「もしかしたら、あの中に自分がいたかもしれない」――。
そんな風に、視聴者を画面の中に引きずり込み、日常生活に支障をきたすほど夢中にさせる「過没入(クァモリップ)」という言葉を、皆さんはご存知でしょうか?
現在の韓国エンタメ界において、サバイバル番組は単なる「オーディション」の枠を超え、一つの巨大な文化的ジャンルとして君臨しています。かつてはアイドルを目指す練習生たちの涙と汗の物語が中心でしたが、今やその波は料理、体力、さらにはビジネスの現場にまで広がっています。
なぜ韓国、そして日本のファンたちは、これほどまでにサバイバル番組に熱狂するのでしょうか。最新のトレンドと共に、その背景を探ってみましょう。
■ K-POP界の勢力図を書き換えたサバイバル番組の歴史
韓国におけるサバイバル番組の爆発的な人気は、2009年に放送されたMnetの「スーパースターK(슈퍼스타 K)」まで遡ります。この番組は、一般人が歌手デビューを夢見て競い合う姿を映し出し、韓国中にオーディションブームを巻き起こしました。
その後、K-POP界の構図を決定的に変えたのが、2016年に始まった「プロデュース101(프로듀스 101)」シリーズです。視聴者が「国民プロデューサー」となり、自分の1票でデビューメンバーを決めるというシステムは、ファンに強烈な「当事者意識」を植え付けました。
この流れは、現在のトップグループたちにも脈々と受け継がれています。
例えば、日本でも絶大な人気を誇るENHYPEN(엔하이픈)は、番組「I-LAND(アイランド)」を通じて誕生しました。また、昨年大きな話題を呼んだ「BOYS PLANET(ボーイズ プラネット)」から生まれたZEROBASEONE(제로베이스원)や、「アイドル学校(아이돌학교)」出身のfromis_9(프로미스나인)など、今のK-POPシーンはサバイバル番組なしでは語ることができません。
韓国では「自分の推しを自分の手でデビューさせる」という情熱が非常に強く、これがファンカフェ(Daumなどのポータルサイトで運営される公式ファンコミュニティ)の活発な活動や、駅の広告掲示といった熱狂的な応援文化を支えています。
■ 舞台はステージから「日常生活」へ!広がるK-サバイバルの世界
最近のトレンドは、アイドル育成にとどまりません。その代表格が、Netflixなどで配信され世界的なヒットを記録した「フィジカル100(피지컬: 100)」や、料理界の階級闘争を描いた「白と黒の泥棒:料理階級戦争(흑백요리사: 요리 계급 전쟁)」です。
元記事では、こうした番組が「単なる競争ではなく、個人の限界に挑戦する物語」へと進化していると指摘しています。これまでサバイバルといえば、10代や20代の若者の専売特許でしたが、今や「腕一本で生き抜く料理人」や「肉体の限界に挑むアスリート」など、大人が本気でぶつかり合う姿に視聴者は胸を熱くしているのです。
さらに驚くべきは、その舞台が「会社」にまで及んでいることです。ENAの新番組「販売の王(판매의 왕)」では、商品の販売力を競うというビジネス要素の強いサバイバルが予告されています。「就職難」や「熾烈な競争社会」と言われる韓国の文化的背景もあり、視聴者は画面の中の挑戦者に自分を重ね合わせ、「もしかしたら自分もああなれるかも」「自分ならこうするのに」という、より深い共感=過没入を抱くようになっています。
■ 競争社会が生んだ「カタルシス」と課題
なぜ、これほどまでに競争を好むのでしょうか。韓国には古くから「情(ジョン)」を大切にする一方で、学歴やキャリアにおいて非常に高い競争意識を持つ側面があります。
サバイバル番組は、その過酷な競争を「エンターテインメント」として昇華させ、努力した者が報われる瞬間(カタルシス)を視聴者に提供してくれます。視聴者は、練習生や挑戦者が理不尽な状況を乗り越えて成長する姿に、自分自身の日常の疲れを癒やしているのかもしれません。
しかし、その一方で課題もあります。番組を盛り上げるための過剰な演出、いわゆる「悪魔の編集(アクマエピョンジップ:意図的に特定の出演者を悪く見せる編集)」や、不公平なルール設定などは、常に議論の的となります。ファンが熱心になればなるほど、制作側には透明性と誠実さが求められるようになっています。
■ あなたにとっての伝説の番組は?
「推しがデビューした瞬間の涙が忘れられない」「あのパフォーマンスで人生が変わった」……サバイバル番組には、ドラマ以上にドラマチックな瞬間が詰まっています。
現在も、Mnetの「アイランド2(I-LAND 2)」や、さまざまなOTT(NetflixやTVINGなどの動画配信サービス)で新しい企画が次々と誕生しています。次はどんなスターが、どんな物語を私たちに見せてくれるのでしょうか。
皆さんがこれまでで最も「過没入」したサバイバル番組や、今注目している番組は何ですか?忘れられないあの名シーンや、今まさに応援している推しへの熱い想いを、ぜひコメントで教えてください!
出典:https://www.newsen.com/news_view.php?uid=202603121755352610
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