官能シーンもアクションと同じ?韓国ドラマの撮影現場を変えるインティマーシー・コーディネーターと俳優を守る新常識

「アクションシーンに武術監督がいるように、露出シーンにはインティマーシー・コーディネーターが必要なんです」

最近、韓国のドラマや映画の制作現場で、この言葉が合言葉のように語られているのをご存知でしょうか?

かつての韓国ドラマといえば、地上波放送の厳しい規制もあり、ロマンチックなキスシーンが限界というイメージがありました。しかし、Netflix(ネットフリックス)などのOTT(オンライン動画配信サービス)が主流となった今、表現の自由度が増す一方で、俳優の権利をどう守るかという課題が浮上しています。今回は、韓国エンタメ界の最前線で起きている「撮影現場の意識改革」について紐解いていきましょう。

■ 俳優の心と体を守るプロ「インティマーシー・コーディネーター」の台頭

世界的なヒットを記録しているNetflixシリーズ『ブリジャートン家(19世紀の英国貴族社会を描いた官能的なロマンス時代劇)』のシーズン4で主役を務めることが決まった韓国系女優、ハ・イェリン(하예린)は、劇中の高い露出を伴う演技について、こう語っています。

「インティマーシー・コーディネーターが、激しいシーンを一つの振り付けのように組んでくれました。そのおかげで、安全だと感じながら撮影に集中できたんです。現場には必須の存在だと思います」

ここで耳にする「インティマーシー・コーディネーター(Intimacy Coordinator)」とは、濡れ場やキスシーンといった、俳優が身体的に接触する「インティメイト(親密な)シーン」を専門に管理するスタッフのこと。監督の意図と俳優の合意の境界線を調整し、現場での予期せぬトラブルやハラスメントを防ぐ重要な役割を担っています。

韓国でも、この専門職への関心は急速に高まっています。現在、韓国国内で唯一のインティマーシー・コーディネーターとして活動するクォン・ボラム(권보람)氏は、「監督と俳優、スタッフ間の対話を円滑にし、より開放的に意見を交わせる環境を作ることが目標」だと語ります。

韓国の撮影現場では、かつて「監督の指示は絶対」という儒教的な上下関係の文化が根強くありました。しかし、2017年の「#MeToo」運動以降、俳優の人権保護を求める声が強まり、ハリウッドで標準化されたこのシステムが韓国にも導入され始めたのです。

■ 「19禁」作品だけじゃない?暴力シーンや子役を守るメンタルケア

この変化は、露出シーンだけにとどまりません。近年の韓国ドラマは、家庭内暴力や壮絶な復讐劇といった重厚なテーマを扱うことも多いですが、そうしたシーンが俳優や子役の精神に与える悪影響(トラウマ)を防ぐ取り組みも始まっています。

例えば、家庭内暴力をテーマにしたNetflixシリーズ『あなたが殺した(당신이 죽였다)』に出演したイ・ユミ(이유미/映画『大人たちは知らない』などで知られる実力派女優)は、現場に「心理カウンセラー」が常駐していたことを明かしました。

「感情的に辛い演技をする時、先生がいつも『大丈夫ですか?』と声をかけてくれました。暴力を振るう夫役を演じたチャン・スンジョ(장승조)さんも心理的な負担が大きかったのですが、先生の存在が大きな支えになったようです」

また、人気女優のキム・ユジョン(김유정/『雲が描いた月明り』などで知られる元子役のスター)は、自身が主演したドラマ『親愛なるX(친愛하는 X/TVINGオリジナルのスリラー作品)』の撮影時、自身の幼少期を演じる子役の心理を守るため、制作陣に心理カウンセラーの同行を直接提案したといいます。

制作会社のスタジオドラゴン(『愛の不時着』などを手掛けた韓国最大の制作会社)の関係者は、「子役だけでなく、すべての出演者が安全な情緒的土台の上で演技に専念できるよう、多角的に支援している」とコメントしており、業界全体で「安全な現場」作りがブランド価値の一部となっていることが伺えます。

■ 私たちが「推し」の作品を安心して楽しめる理由

韓国ドラマが世界中で愛される理由は、その高いクオリティにありますが、その裏側でこうした「現場の近代化」が進んでいることは、ファンにとっても嬉しいニュースではないでしょうか。

かつては「命を削って演じる」ことが美徳とされた時代もありました。しかし、今や「俳優の権利が守られてこそ、より大胆で強烈な演技が可能になる」という考え方が主流になりつつあります。ニコール・キッドマンも「コーディネーターがいたからこそ、より限界に挑む演技ができた」と述べている通り、制作者と俳優の信頼関係こそが、名作を生む鍵なのです。

韓国のOTT市場は現在、国内プラットフォームの「TVING(ティービング)」や「Coupang Play(クーパンプレイ)」がNetflixと激しく競い合う戦国時代。より刺激的で没入感のあるコンテンツが求められる中で、撮影現場の安全性という「見えない部分」の進化が、今後の作品選びの新たな基準になるかもしれません。

過酷なシーンを演じきる俳優たちのプロ精神に敬意を払いつつ、彼らが守られた環境で輝いていることを知ると、一場面一場面がより尊く感じられますね。

皆さんが最近観たドラマで、「このシーン、俳優さんは大変だっただろうな」と感じた場面はありますか?そんな時、裏側で彼らを支えるプロたちがいたのかもしれないと思うと、また違った見方ができるかもしれません。ぜひ皆さんの感想をコメントで教えてくださいね!

出典:https://www.heraldmuse.com/article/10694035?ref=naver

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