韓国ドラマや映画で圧倒的な演技力を見せる名優たち。彼らの多くがどこで産声を上げ、その腕を磨いてきたかご存知でしょうか? その答えは、ソウルにある「大学路(テハンノ)」という街にあります。
今回、この演劇の聖地・大学路で、今の韓国社会が直面している切実な問題を浮き彫りにする注目の舞台が開幕します。タイトルは、音楽劇「白墨院(ペクムグォン/백묵원)」。3月25日から29日まで、大学路の劇場「空間アウル(공간 아울)」で上演されます。
■ 「大学路を守ってきたのは誰か?」 演劇の聖地が直面する危機
「大学路(テハンノ)」とは、ソウル市鐘路区にあるエリアで、100以上の小劇場が密集する世界でも類を見ない演劇街です。日本でいうところの「下北沢」をさらにスケールアップさせたような場所で、若手俳優の登竜門であり、ベテラン俳優が初心に帰る場所でもあります。
しかし今、この大学路が危機に瀕しています。都市開発や商業化の波に押され、古くから愛されてきた小劇場が次々と姿を消しているのです。音楽劇「白墨院」は、まさにこの「大学路の小劇場の現実」をプロローグとして提示することから始まります。
本作は、劇作家ベルトルト・ブレヒトの名作「アウクスブルクの白墨の輪」の構造を借用した創作劇です。「誰が真の主体なのか」「何が正当な所有なのか」という問いを観客に投げかけます。単なる娯楽としての演劇にとどまらず、社会的な省察の場としての役割を果たそうという、非常に志の高い作品となっています。
韓国では「小劇場文化」を非常に大切にする土壌がありますが、近年は大規模なミュージカルや商業作品に客足が奪われがちです。そんな中で、「創作の生態系を守らなければならない」という切実なメッセージを、芸術的な言語で表現しようとしているのが本作の見どころです。
■ 豪華な布陣が魅せる「血縁を超えた絆」の物語
本作の演出を手掛けるのは、文学博士であり、現在は聖潔(ソンギョル)大学の助教授を務めるイ・シニョン(이신영)氏です。イ・シニョン氏は、2007年に韓国文化芸術委員会の新進芸術家に選出されて以来、世界国立劇場フェスティバルやアジア演劇祭などに数多く招待されてきた実力派演出家です。
また、舞台に立つ俳優陣も、大学路の精神を体現する顔ぶれが揃っています。
「創作集団 遊戯者(ユヒジャ)」の代表であり、ソウル演劇協会の理事も務めるパク・ウヨル(박우열)は、劇中で歌手、地方官、兵士、パク代表など、一人で何役もの重要なキャラクターを演じ分けます。
さらに、ユン・ボムホ(윤범호)は、大監(テガム/朝鮮時代の高官の呼称)、逃亡者、軍人、カン演出家といった多彩な役柄を熱演し、物語に厚みを与えます。
韓国のエンタメ作品によく見られるテーマの一つに「家族愛」がありますが、本作が強調するのは「血縁」ではありません。「ケア(世話)と実践」を通じて形成される「真の人間関係」の価値に焦点を当てています。競争と所有の論理に慣れてしまった現代社会において、連帯と責任の倫理を回復しようという試みは、多くの韓国人の共感を呼んでいます。
■ 専門家たちが結集! 音楽劇という「大衆性」への挑戦
「白墨院」は、難しい社会問題を扱いながらも、「音楽劇(ウマクグク)」という親しみやすい形式を採用しています。韓国で「音楽劇」というと、日本の「音楽劇」や「ミュージカル」に近いニュアンスですが、より演劇的なメッセージ性が強く、劇中で歌われる曲が物語の感情を増幅させる役割を担います。
今回のスタッフ陣には、韓国の演劇界・教育界の重鎮たちが名を連ねています。
翻訳・翻案は元順天郷(スンチョンヒャン)大学教授のオ・セゴン(오세곤)、演技指導は大真(テジン)大学教授のファン・ヨニ(황연희)、音楽監督は元貞洞(チョンドン)劇場の首席で現在は安養(アニャン)大学教授のチャン・ヨンス(장영수)が担当。まさに「韓国演劇界の知性と感性」が結集したプロジェクトと言えるでしょう。
舞台美術や照明、さらにはパントマイムの動きを取り入れた身体表現など、視覚的・聴覚的にも楽しめる工夫が凝らされており、韓国語が完璧に分からなくても、その熱量と表現力に圧倒されること間違いなしです。
韓国ドラマの深みのある演技のルーツは、間違いなくこうした大学路の舞台にあります。華やかなスター街道を歩む俳優たちも、かつてはこの小さな劇場で、本作が問いかけるような「芸術の価値」や「社会との繋がり」に悩み、成長してきました。
もし、この期間にソウルを訪れる予定がある方は、ぜひ「大学路」の空気を感じながら、この熱いメッセージに耳を傾けてみてはいかがでしょうか?
多くの韓流スターを輩出してきた「大学路」という場所。皆さんが好きな俳優さんの中にも、この街の舞台からスタートした方がいるかもしれません。あなたが応援している「推し」のルーツとなった劇場文化について、どう感じましたか? ぜひコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.gukjenews.com/news/articleView.html?idxno=3530369
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