「韓国コスメ」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?
韓国旅行の必須コースである「オリーブヤング(韓国最大のドラッグストアチェーン)」での爆買いや、憧れのK-POPアイドルがモデルを務める華やかなパッケージを想像する方が多いかもしれません。
しかし今、韓国の美容業界(Kビューティー)の景色が、あるプラットフォームによって劇的に塗り替えられています。それが「TikTok(ティックトック)」です。
日本では「若者がダンス動画を投稿するアプリ」というイメージがまだ強いかもしれませんが、世界、特に北米や東南アジアでは、TikTokは今や「最強のショッピングモール」へと進化を遂げているのです。今回は、韓国経済界でも注目されている「TikTok×Kビューティー」の衝撃的な変化について、現地の視点を交えて詳しく解説します。
■「子供向け」はもう古い?世界を席巻する「TikTokショップ」の威力
韓国国内でも、TikTokに対して「子供たちが流行のミーム(ネット上のネタ)を楽しむ場所」という冷ややかな視線が一部で存在するのは事実です。YouTubeやInstagramに比べると、大人がビジネスに使う場所としては一段低く見られがちでした。
しかし、一歩海外へ目を向けると状況は一変します。その中心にあるのが、2023年に本格始動した「TikTokショップ(TikTok内でのEC機能)」です。
これは、インフルエンサーが紹介しているコスメを、動画を見ながらその場でポチッと購入できるシステム。残念ながら日本や韓国ではまだ正式導入されていませんが、アメリカや東南アジアではこの「即時購入」の流れが爆発的なブームを巻き起こしています。
韓国の美容専門家であるジョン・ホソク(정호석)教授は、「コンテンツを通じて即座に消費する時代になった」と指摘します。K-POPアイドルや韓国ドラマの俳優たちの「発光肌(内側から光を放つような透明感のある肌)」に憧れる世界中のファンにとって、TikTokは単なる動画アプリではなく、最新の韓国トレンドをその場で手に入れるための「魔法の窓口」になっているのです。
■伝統のブランドも「デジタルシフト」で驚異の成長
この波に乗って、信じられないような数字を叩き出しているブランドがあります。日本でもおなじみの「ミシャ(미샤)」を展開するエイブルシーエヌシー(에이블씨엔씨)です。
ミシャといえば、かつては韓国の街中のいたるところに路面店がありましたが、現在は戦略をガラリと変更。韓国国内の店舗を整理する一方で、アメリカのTikTokショップやAmazonといったデジタルチャンネルに総力を注ぎました。その結果、北米市場での売上は前年比258%という驚異的な成長を記録。今や海外売上が全体の約7割を占めるという、真のグローバル企業へと生まれ変わりました。
また、家庭用美顔器で人気の「メディキューブ(메디큐브)」も戦略的です。アメリカの超人気コスメブランド「タルト(Tarte)」とコラボレーションし、TikTokショップ専用の限定セットを販売。現地ですでに信頼を得ているブランドの力を借りることで、一気にシェアを拡大しました。
こうした動きの背景には、韓国特有の「パリパリ(팔리팔리:早く早く)文化」があると言えるでしょう。トレンドの移り変わりが激しいTikTokのスピード感に、韓国企業特有の「決断と実行の早さ」が見事にマッチしたのです。
■「ポストKビューティー」への課題:真のグローバルリーダーへ
現在、絶頂期にあるKビューティーですが、ジョン・ホソク(정호석)教授は、さらなる持続的な成長のためには3つの課題があるとも提言しています。
1. 独自の製品力の強化
韓国の化粧品製造技術は非常に高いですが、製造を委託するOEM(受託製造)が一般的であるため、どのブランドも似たような製品になりがちです。マーケティングの力だけでなく、そのブランドにしかない「代替不可能な技術」が求められています。
2. 多様性の追求
これまでKビューティーは「色白で透明感のある肌」を理想としてきましたが、世界には多様な肌色や気候が存在します。どんな人種や環境でも使えるカラーバリエーションや処方の研究が、真のグローバルブランドへの鍵となります。
3. ブランドファンダムの構築
流行はいつか去るものです。価格競争や関税のリスクに左右されないためには、多少高くても「このブランドだから買いたい」と思わせる熱狂的なファン(ファンダム)を世界中に作ることが不可欠です。
K-POPアイドルが世界中のファンを虜にしたように、コスメもまた「機能」を超えた「憧れ」や「絆」を築けるかどうかが試されています。
■まとめ
TikTokという翼を手に入れたKビューティー。それはもはや、単なる「化粧品」の域を超え、韓国のカルチャーそのものを届けるエンターテインメントへと進化しています。
私たちがドラマやMVを見て「あんな風になりたい!」と感じるそのワクワクが、テクノロジーと結びついて世界中の経済を動かしているのですね。
最近は日本でも、TikTokで紹介された韓国コスメがQoo10(韓国コスメに強いECサイト)で即完売する現象がよく見られます。皆さんは、最近TikTokやSNSで見かけて思わず「これ欲しい!」とポチってしまった韓国コスメはありますか?ぜひ皆さんの「推しコスメ」をコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.hankyung.com/article/202603051685i
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