3月8日の「国際女性デー」に合わせ、今、韓国で大きな話題を呼んでいるステージがあります。それは、女性たちがマイク一本で世の中への毒舌をぶちまける「スタンドアップコメディ」。
かつては男性中心だったこのジャンルに、今、強烈な個性を放つ女性たちが続々と参戦しています。なかでも注目を集めているのが、公演名からして挑発的な『雌鳥が鳴けば国が滅びる!(암탉이 울면 나라가 망한다)』。
韓国には古くから「雌鳥が鳴けば家が滅びる(女が口出しするとろくなことがない)」という、現代では完全にアウトな男尊女卑のことわざがあります。その言葉をあえて「国が滅びる」とスケールアップさせてパロディにし、タイトルに掲げたこの公演は、予約開始わずか30秒で完売するという異例の事態となりました。
今回は、韓国の「今」を笑いに変える彼女たちのパワフルなステージと、その背景にあるリアルな韓国社会の姿をお届けします。
■「ダイエット薬のせいで仲間が絶滅」!?タブーを笑いに変える勇気
ステージの幕を開けたのは、自称「デブ」のスタンドアップコメディアン、アヌ(아누)さん。彼女が持ち出したネタは、韓国で社会現象となっている肥満治療薬「ウィゴービー(Wegovy)」や「サクセンダ(Saxenda)」です。
「こうした注射薬のせいで、私の愛するデブたちが絶滅の危機に瀕しています。大事な仲間が突然ガリガリになって現れた時の私の気持ち、わかりますか? 息子や娘の離婚の知らせを聞いた母親の心境ですよ。『そのまま生きればいいのに、なんでまた……』って」
韓国は日本以上に「外見至上主義」が根強く、ダイエットへの執着が凄まじい社会。そんな中で、自身の体をあえてネタにし、「そのままの姿で何が悪いの?」とユーモアで切り返すアヌさんの姿に、会場は爆笑と共感の渦に包まれました。
また、今回の公演で唯一の男性出演者であり、なんと現職の牧師でもあるジュンテ(준태)さんのステージも衝撃的でした。
儒教的な価値観が残る韓国では、宗教界も保守的な側面が強いのですが、ジュンテさんは違います。彼はステージで、あらゆる性的マイノリティの女性たちの幸福を祈り、最後にはキリスト教の厳粛な祈りの言葉を、女性の身体の一部を讃える言葉へと大胆に言い換えてみせました。この「不謹慎」スレスレのブラックユーモアは、抑圧された日常を生きる観客にとって、最高のデトックスとなったようです。
■「妊婦は主人公じゃない」出産100日後のママが叫ぶ本音
もう一人、大きな注目を浴びたのが、出産からわずか100日足らずで舞台に復帰したカン・アンリ(강안리)さんです。彼女は妊娠中にも「足を広げろ!(다리 벌려!)」というタイトルの単独公演を行い、大きな話題となりました。
彼女が斬り込んだのは、韓国の地下鉄にある「妊婦優先席」にまつわる違和感。優先席の愛称である「明日の主人公のための席」というフレーズに対し、彼女はこう言い放ちます。
「結局、私は主人公じゃないってことでしょ? 主役は私のお腹の中にいる子で、母親である私は単なる『助演(脇役)』扱い。ソウル市が勝手に私の人生の配役を決めちゃったわけ」
「母親はこうあるべき」という社会からの無言のプレッシャーに対し、短いトップスで大きなお腹を堂々とさらけ出して笑い飛ばす彼女の姿は、多くの女性に勇気を与えました。「今まで見た妊婦さんの中で一番かっこいい」という観客の声が、その反響の大きさを物語っています。
■「怒り」を「笑い」に浄化する、韓国女性たちの連帯
なぜ今、これほどまでにスタンドアップコメディが韓国女性を熱狂させるのでしょうか。
出演者の一人、チョン・ユンジ(정윤지)さんは、かつて女性団体で性暴力被害の相談を受ける活動家として働いていました。毎日、職場の性差別や犯罪にまつわる電話を受け、怒りに震える日々。そんな彼女が救いを求めたのが、笑いで社会を風刺するスタンドアップコメディでした。
「自分の黒歴史や情けない話をネタにすると、観客が一緒に笑って、時には『あぁ……』と共感してくれる。それが慰めになるんです。『私だけがダメなんじゃないんだ』と思えて、自分を嫌いにならずに済むようになりました」
韓国では今、ドラマや映画でも「強い女性」を描く作品が増えていますが、このスタンドアップコメディの舞台は、よりダイレクトに、より生々しく、女性たちの本音を爆発させる場所となっています。
「雌鳥」が力強く鳴き声をあげ、それをみんなで笑い飛ばす。その笑いのパワーは、古い価値観に縛られた社会を少しずつ変えていく、何よりも強力な「連帯」の武器なのかもしれません。
ダイエット、結婚、出産、そして仕事……女性をめぐる数々の「当たり前」を笑いでぶち壊す彼女たちの活躍、皆さんはどう感じましたか? 日本でもこんなスカッとするステージがあったら、ぜひ見てみたいですよね!
出典:https://h21.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/58959.html
コメント