カナダのオンタリオ州に位置するサンダーベイ。この静かな街にあるレイクヘッド大学(Lakehead University)の講義室から、聞き馴染みのあるメロディが流れてきます。レッドベルベット(Red Velvet)、トワイス(TWICE)、そしてエヌシーティー・ドリーム(NCT DREAM)――。スマートフォンに映し出されるダンス映像を食い入るように見つめ、一糸乱れぬ動きを追求する若者たちの姿。そこには、国境を越えて熱狂を呼ぶ「K-POPダンス」の今がありました。
今回は、同大学のK-POPダンスサークル「LUKA(Lakehead University K-Pop Association)」のメンバーへのインタビューを通じ、海外のキャンパスで今、何が起きているのかを探ります。
■ 単なる「真似」から「文化の理解」へ
少女時代(소녀시대)の音楽をきっかけにK-POPの世界に飛び込んだというエリカ・チャオさんは、K-POPダンスの魅力をこう語ります。
「K-POPの振り付けは、多様なダンススタイルとリズム、そして歌詞の意味が一つに溶け合っているのが特徴です。以前は韓国語の歌詞をただの『音』として真似していましたが、今ではハングル(한글/韓国独自の文字体系)の構造や発音にも興味を持ち、基本的な文字も読めるようになりました」
エリカさんの言葉は、K-POPダンスが単なる運動や趣味の域を超え、言語や文化を深く理解する「窓口」になっていることを示しています。彼女はさらに、「ステージを見るファン」と「自ら踊るプレイヤー」の違いについても言及しました。客観的に見るときは完璧なパフォーマンスを求めますが、いざ自分が踊るとなると、完璧さよりもその過程を楽しむ心が芽生えるのだそうです。推しと同じ動きを体に染み込ませることで、アイドル(K-POPアイドルの呼称)の努力や表現力の凄さをより深く実感できる――。これこそが、世界中のファンがカバーダンス(アーティストの振り付けをそのままコピーして踊ること)に熱中する理由の一つと言えるでしょう。
■ 距離と世代をつなぐ「コミュニケーションの道具」
一方、LUKAの会長を務めるエリザベス・ジョーンズさんは、少し意外なきっかけでダンスを始めました。もともとバレエを専攻していた彼女にとって、K-POPダンスは「大切な人との絆」を繋ぎ止める手段だったのです。
「遠く離れた場所に住むいとこと交流し続けるために、同じK-POPの振り付けを一緒に覚えることにしたんです。離れていても同じ経験を共有できるから。また、10歳年下の妹とも毎日ダンスを通じて一緒に笑い、応援し合っています。私たちにとって最高の思い出作りになっています」
韓国では「情(ジョン)」という言葉が人間関係において非常に大切にされますが、エリザベスさんのエピソードは、まさにK-POPが現代版の「情」を育むツールになっていることを物語っています。地域や国境、さらには世代の壁さえも、一つのダンスが軽々と飛び越えてしまうのです。
■ 踊ることで「推し」と一体になる体験
また、ダンサーとして活動していたエムマ・ジョーンズさんは、「ダンスから入ってファンになった」という逆輸入的なパターンを明かしてくれました。高度な技術を要するK-POPのパフォーマンスに魅了され、気づけばその音楽とアーティスト自体の熱烈なファンになっていたと言います。
LUKAのメンバーたちは口を揃えてこう言います。「踊っている瞬間は、まるでアイドルと一緒にステージに立っているような感覚になる」。彼らにとってダンスとは、世界中のファンと繋がり、憧れのスターと間近で触れ合うための、最も情熱的なコミュニケーションの方法なのです。
そんな中、K-POPの勢いを感じさせる嬉しいニュースがもう一つ飛び込んできました。3月16日に開催された第98回アカデミー賞にて、ネットフリックス(Netflix)の長編アニメーション『K-POP:デーモン・ハンターズ(K-Pop Demon Hunters)』が見事、長編アニメーション賞を受賞したのです。K-POPの音楽と華やかなパフォーマンスが、ついに映画界の最高峰でも認められた瞬間でした。
カナダの小さな街の講義室から、アカデミー賞のレッドカーペットまで。K-POPという文化は今、私たちが想像する以上に深く、広く世界に根を張っています。次はどんな場所で、どんな物語がダンスと共に生まれるのでしょうか。
韓国の文化を愛し、全力で楽しむLUKAのメンバーたちに、心からの感謝を伝えたいと思います。Thank you, LUKA!
皆さんも、お気に入りの一曲を聴くとつい体が動いてしまう、なんて経験はありませんか?皆さんが初めて「完コピしたい!」と思った曲や、ダンスにまつわる思い出があれば、ぜひコメントで教えてくださいね!
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