韓国ドラマの美しい映像美に感動したり、K-POPの完璧に計算されたステージ演出に圧倒されたりしたとき、私たちは思わず「これは芸術(イェスル)だ!」と呟いてしまうことがありますよね。韓国語でも、素晴らしいものを見たときに「イェスリダ(예술이다=芸術だ、最高だ)」という表現をよく使います。
しかし、私たちが日常的に使っている「芸術」や「音楽」といった言葉の本当の意味を、深く考えたことはあるでしょうか?今回は、韓国の教養コラム「マルロック・ホームズ(말록 홈즈)」から、エンタメ鑑賞がもっと深く、楽しくなる「言葉のルーツ」についてお届けします。
■「ミジャンセン」から「メロ」まで、作品を彩る用語の正体
韓国の映画ファンやドラマ通の間でよく使われる言葉に「ミジャンセン(미장센)」があります。元々はフランス語の演劇用語(Mise-en-Scène)で、「舞台上の配置」を意味していました。それが映画の世界では、照明、衣装、構図など、画面の中に映るすべての視覚的要素を指す専門用語として定着しました。
韓国映画界では、演出に徹底的にこだわる監督を「ミジャンセンが素晴らしい」と称賛することが多いです。例えば、パク・チャヌク(박찬욱)監督の作品などは、その代表格と言えるでしょう。
また、韓国ドラマの代名詞とも言える「メロ(멜로)」というジャンル。これは「メロドラマ」の略ですが、語源をたどると「メロディ(melody)」と「ドラマ」が合わさったものです。昔の演劇で、主人公が登場したり重要なセリフを言ったりする際に音楽を流して感情を増幅させたことから、この名がつきました。今でも韓国ドラマで、切ないシーンに絶妙なタイミングでOST(オリジナルサウンドトラック)が流れるのは、まさにこの「メロ」の語源を忠実に守っていると言えるかもしれません。
■歴史ドラマでおなじみの「高麗青磁」や「詩」に込められた想い
時代劇(サグク)を見ていると、美しい陶磁器や、王族たちが詠む詩が登場します。これらにも興味深い語源があります。
「詩(シ:시)」という漢字をよく見ると、「言(ことば)」と「寺(てら)」から成り立っています。これは昔、お寺で経典を読む際にリズム(韻律)を合わせて唱えていたことから生まれた言葉だと言われています。
また、韓国の国宝としても有名な「象嵌青磁(サンガムチョンジャ:상감청자)」。この「象嵌(サンガム)」とは、模様を彫った場所に白い土や赤い土を埋め込んで焼き上げる技法を指します。ちなみに、記事の筆者は「時代劇に出てくる『象嵌(サンガム)ママ(王様や王妃様への尊称)』とは1ミリも関係ありません!」とユーモアを交えて解説しています。
こうした言葉の成り立ちを知ると、歴史ドラマで王様が愛でる一輪挿しの青磁や、士大夫(サデブ:朝鮮時代の貴族階級)たちが詠む詩の重みが、これまで以上に感じられるはずです。
■実は日本発祥?「芸術」という言葉がつなぐ日韓の文化
ここで、日本人ファンにとって非常に興味深い事実があります。実は「芸術(イェスル:예술)」や「美術(ミスル:미술)」といった言葉は、明治時代の日本で作られた和製漢語(新造漢字語)なのです。
19世紀、アジアの中でいち早く西洋化を進めた日本は、ヨーロッパにはあるけれど当時の東アジアにはなかった概念(ArtやSocietyなど)を翻訳するために、新しい漢字の組み合わせを次々と生み出しました。それが後に韓国や中国にも伝わり、現在の東アジア共通の語彙となりました。
韓国の筆者はこう指摘しています。
「日本が作った言葉だからといって責めるつもりはありません。大切なのは、私たちが日常的に使っている用語の多くが、そうした翻訳の過程を経て定着したという点です」
現在、韓国の学校教育では漢字教育が以前ほど重視されなくなっています。そのため、若い世代は言葉の「漢字の意味」を考えるよりも、「音(響き)」で捉える傾向が強まっているそうです。これは日本でも同じような現象が見られますが、漢字という共通の文化を持つ私たちだからこそ、言葉のルーツを探ることで、お互いの文化をより深く理解できるのかもしれません。
■言葉のルーツを知れば「推し活」はもっと豊かになる
「芸術(Art)」の語源は、古くは「人間が作る精巧な技術」を意味していました。それが時代を経て「美しさ」を意味する言葉へと変化したのです。
私たちが応援しているアイドルがステージで見せる完璧なダンス、俳優が涙ながらに語るセリフ、そして監督がこだわり抜いた一瞬のカット。それらすべては、語源通り「磨き抜かれた技術」であり、そこに「魂(たましい)」が吹き込まれることで、私たちの心を揺さぶる「芸術」へと昇華されます。
言葉の意味を少しだけ深く掘り下げてみる。それだけで、次にドラマを見たり曲を聴いたりするときの景色が、少しだけ鮮やかに、豊かに見えるはずです。
あなたが最近、韓国エンタメに触れて「これぞ芸術だ!」と鳥肌が立った瞬間はいつですか?ぜひコメント欄で、あなたの「芸術的推しシーン」を教えてください!
出典:https://www.mk.co.kr/article/11974589
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