韓国映画界にいま、凄まじい旋風が巻き起こっています。その中心にあるのが、元Wanna One(ワナワン)のメンバーで、現在は俳優として目覚ましい活躍を見せるパク・ジフン(박지훈)主演の映画『王と生きる男(原題:王と住む男)』です。
公開からわずか31日で観客動員数1000万人を突破し、現在は1200万人を超える大記録を更新中。韓国では「観客1000万人」というのは、国民の約5人に1人が見た計算になる、いわば「国民的メガヒット」の象徴です。2024年の『犯罪都市4(マ・ドンソク主演のアクション映画)』以来、約2年ぶりとなるこの快挙に、韓国中が沸いています。
今回は、本作を世に送り出した製作会社「オンダワークス」のイム・ウンジョン(임은정)代表のインタビューを通して、パク・ジフンのキャスティング秘話から、ネットで物議を醸した「トラのCG」の真相まで、ファンなら見逃せない舞台裏をお届けします。
■「弱気なヒーロー」から「悲劇の王」へ。パク・ジフンが魅せた本気
本作は、1457年の江原道・寧越(ヨンウォル)を舞台に、流刑地となった村を盛り上げようとする村長と、王座を追われ流されてきた若き先王の交流を描いた時代劇(サゲク)です。パク・ジフンが演じたのは、韓国歴史上で最も悲劇的な王の一人として知られる単宗(タンジョン/朝鮮王朝第6代国王)。わずか12歳で即位し、叔父に王位を奪われ最後は若くして命を落とした実在の人物です。
イム代表は、パク・ジフンを推薦した理由について、彼が主演したドラマ『弱くヒーロー Class1(ウェブ漫画原作のアクションドラマ)』での演技が決め手だったと明かしました。
「初めて会った時、パク・ジフンさんは休暇帰りですっかり日焼けしていました。ビジュアル面で不安がなかったわけではありませんが、演技に対する情熱が凄まじかった。この熱量でダイエットまでしてくれるなら、絶対に勝算があると思いました」
その予感は的中しました。劇中、パク・ジフンが見せた繊細で力強い演技は「単宗シンドローム」を巻き起こすほど。韓国では歴史上の人物が映画やドラマで注目されると、その人物の史跡を訪ねたり関連書籍が売れたりする現象が起きますが、まさにいま、若者を中心に「単宗」への関心が再燃しているのです。
■「顔が赤くなった」と告白。物議を醸した「トラのCG」の裏事情
一方で、本作には意外な「弱点」も指摘されていました。それは、劇中に登場するトラのCGクオリティです。大ヒット作ゆえに細部まで注目が集まり、一部の観客からは「CGが浮いている」「クオリティが低い」といった厳しい声も上がっていました。
これに対し、イム代表は驚くほど正直に回答しています。
「トラに関する記事を見て、顔が赤くなった(恥ずかしかった)というのが本音です。製作責任者として申し訳ない部分があります」
しかし、そこには韓国映画界特有の「スピード感」と「戦略」があったようです。
「すべてを完璧にする時間は限られていました。旧正月(ソルラル/韓国の大型連休)の2週間前に公開するにあたり、大規模な試写会を行って口コミを広げる戦略を優先したのです。CGチームには申し訳ないですが、作品をヒットさせるという責任感ゆえの決断でした」
作品が成功した今、イム代表はこの部分の補強も検討しているとのこと。もし今後、動画配信サービスやDVDで公開される際には、さらに進化したトラに会えるかもしれませんね。
■「ポジティブ思考」が導いた奇跡と、これからの韓国映画
インタビューの最後、イム代表は監督を務めたチャン・ハンジュン(장항준)監督の「ハンジュン的思考(どんな状況も前向きに捉える考え方)」を参考にしたいと語りました。チャン・ハンジュン監督は、日本でも人気のドラマ『シグナル』の脚本家キム・ウニ(김은희)さんの夫としても有名ですが、その底抜けに明るいキャラクターで愛されています。
また、本作には『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』などで知られる名優ユ・ヘジン(유해진)も出演しており、彼の合流が作品の方向性を決定づけたといいます。ベテランの安定感と、パク・ジフンのフレッシュな熱演。この組み合わせこそが、1200万人という数字を叩き出した最大の武器だったのでしょう。
イム代表は「今回の成功は、単宗大王が守ってくださったおかげ」と笑いながらも、スタッフや俳優たちへのインセンティブ(成功報酬)や報奨休暇についても議論していると明かしました。韓国ではヒット作が出ると、制作陣全員で海外旅行へ行く「褒賞休暇」という文化がありますが、今回は映画という特性上、別の形での還元も考えているそうです。
「パク・ジフンの新しい代表作」となった本作。単なる時代劇の枠を超え、現代を生きる私たちに「誰かと共に生きること」の意味を問いかけてくれます。
韓国でこれほどまでに愛されているパク
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