た景色を見つめ、推しが歩いた道を歩く——そうした体験が、韓国との関係をより深く、より個人的なものにしているのです。
出典:https://www.hankookilbo.com/news/article/A2026022409380003263?did=NA




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