映画極場の時間たちが紡ぐ魔法。名バイプレーヤーたちが彩る映画館へのラブレター

韓国映画界から、映画を愛するすべての人に贈る珠玉の作品が届きました。3月18日に韓国で公開される映画「極場の時間たち(原題:극장의 시간들)」は、映画館という空間に刻まれた記憶と感情をテーマにしたアンソロジー形式の作品です。

本作を支えるのは、韓国映画ファンなら一度は目にしたことがある実力派俳優から、今注目のニューフェイスまで、個性豊かな「シーンスティラー(主役を食うほどの存在感を見せる脇役)」たち。今回は、作品に深みを与える3人の俳優、オ・マンソク(오만석)、キム・トゥイットル(김뜻돌)、シム・ヘイン(심해인)にスポットを当て、その魅力と映画の背景を紐解いていきましょう。

■実力派監督3人が集結!「アンソロジー映画」という贅沢
まず注目したいのが、本作の豪華な制作陣です。イ・ジョンピル(이종필)、ユン・ガウン(윤가은)、チャン・ゴンジェ(장건재)という、韓国の映画祭でも常連の3人の監督がタッグを組んでいます。

イ・ジョンピル監督は、日本でもヒットした「サムジンカンパニー1995(1990年代の韓国を舞台にしたお仕事エンターテインメント)」で知られ、ユン・ガウン監督は「わたしたち(子供たちの繊細な心理を描いた傑作)」で世界を驚かせました。そしてチャン・ゴンジェ監督は、日本の奈良県を舞台にした「ひと夏のファンタジア」で日韓の映画ファンを魅了した人物です。

この3人が「映画館」をテーマに、それぞれの視点で3つの短編を描き、それが一つの物語として繋がる「アンソロジー映画」となっています。韓国では、若手監督の登竜門としてだけでなく、ベテラン監督たちが自由な感性を発揮する場として、こうしたアンソロジー形式の作品が根強い人気を誇っています。

■物語に重厚感を与えるベテラン、オ・マンソクの存在感
第1部「チンパンジー」のエピソードに登場するのが、ベテラン俳優のオ・マンソクです。彼は動物園の飼育員役として登場し、ポーランドからやってきたチンパンジーにまつわるエピソードを静かに語り聞かせます。

オ・マンソクといえば、映画「悪いやつら(チョ・ジヌンやハ・ジョンウ出演のクライムアクション)」やドラマ「浪漫ドクター キム・サブ2(大人気医療ドラマシリーズ)」などで、一度見たら忘れられない強烈な印象を残してきた名脇役です。

最近の彼は、「娘について」や「朝の海のカモメは」といった、いわゆる「独立芸術映画(メジャー資本に頼らず、作家性を重視して作られる映画)」にも積極的に出演しています。韓国のベテラン俳優たちは、大作で稼いだ知名度を武器に、こうした小さな良作を支援する意味も込めて出演することが多く、彼の登場はその作品が「信頼できる物語」である証とも言えるでしょう。

■音楽界の異端児がスクリーンへ!キム・トゥイットルの多才ぶり
同じく「チンパンジー」エピソードで、動物園の職員ソユン役を演じているのがキム・トゥイットルです。彼女の本業は、実はシンガーソングライター。そのユニークな芸名(日本語に訳すと「意味のある石」)の通り、フォークやドリーム・ポップ、サイケデリックなど、ジャンルにとらわれない独自の音楽性で韓国のインディーズシーンで絶大な支持を得ています。

彼女のスクリーンデビューは、チャン・ゴンジェ監督の「韓国が嫌いで(現代韓国の若者の葛藤を描いた小説が原作)」でした。今回の「極場の時間たち」では、友人たちと映画館を訪れる日常的な風景をごく自然に演じ、映画館という場所が持つ「当たり前だけれど愛おしい時間」を体現しています。

韓国では近年、彼女のような「マルチプレイヤー(歌手と俳優を並行して活動する表現者)」が急増しています。アイドル出身の「演技ドル」とはまた一味違う、独特のアーティスティックな雰囲気を持つ彼女の演技は、作品に新鮮な風を吹き込んでいます。

■次世代の期待星、シム・ヘインが繋ぐ「映画のバトン」
映画のプロローグとエピローグを担当し、作品全体を優しく包み込む役割を担っているのが、新人女優のシム・ヘインです。彼女は老年の映写技師と共に一日を過ごす「新米映写技師」役を演じています。

シム・ヘインは2025年の「ミジャンセン短編映画祭(ナ・ホンジン監督やチェ・ドンフン監督など有名監督を多数輩出してきた、韓国で最も権威ある短編映画祭)」で俳優賞を受賞し、彗星のごとく現れた期待の新人です。

驚くべきは、彼女の役作りへのこだわりです。本作の撮影のために、ソウル・光化門(クァンファムン)にある有名なミニシアター「シネキューブ(韓国を代表する芸術映画専用館)」で長年勤務している現役の映写室長から、直接フィルム映写の技術を学んだそうです。

今ではデジタル上映が主流となりましたが、あえてフィルムの扱いや映写の過程を丁寧に描くことで、映画館という場所が守ってきた「時間」の重みを

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