今、韓国の映画界が熱狂に包まれています。歴史超大作『王と生きる男(왕과 사는 남자/読み:ワンサナム)』が、公開から瞬く間に観客動員数1000万人を突破する「千万(チョンマン)映画」の仲間入りを果たしました。
韓国において「1000万人」という数字は特別な意味を持ちます。人口約5000万人の韓国で、5人に1人が観た計算になるこの記録は、単なるヒットを超えた「国民的社会現象」の証。過去には『パラサイト 半地下の家族(기생충)』や『犯罪都市(범죄도시)』シリーズなどがこの壁を超えてきましたが、本作『王と生きる男』は、あの『パミョ(破墓/파묘)』や『ソウルの春(서울의 봄)』をも上回る驚異的なスピードで記録を更新し続けています。
今回のニュースでは、なぜこの映画がこれほどまでに韓国人の心を掴んだのか、そして映画の舞台となった江原道(カンウォンド)の美しい街・寧越(ヨンウォル)の盛り上がりについて、現地の熱気と共にお伝えします。
■ 権力争いよりも「人の温もり」を描いたのがヒットの鍵?
映画『王と生きる男』の主人公は、朝鮮王朝史上、最も悲劇的な運命を辿ったといわれる第6代王・端宗(タンジョン/단종)です。
ここで少しだけ、韓国の歴史背景を補足しましょう。タンジョンはわずか12歳で即位したものの、叔父である首陽大君(スヤンデグン/수양대군、後の第7代王・世祖(セジョ/세조))によって王位を奪われ、江原道の寧越に追放された悲運の王です。韓国の時代劇ファンなら、ドラマ『王女の男(공주의 남자)』や『インス大妃(인수대비)』などで、この凄惨な権力闘争を一度は見かけたことがあるかもしれません。
しかし、今回の映画『王と生きる男』がこれまでの作品と一線を画すのは、ドロドロの権力争いではなく、「流刑地の人々と幼い王との心の交流」にスポットを当てた点です。孤独な王が、見知らぬ土地で出会った民衆と触れ合い、傷ついた心を癒していく……。そんな人間味あふれるストーリーと、俳優陣の魂の込もった熱演が、「最近の冷え切った社会に温もりを求めていた」観客たちの涙腺を崩壊させたのです。
■ 映画の舞台、江原道・寧越(ヨンウォル)へ。歴史を感じる聖地巡礼
映画の記録的大ヒットを受け、ロケ地となった寧越(ヨンウォル)には、今や空前の観光ブームが到来しています。
特に注目を集めているのが、タンジョンの流刑地となった「清冷浦(チョンニョンポ/청령포)」です。ここは三方を深い川に囲まれ、後ろは険しい絶壁という、まるで島のような孤立した場所。現在は名勝第50号にも指定されており、その美しくもどこか寂しげな風景が映画の情緒をより引き立てています。
現地の観光関係者によると、今年の旧正月(ソルラル)期間中には、観光客が前年比の5倍以上に急増したとのこと。ファンたちが訪れているのは、以下のようなスポットです。
・清冷浦(チョンニョンポ):タンジョンが暮らした家屋(御所)や、彼の悲しみを見守ってきたといわれる巨大な松の木「観音松(クァヌムソン)」があります。
・観風軒(クァンプンホン):タンジョンが最期を迎えたとされる場所。映画のクライマックスシーンを思い出し、涙を流すファンの姿も珍しくありません。
・荘陵(チャンヌン):タンジョンが眠る王陵。世界文化遺産にも登録されており、静謐な空気が流れる美しい場所です。
これまでは「歴史に関心がある人が訪れる場所」というイメージだった寧越が、今や「映画の感動を追体験する聖地」へと生まれ変わっています。
■ 「冬ソナ」の教訓を胸に。一過性のブームで終わらせないための課題
一方で、今回のニュースを伝えた江原道民日報の論説委員は、ある「苦い教訓」を投げかけています。それは、かつて日本でも社会現象を巻き起こした『冬のソナタ(겨울연가)』の撮影地、春川(チュンチョン)にあった「チュンサンの家」の例です。
当時は1日に1000人を超えるファンが詰めかけましたが、有料化を巡る議論や観光政策の不備により、今ではその跡形もなくなってしまいました。映画のブームはいつか去るものですが、その土地が持つ歴史的価値や美しさをどう守り、未来へ繋げていくか。寧越もまた、「一時の特需」で終わらせないための真剣な模索が始まっています。
今の韓国映画界を象徴する一作となった『王と生きる男』。歴史を知れば知るほど、そして現地の風景を知れば知るほど、その物語は深く胸に刻まれるはずです。
朝鮮王朝の悲劇の歴史を、温かい視点で描き直した今回のヒット作。もし日本で公開されたら、皆さんは誰と一緒に観に行きたいですか?また、皆さんがこれまでに「聖地巡礼」をして一番感動した韓国のロケ地があれば、ぜひコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.kado.net/news/articleView.html?idxno=2038315
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