韓国のエンターテインメント界がいま、大きな転換期を迎えようとしています。これまでも「日韓共同制作」の作品は数多くありましたが、今回発表されたのは、最新技術である「AI(人工知能)」を駆使した全く新しい形の協力体制です。
ソウルの観光名所であり、歴史的な中心地でもある明洞(ミョンドン)。その一角にあるウェスティン朝鮮(チョスン)ソウルホテルにて、先日「日韓映画・ドラマAI制作協議式」が開催されました。このニュースがなぜ韓国で、そして日本のファンにとっても重要なのか、その背景とともに詳しくお伝えします。
■「AIをどう使うか」ではなく「何を守るか」を語る場に
AIがシナリオを書き、編集を手伝い、さらにはCGやポストプロダクション(後処理)までこなす時代。韓国ではNetflixなどのグローバルOTT(動画配信サービス)の影響もあり、技術革新のスピードは日本以上に速いと言われています。そんな中、今回の協議式で繰り返されたキーワードは、意外にも「感情」と「責任」でした。
このプロジェクトを牽引するのは、日本のマイクホールディングスの森田順(モリダ・ジュン)会長と、韓国のSTORY POOL(ストーリープール、コンテンツ企画会社)のアン・ヒョンチョル(안형철)代表。さらに、ソゾ・インターナショナルのチェ・ジョンイム(최종임)会長やフィルムクルー・コリアのキム・ジョンホ(김종호)代表といった日韓の重鎮たちが顔を揃えました。
森田会長は、「技術を導入するスピードを競うことには意味がない。方向性を共有できなければ、協力関係は続かない」と断言しました。単なる一過性のプロジェクトではなく、アジア独自の「共同制作プラットフォーム」を構築しようという強い意志が感じられます。
韓国では「情(ジョン)」を大切にする文化がありますが、映画制作においてもそれは同じ。技術に魂を乗せるという考え方は、非常に韓国らしいアプローチと言えるかもしれません。
■「記憶に残るのはセリフではなくシーン」オヤマ監督が語るこだわり
協議式に先立ち、日本から参加したオヤマ(오야마)監督の言葉も印象的でした。彼の作品『361』は、ハリウッドで開催された「グローバルステージ・ハリウッド2025」で新人監督賞を含む3冠を達成した注目の存在です。
オヤマ監督は「AIが制作を効率化することはできても、観客の記憶を設計するのは監督の仕事だ」と語りました。映画館を出た後、人々の心に残るのは言葉よりも「場面(シーン)」であるという彼の哲学は、技術全盛の時代だからこそ輝きを放ちます。
また、次作として「移民問題」や「シングルファーザー」をテーマにした作品を構想していることも明かされました。派手なアクションやCGを売りにするのではなく、どこまでも「人間の物語」を追求する姿勢は、多くの韓流ファンの心を打つのではないでしょうか。
韓国を代表するシン・スンス(신승수)監督もこれに呼応し、「AIは演出を代替するものではなく、創作を拡張する道具だ」と述べました。最終的な「感情の機微」を選ぶのは人間であるという信念は、日韓両国のクリエイターに共通する誇りを感じさせます。
■「文化の差は壁ではなく資産」俳優たちが込めた願い
このプロジェクトには、日韓の俳優たちも熱い視線を送っています。
日本からは、ホシノ・ナオ(호시노 나오)やメグミ(은비)が参加。ホシノ・ナオは「文化の差は壁ではなく、むしろ価値ある資産だ」と語り、メグミは「技術がどれほど発展しても、人の心を動かすのは結局のところ感情だ」と、役者としての真摯な思いを口にしました。
一方、韓国からは俳優のカビン(가빈)やパク・アヨン(박아연)が出席。カビンは「技術の上に感情を乗せられる俳優になりたい」と語り、パク・アヨンは「AI制作の出発点に立ち会えること自体に意味がある」と、新時代への期待を寄せました。
韓国の芸能界では、ファンとの交流の場である「ペンカペ(ファンカフェ)」などを通じて、作品のメッセージ性や俳優の「人間味」が非常に重視されます。今回のAIプロジェクトも、そうした「人のぬくもり」をどう守っていくかが大きなテーマとなっているようです。
■技術競争を超えた「価値の競争」へ
協議式では「日韓映画・ドラマAI共同制作合意書」が締結されました。これは単なる協力関係のメモ(MOU)ではなく、AI環境下においても「人間中心の創作」を原則とするという、一つの宣言です。
具体的には、シン・スンス監督の『ハレルヤ2』や、キム・グァンオク(김광옥)作家の『新・朝鮮通信使(シン・ジョソン・トンシンサ)』といったプロジェクトの名前も挙がっています。特に『朝鮮通信使』というキーワードは、かつて日本と韓国が文化を通じて平和を築いた歴史を象徴しており、現代のAI技術を通じた新たな交流の形として非常に興味深いものです。
「AIを使えば制作費が抑えられる」「効率が上がる」というビジネス的なメリットはもちろんありますが、今回の協議式が示したのは、その先にある「私たちは何を作るべきか」という問いでした。
技術が進化すればするほど、私たちの心を震わせる「人間らしさ」が際立つ。そんな皮肉で素敵な未来が、日韓の協力によって形作られようとしています。
日韓の才能がAIを相棒に、どんな新しい感動を届けてくれるのでしょうか。かつての名作『シュリ』や『JSA』が日韓の映画交流を切り開いたように、このAI共同制作が新たな金字塔を打ち立てる日も近いかもしれません。
最新技術を使いつつ





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