韓国エンタメ界の巨人、SMエンターテインメント(以下、SMエンタ)。東方神起(동방신기)やNCT(엔시티)、aespa(에스파)といったトップアイドルの活躍は日本でもおなじみですが、そのグループ会社である「SM C&C(エスエム・カルチャー・アンド・コンテンツ)」が、いま大きな変革の時を迎えています。
これまでカン・ホドン(강호동)やチョン・ヒョンム(전현무)といった国民的MC、そして実力派俳優たちのマネジメントを中心に展開してきた同社が、2026年を機に「音楽IP(知的財産権)ビジネス」への本格参入を宣言しました。アイドル帝国・SMグループが次に仕掛けるのは、なんと「バラード」の深掘り。その戦略と、背景にある韓国独自のエンタメ事情を紐解いてみましょう。
■「アイドル」の次は「バラード」?SM C&Cが描く新戦略
SM C&Cが音楽ビジネスの新たな柱に据えたのは、オーディション番組から生まれた「バラードのスターたち」です。
2025年に韓国で放送され、大きな話題を呼んだSBSのバラード歌手発掘オーディション『私たちのバラード(우리들의 발라드)』。この番組は地上波放送だけでなくNetflixでも配信され、韓国のトップ10シリーズで2位を記録するなど、アイドル全盛期と言われる現代において異例のヒットとなりました。
SM C&Cはこの番組の成功を機に、番組から誕生した「私たちのバラード Top 11」のメンバーと専属契約を締結。自社内に「音盤事業本部」を新設し、楽曲の制作からマネジメント、そして公演までを自社で一貫して行う「垂直統合型」のビジネスモデルを完成させたのです。
ここで少し、韓国における「バラード」の位置づけについて解説しましょう。日本ではK-POPといえばダンスパフォーマンスのイメージが強いですが、実は韓国においてバラードは「国民のソウルフード」とも呼ばれるほど愛されているジャンルです。秋や冬のチャートはバラードが独占することも珍しくなく、アイドルグループのメインボーカルがソロでバラードを歌うことは、実力を証明する「登竜門」のような意味合いも持っています。SM C&Cは、この伝統的かつ安定した人気を誇るジャンルに、SMエンタの洗練されたプロデュース力を掛け合わせようとしているのです。
■「最強のMC軍団」と「AI技術」が支える唯一無二のプロモーション
SM C&Cの最大の武器は、何といっても所属する豪華なタレント陣です。
カン・ホドン、チョン・ヒョンム、チャン・ドヨン(장도연)といった、韓国のバラエティ番組で見ない日はないトップクラスのMCたちが所属しています。今回の音楽ビジネスでは、これら「専門家集団」のノウハウが惜しみなく投入されます。アーティストを単に「歌わせる」だけでなく、自社のバラエティ制作能力や広告代理店としてのスキルを活かし、アーティストそのものを強力な「ブランド」へと育て上げる戦略です。
さらに注目すべきは、最新テクノロジーの導入です。SM C&Cは今年、ミュージックビデオ制作に自社開発のAIソリューションを本格導入すると発表しました。
韓国では近年、映像制作の効率化だけでなく、表現の幅を広げる手段としてAIが積極的に活用されています。SMエンタグループといえば、仮想世界と現実をつなぐコンセプト(aespaの「KWANGYA」など)で知られていますが、SM C&Cもまた、単なる音楽事務所の枠を超えた「テック・コンテンツ企業」としてのカラーを打ち出しています。
■SMエンタとのシナジーで「名曲の再解釈」プロジェクトも始動
もちろん、親会社であるSMエンタ本体との連携も強力です。SMエンタが抱える国内外の有名作曲家陣が「私たちのバラード Top 11」の楽曲制作に参加。年内に18曲以上のリリースを予定しています。
すでに活動は活発化しており、所属アーティストのホン・スンミン(홍승민)やチェ・ウンビン(최은빈)は人気ドラマのOST(劇中歌)に参加。ソン・ジウ(송지우)は3月にリメイク曲『春の雨(봄비)』をリリースしました。
特に興味深いのが、リメイクプロジェクト「SM:ALL ROOM」です。これは70年代から90年代の名曲を現代の感性で歌い直すプロジェクト。儒教的な価値観や情(ジョン)を大切にする韓国では、世代を超えて歌い継がれる名曲が多く、こうした「レトロの現代風アレンジ」は、全世代のファンを取り込む強力なフックとなっています。
SM C&Cのパク・テヒョン(박태현)代表は、「2026年は音楽IP事業を安定させ、実質的なビジネス成果を証明する年にする」と自信をのぞかせています。
アイドルだけでなく、聴かせる「バラード」でも世界を魅了しようとするSMグループの挑戦。歌唱力抜群のアーティストたちが、AIや最強MC軍団の力を借りてどんな新しい感動を届けてくれるのか、目が離せません。
K-POPのダンスも素敵ですが、心に染みる「韓国バラード」の魅力に浸ってみるのも、新しい推し活の楽しみ方かもしれませんね。皆さんは、SMが仕掛けるこの新しいバラードプロジェクト、どんなアーティストや楽曲に注目していますか?ぜひコメントで教えてくださいね!
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