いま、韓国のエンタメ界がひとつの映画を中心に熱く燃え上がっています。その作品の名は「王と生きる男(왕과 사는 남자)」(原題)。
元Wanna One(ワナワン、2017年に結成された超人気期間限定ボーイズグループ)のメンバーであり、現在は俳優として目覚ましい活躍を見せるパク・ジフン(박지훈)が主演を務めるこの作品が、公開からわずか5週間で観客動員数1000万人を突破するという、歴史的な快挙を成し遂げました。
韓国において「1000万映画(チョンマン・ヨンファ)」という言葉は、単なるヒットを超えた「国民的関心事」であることを意味します。韓国の人口が約5100万人であることを考えると、国民の5人に1人が劇場に足を運んだ計算になるからです。今回は、この映画がなぜこれほどまでに韓国人の心を掴み、さらには社会現象まで引き起こしているのか、その背景を詳しく紐解いていきましょう。
■ 韓国映画界に新たな金字塔!異例の「逆走」で1000万人突破
映画振興委員会の統合電算網によると、「王と生きる男」は去る3月6日に待望の1000万人突破を記録しました。これは歴代34番目、韓国映画としては25番目の快挙です。特に、パンデミック以降に公開された作品の中で、シリーズものではない単独作品として1000万人を超えたのは、「ソウルの春(1979年の軍事クーデターを題材にした実録映画)」や「破墓(パミョ、お墓に隠された秘密を巡るオカルトスリラー)」に続く3本目の快挙となりました。
この映画の特筆すべき点は、公開直後よりも時間が経つにつれて人気が加速する「逆走(ヨクチュヘン)」現象を見せたことです。「逆走」とは、元々は音楽チャートで過去の曲が再び1位に浮上することを指す言葉ですが、最近では映画やドラマが口コミで評判を呼び、後から爆発的にヒットする際にもよく使われます。
歴史劇(時代劇)ジャンルとしては、日本でも大ヒットした「王の男」や「王になった男」、そして「バトル・オーシャン 海上決戦(原題:鳴梁)」に続く4番目の1000万作品となりました。この流れは止まることを知らず、累計観客数はすでに1150万人を超えており、1200万人突破も目前とされています。
■ 書店やYouTubeまで!「端宗(タンジョン)ロス」が生んだ社会現象
映画の人気は劇場内だけに留まりません。韓国の街中ではいま、映画の題材となった朝鮮王朝第6代国王・端宗(タンジョン、1441-1457)への関心が異常なほど高まっています。
韓国の大型書店「教保(キョボ)文庫」によると、映画公開後の1ヶ月間で「朝鮮王朝実録(朝鮮王朝の歴史を記録した膨大な書物)」に関連する書籍の販売量が、公開前と比べて約3倍に急増しました。さらにオンライン書店の「イエス24(YES24)」では、「端宗」をキーワードにした書籍の販売量が前年同期比でなんと2565.4%(約26倍!)も増加するという驚異的な数字を叩き出しています。
なぜ、これほどまでに一人の歴史人物が注目されているのでしょうか?
そこには「端宗」という王が持つ、あまりにも悲劇的な背景があります。端宗はわずか11歳で即位したものの、実の叔父である首陽大君(スヤンデグン、後の世祖)によって王位を奪われ、最終的に若くして命を落とした薄幸の王として知られています。
韓国の人々にとって端宗は「守ってあげられなかった存在」の象徴であり、古くから文学やドラマの題材となってきました。今回の映画「王と生きる男」は、そんな人々の心の奥底にある「哀れみ(ハン:恨)」の感情を揺さぶり、改めて歴史を学び直そうとする「読書の逆走」現象まで引き起こしたのです。
YouTubeでも、歴史の専門家や有名講師が端宗の生涯を解説するコンテンツが次々とアップされ、数百万回再生を記録するなど、まさに「端宗シンドローム」が韓国全土を席巻しています。
■ パク・ジフンの真骨頂、全世代を泣かせた理由とは?
この映画がこれほどの大ヒットとなった最大の要因として、専門家たちは主演のパク・ジフンの圧倒的な演技力を挙げています。
かつてアイドルとして「僕の心の中に保存(ネ・マウム・ソゲ・チョジャン)」というキャッチフレーズで日本でも大ブームを巻き起こしたパク・ジフン。しかし、今作で見せた姿は、可愛らしいアイドルの面影を封印した「一人の孤独な王」そのものでした。悲劇的な運命に翻弄される若き王の姿を、吸い込まれるような瞳と繊細な表情で演じきり、観客の涙腺を激しく刺激しました。
映画評論家のチョ・デヨン氏は、「パク・ジフンと、共演のユ・ヘジン(유해진、コミカルからシリアスまでこなす韓国の名バイプレーヤー)という二人の実力派俳優が作り出すドラマが、観客の没入感を極限まで高めた」と評価しています。
また、最近の映画に多い過激な暴力描写や扇情的なシーンをあえて抑えた点も、幅広い層に支持された理由の一つです。チャン・ハンジュン(장항준)監督は、子供からお年寄りまでが一緒に楽しめる家族向けの叙事詩として本作を完成させました。刺激に頼らず、歴史の重みと人間の絆を丁寧に描いたことが、家族連れの観客を劇場に呼び込む結果となったのです。
1000万人突破のニュースを受け、政界からも祝福の声が上がっています。韓国では、文化コンテンツの成功が国家のプライドに直結するため、大統領がSNSで直接お祝いのメッセージを出すことも珍しくありません。今回も、韓国映画産業の底力を見せた誇らしい成果として、国を挙げての祝福ムードに包まれています。
パク・ジフンという一人のスターが、歴史上の人物に新たな息吹を吹き込み、韓国社会全体を動かした「王と生きる男」。この熱狂が日本に届く日も、そう遠くはないかもしれません。
悲劇の王・端宗を演じたパク・ジフンの迫真の演技、皆さんはスクリーンで観てみたいですか?Wanna One時代からの成長ぶりに驚いたという方も多いはず。ぜひ皆さんの感想をコメントで教えてくださいね!
出典:http://www.mdilbo.com/detail/EHdc4G/753660
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