制作費の100%以上を保証するNetflixですが、『イカゲーム』が約1兆円超の価値を生んだ際も、制作会社の取り分は数十億ウォンに留まりました。IP独占による追加収益の不在が、業界の大きな課題となっています。
■ Netflixオリジナルの成功と「グローバル公式」の定着
韓国のコンテンツ産業が世界市場で勢力を拡大する中心には、常にNetflixの存在がありました。『イカゲーム(오징어 게임)』シリーズをはじめ、『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜(더 글로리)』、『今、私たちの学校は…(지금 우리 학교는)』、そして最近では『白と黒の泥棒(흑백요리사):モノクロシェフ』まで、世界的なヒットを記録した作品の多くには「Netflixオリジナル」というタイトルが付いています。
一つのプラットフォームが流通とマーケティングを同時に担う構造の中で、作品のヒットがそのままグローバルな知名度に直結する。その結果、業界には「Netflixに入ることこそがグローバル進出への近道である」という公式が定着しました。
制作会社がNetflixを選ぶ理由は明確です。かつては海外市場に進出するために、国ごとのエージェンシー(代理店)を通じて版権を切り売りし、製作費を回収する必要がありました。アメリカや日本、東南アジアなど主要な市場を直接回り、数百億ウォン規模の製作資金を集めなければならなかったのです。しかし現在は、NetflixのようなOTT(オーバー・ザ・トップ:インターネット経由の動画配信サービス)と契約を一つ結ぶだけで、製作費の大部分を一度に確保できるようになりました。
■ 製作費100%保証のメリットと引き換えに失うもの
特にNetflixは、製作費の100%以上を支給するモデルを採用しています。これにより、制作会社は赤字のリスクを負うことなく、作品のクオリティに集中することができます。また、地上波放送局のような厳しい審議(放送内容の規制)から解放されるため、過激な描写や斬新な素材にも挑戦できるという利点があります。ある制作会社の関係者は「かつては視聴率が低いと倒産の危機でしたが、Netflixは少なくとも資金面で妥協せずに済む環境を与えてくれた」と語っています。
Netflixが韓国市場に参入した初期、主演俳優の出演料を1話あたり1億ウォン以上に設定し、スタッフの賃金も地上波の1.5倍から2倍に引き上げるなど、破格の条件を提示しました。これに対し、韓国の地上波やケーブルテレビ局は、製作費の60〜70%程度を先払いし、残りは広告収入や版権の精算に連動させる構造だったため、視聴率が振るわない場合は制作会社が損失を抱え込むしかありませんでした。
しかし、Netflixが市場を独占するにつれ、その条件にも変化が見られ始めています。当初はコンテンツ確保のために高条件を出していましたが、市場での支配的な地位を確立した後は、報酬水準を既存の放送局と同等まで下げているという指摘もあります。すでにNetflixが「甲(優位な立場)」に立っているためです。
■ 1兆ウォンの価値を生んでも追加収益はゼロ
この構造が生む最大の歪みが、IP(知的財産権)と海外流通権の独占です。作品がどれほど世界的に大ヒットしても、制作会社には追加の収益が入らない仕組みになっています。
代表的な例が『イカゲーム』シーズン1です。この作品は約9億ドル(当時のレートで約1兆620億ウォン)の経済的価値を創出したと推定されています。Netflixが獲得した収益に対し、製作費の倍率は40倍を超えましたが、制作会社に渡ったマージンは20億〜50億ウォン程度に留まったと見られています。
アメリカのハリウッドでは、脚本家、監督、俳優などのクリエイターが、作品が新しいプラットフォームで再使用されるたびに「レジデュアル(再使用報酬)」と呼ばれる報酬を受け取ります。これは全米脚本家組合(WGA)や全米俳優組合(SAG-AFTRA)などの団体協約によって強制されるもので、作品の収益性に関わらず支払われます。しかし、韓国にはこのような制度的な安全網がありません。
制作会社がそれでもNetflixを選ぶのは、グローバルな露出によって監督や俳優の価値が上がり、それが次作の交渉力を高める「レファレンス(実績)」になるからです。しかし、この構造が長く続くほど、制作側の交渉力は削られ、構造的な不均衡は深まっていくことになります。
■ 国内放送局の苦境とクリエイターたちの模索
この垂直的な従属関係は、韓国の放送エコシステム全体に影響を与えています。OTTに先販売できなかったドラマは、製作自体が困難な状況です。地上波放送局の製作費支給率は依然として40〜60%程度であり、不足分を補うためにPPL(間接広告)が不可欠となっています。
放送局側も、Netflixが高めてしまった視聴者の目の肥えた基準に合わせるため、製作費を投入せざるを得ず、赤字が膨らむという悪循環に陥っています。
こうした状況を打破しようと、韓国映画監督組合(DGK)などの映像クリエイター団体は、IP譲渡後も興行成績に応じた報酬を受け取れる「追加報酬請求権」の導入を法的に求めています。クリエイター側は「この法案が通れば、Netflixのような巨大プラットフォームが最も多くの報酬を支払うことになり、韓国の創作環境に栄養を与えることになる」と強調しています。
📚 Buzzちゃんの豆知識
■ PPL(間接広告)
ドラマの中で特定の飲料やスマートフォン、化粧品などを登場させ、広告効果を狙う手法です。韓国の地上波ドラマでは製作費を補うために頻繁に使われますが、ストーリーの流れを遮るとして視聴者から批判の対象になることもあります。
■ 追加報酬請求権
著作権をプラットフォームに譲渡した後でも、作品が大きな収益を上げた場合に、監督や脚本家がその収益の一部を「追加報酬」として請求できる権利のことです。現在、韓国のクリエイター団体が法制化を強く求めています。
『財閥家の末息子』のような練られたストーリーが大好きな私としては、Netflixのおかげでクオリティの高い作品が増えるのは嬉しいです。でも、世界的な大ヒット作を作っても制作会社が豊かになれないというのは、ファンとしても少し寂しいですよね。皆さんは、とにかく面白い作品が観られるなら今のままでもいいと思いますか?それとも、もっと制作側の権利を守るルールが必要だと思いますか?





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