韓国の音楽シーンに今、新しい風が吹いています。2月27日に放送されたKBS 2TVの人気音楽番組『ミュージックバンク(韓国KBSの長寿音楽番組。K-POPアイドルの登竜門として知られる)』に、トロット(韓国の伝統歌謡。日本の演歌に似ているが、近年は若者にも大人気)界の新星パク・ジヒョン(박지현)が登場。初の正規アルバム『MASTER VOICE』のタイトル曲「無(無)」を披露し、視聴者を圧倒しました。
K-POPアイドルが中心となる「ミューバン(ミュージックバンクの略称)」のステージで、ソロ歌手としての存在感を放ったパク・ジヒョン。今回のカムバックがなぜこれほどまでに注目を集めているのか、その背景とステージの魅力を詳しく紐解いていきましょう。
■ アイドルの祭典で異彩を放った「トロットの貴公子」の風格
この日の『ミュージックバンク』は、IVE(アイヴ)やNCT JNJM(NCTの派生ユニット)、ONE PACT(ワンパクト)といった人気アイドルたちが勢ぞろいする豪華なラインナップでした。その中でも、パク・ジヒョンのステージは一味違う深みを感じさせるものでした。
パク・ジヒョンが披露した「無(無)」は、人生の重みや虚無感、そしてそれを包み込むような受容を歌ったバラード色の強い楽曲です。彼はダンディなロングブレザーを身にまとい、モデルのようなスタイルで登場。しかし、マイクを握るとその姿は一変し、魂を揺さぶるような歌声を響かせました。
今回のステージで特筆すべきは、豪華なクワイア(聖歌隊・合唱団)をバックに従えた壮大な演出です。曲がクライマックスに向かうにつれ、彼の爆発的な高音とコーラスが重なり合い、まるで一本のミュージカルを観ているかのような錯覚に陥るほどでした。
韓国では現在、「トロット」はもはや年配層だけの音楽ではありません。2020年頃から始まったオーディション番組の大ブームにより、若くて実力のある歌手が次々と登場し、全世代に愛されるジャンルへと進化を遂げました。パク・ジヒョンもその中心人物の一人であり、今回のステージはまさに「現代版トロット」の極致を見せつけたといえます。
■ 名プロデューサーが描く「パク・ジヒョンの人生」
今回のアルバム『MASTER VOICE』を語る上で欠かせないのが、全曲のプロデュースを手掛けたユン・ミョンソン(윤명선)の存在です。彼はチャン・ユンジョン(장윤정)の「オモナ(韓国で社会現象を巻き起こしたトロット曲)」など、数々のヒット曲を生み出し、トロットを現代的に解釈することに長けた名匠です。
パク・ジヒョンは番組内のインタビューで、「トロット歌手として、トロットの色彩が濃い『万物トラック(韓国の田舎を回る何でも屋のトラックのこと)』という曲が一番のお気に入りです」と語り、自身のルーツへの誇りをのぞかせました。
アルバムにはタイトル曲「無(無)」をはじめ、「Opening」「祈り」「美しい人生の物語」「Dancing In Love」「サヨナラという悲しい言葉」など、全10曲が収録されています。愛や別れ、後悔、そして再び立ち上がる勇気まで、パク・ジヒョンという一人の人間の人生を一つの物語のように構成しているのが特徴です。
韓国のファン文化(팬카페/ペンカフェ文化)においても、このように歌手の人生そのものを応援するスタイルは非常に強く、今回のフルアルバム発売はファンにとって待ちに待った「叙事詩」の完成でもありました。
■ 視聴者を虜にした、ギャップのある魅力
パク・ジヒョンの魅力は、その歌唱力だけではありません。MCのキム・ジェウォン(김재원)とパン・ジミン(방지민)とのやり取りで見せた、謙虚で初々しい姿もファンの心を掴みました。「一生懸命準備したので、温かく見守ってほしい。発売されてホッとしている」と語る彼のはにかんだ笑顔は、ステージ上のカリスマ性溢れる姿とは対照的で、そのギャップが日本人のファンにとっても「推しポイント」になること間違いなしです。
また、番組の後半では、タイトル曲とは正反対の明るい雰囲気を持つ「万物トラック」のハイライトを無伴奏で披露。アカペラでも揺るがない安定したピッチと、声の深みには共演者たちからも感嘆の声が上がっていました。
『ミュージックバンク』の1位を決める「K-チャート」は、デジタル音源(60%)、放送回数(20%)、ファン投票(10%)、アルバム(5%)、ソーシャルメディア(5%)という複雑な集計で行われます。音源や投票が重視されるこのシステムにおいて、トロット歌手が上位に食い込むことは、それだけ強固で熱心なファン層がいること
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