今、韓国の映画界がかつてないほどの熱狂と、それに伴う大きな議論に包まれています。その中心にあるのは、観客動員数1200万人という驚異的な記録を目前に控えた超大ヒット映画『ワンサナム(왕사남)』(王を買う男)です。
韓国で「観客1000万人」というのは、単なるヒットを超えた「国民的映画」の証。人口約5000万人の韓国において、5人に1人が観た計算になるこの数字は、まさに社会現象と言えます。しかし、そんなお祝いムードに冷や水を浴びせるような事態が発生しました。この作品に対して「盗作疑惑」が浮上し、真実を巡る激しい攻防が繰り広げられているのです。
■ 異例の1200万人動員!国民的映画『ワンサナム』を襲った突然の告発
今回の騒動のきっかけは、2000年代初頭に活動していた作家A氏による告発でした。A氏は「映画『ワンサナム』の主要な設定やストーリー展開が、自分が過去に発表したシナリオと酷似している」と主張。具体的には、物語の核となる「王の影武者」という設定に加え、ヒロインとの初対面のシーン、さらには「橋の上で手を取り合いながら逃げる」といった特定の演出までが自身の作品から流用されたものだと訴えています。
韓国では近年、SNSやオンラインコミュニティの発展により、視聴者の「目」が非常に厳しくなっています。一度疑惑が持ち上がると、過去のあらゆる作品と比較され、検証動画が拡散されることもしばしば。今回の『ワンサナム』も、その圧倒的な人気ゆえに、疑惑の刃がより鋭く向けられる形となりました。
一方で、映画の制作会社側は「事実無根である」と真っ向から反論しています。「王の影武者という設定は歴史劇において普遍的なモチーフであり、特定の誰かの独占物ではない。指摘されたシーンも、古典的なロマンスの演出(クリシェ)に過ぎない」というのが彼らの主張です。
ここで注目したいのが「クリシェ(Kliche)」という言葉です。これは、使い古された定番の表現や設定を指すフランス語ですが、韓国のエンタメ解説ではよく使われるワードです。例えば「実は幼い頃に出会っていた」「雨の日に傘を差し出す」といった、ファンなら思わずニヤリとしてしまう「お約束」のこと。制作側は、今回の類似点は盗作ではなく、あくまでこの「王道演出」の範囲内だと主張しているのです。
■ 過去には人気脚本家パク・ジウンも?韓国ドラマ界が避けて通れない「盗作疑惑」の歴史
実は、韓国でこうした盗作疑惑が持ち上がるのは、今回が初めてではありません。むしろ、大ヒット作であればあるほど、その宿命のようにこうした議論がつきまとってきました。
日本でも大ヒットしたドラマ『星から来たあなた(별에서 온 그대)』や、最近では『涙の女王(눈물의 여왕)』を手掛けたスター脚本家、パク・ジウン(박지은)氏も、過去に何度も同様の議論に直面してきました。
例えば、チョン・ジヒョン(전지현)(전지현)とイ・ミンホ(이민호)が主演した『青い海の伝説(푸른 바다의 전설)』の放送時にも、ある無名作家から「自分の作品と設定が似ている」と訴えられたことがあります。しかし、この時は裁判所によって「抽象的なアイデアの類似は著作権侵害には当たらない」として棄却されました。
韓国の司法判断では、「具体的な表現」が似ているかどうかを重視する傾向があります。単なる「人魚と人間の恋」というアイデアだけでは盗作とは認められず、セリフや具体的なエピソードの構成が一致して初めて「黒」と判定されるのです。
韓国には「ファンカフェ(DaumやNAVERなどのポータルサイト上で運営される、ファンによるコミュニティ文化)」やSNSを通じた強力なファンネットワークがあり、疑惑に対してファンが擁護派と批判派に分かれて熱い議論を戦わせるのも、韓国ならではの光景と言えるでしょう。
■ それは「パクリ」か「王道」か。K-ロマンスが作り上げた独自の「フォーマット」とは
今回の『ワンサナム』を巡る議論で、専門家たちが指摘している興味深いポイントがあります。それは、現在の韓国エンタメが誇る「K-ロマンスの勝利の方程式」そのものが、ある種の定型化(フォーマット化)されているという点





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