AI映画の誕生!強윤성監督中間界が1927年のジャズシンガーになる日——韓国映画史の転換点を目撃する

映画界に激震が走っている。韓国の映画人たちが、2025年を「商業映画がAIを本格的に採用した元年」として記録することになるかもしれない。その震源地は、最近公開されたキャン・ユンソン監督(강윤성)による『中間界』だ。国際映画批評家連盟(FIPRESCI)韓国支部が11月の月例映画セミナーで取り上げたこの作品は、単なる一本の映画ではなく、映画制作のあり方そのものを変える可能性を秘めている。

■歴史的転換点:1927年と2025年を繋ぐ

映画批評家のソン・ヨンエ(송영애)氏は、このセミナーで印象的な問題提起をした。1927年に世界初のトーキー映画『ジャズシンガー』が登場した当時、すべての人がそれを芸術作品として迎え入れたわけではなかったという。しかし、映画に台詞と歌が入ったこの作品は、その後の映画史全体の流れを完全に変えてしまった。

ソン批評家は、2025年の『中間界』がまさにその『ジャズシンガー』と同じ位置に立っているのではないか、と指摘する。つまり、今この瞬間、我々は映画という表現媒体の「新しい歴史」の現場を目撃しているということだ。

■「10億円の広告」から「60分の大作」へ:AI が創造性を蘇らせた

『中間界』の制作背景は、それ自体がAI技術がいかに映画産業の制作方式を変えられるかを示すケーススタディとなっている。

強윤성監督は、『犯罪都市』シリーズや『ロングライブザキング:木浦の英雄』などで知られる商業映画の実力派だ。彼は当初、通信企業KTから10億ウォン(約1億円)予算の短編広告制作を依頼されていた。だが、生成AI という新しいツールを大胆に導入することで、プロジェクトは劇的に変貌を遂げたのだ。

驚くべき点は、強윤성監督が2001年のデビュー時に執筆したまま日の目を見なかった脚本『メビウス』が、60分の商業映画『中間界』として蘇ったことである。AIは単に制作コストを削減したのではなく、埋もれていた創作者の想像力を現実化させるという、より本質的な役割を果たしたのだ。こうした側面は、AI活用に対する懸念の声も多い中で、その可能性の豊かさを物語っている。

■「人間の演出」と「AI の演出」の協業モデル

『中間界』で注目すべきは、AIが特定の部分や効果に限定されているのではなく、制作プロセス全体に統合されているという点だ。クレジットには「AI演出」として クウォン・ハンスル監督(권한슬)の名が記されている。クウォン監督は『マンオブナマンジャ』『ワンモアパンプキン』などのAI短編映画で注目されていた人物で、デジタル表現の最前線にいるクリエイターだ。

制作は企画段階から両監督の協業で進行した。強윤성監督が「こんなシーンを撮りたい」と思案する際、クウォン監督がそれがAIで実現可能か検証する。その過程で、従来の絵コンテよりはるかにリアルな動画プリビジュアル(仮映像)を事前に共有できるようになり、制作の効率性と創造性が一層向上した。

撮影現場でも革新が起きた。撮り終わった直後に、その映像をAIでテストし、即座にフィードバックを得るという流れが確立された。さらに後処理では、撮影素材をベースにAIを用いて爆発シーンやアクションシーンを完成させていった。こうした協業を通じて、監督だけでなく、様々な部署のスタッフの役割そのものが変容していくことが予想される。

■AI映像の最大活用:クリーチャーと幽霊の世界

『中間界』がAIを最も積極的に活用したのは、クリーチャーとキャラクターデザインの領域だ。実際の撮影が不可能な十二支の死神、四天王、亡者、幽霊といったキャラクターと、その衣装、動き、エフェクトがすべてAIで製作された。結果として、従来の特殊メイク、衣装部門、CG チームの役割の一部がAI視覚効果に置き換わったのだ。

さらに背景・環境の合成、群衆シーンなども同様にAI技術が活用されている。これまで膨大な時間と予算がかかっていた領域で、新たな制作方法論が確立されたわけである。

■韓国映画界の実験精神が示すもの

興味深いのは、こうした映画がハリウッドの大手スタジオからではなく、韓国から生まれたという事実だ。規制が厳しかったり、伝統的な制作手法に固執する傾向がある業界では、新しい技術の実験的な導入が後回しにされがちである。しかし強윤성監督とクウォン監督の協業は、韓国映画界の柔軟性と実験精神を示している。

もちろん、今後AI活用映画がどの程度まで主流化するのか、どのような課題が生じるのかは、まだ不確実な部分が多い。だが、映画制作環境全体で相当な変化が始まっていることだけは確実だ。ひょっとして、我々は今まさに、その歴史的な転換の真っ只中にいるのかもしれない。その意味で『中間界』は、単なる一本の新作映画ではなく、映画の未来を考えるための格好の教材となっているのだ。

出典:http://www.ilemonde.com/news/articleView.html?idxno=21983

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