デビュー30周年を迎えたホン・サンス監督、フランスの映画評論家が読み解く独自の作家性と変化

Buzzちゃんの見どころ

1996年のデビューから30周年を迎えたホン・サンス(홍상수)監督。フランスの映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の評論家が、代表作『北村方向』や最新作『彼女が帰ってきた日』を通じて、欧州で愛される理由を分析しました。

■ フランス映画界が注目した「アジア映画の異端児」

韓国映画界を代表する巨匠の一人であるホン・サンス(홍상수)監督が、世界的な注目を浴びるきっかけとなったのは、2000年代初頭のフランスでの評価でした。2003年から2004年にかけて、彼の初期作品である『豚が井戸に落ちた日』を含む5作品が立て続けにフランスで公開された際、現地の評論家たちは、当時台頭していたポン・ジュノ(봉준호)監督やパク・チャヌク(박찬욱)監督とは全く異なる、彼の独特な作家性に驚きを持って反応しました。

フランスの高名な映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の評論家シャール・テソンは、当時、ホン・サンス監督を「昆虫学者のような映画監督」と評しました。これは、イメージや派手なスタイルを重視する当時のアジア映画の流れに逆らい、人間の行動を冷徹に、かつ驚きの目を持って観察する彼の姿勢を表現したものです。

■ ロメールとの比較と「構造」へのこだわり

ホン・サンス監督の作品は、しばしばフランスの巨匠エリック・ロメール(에리크 로메르)と比較されます。日常的な会話や男女の微妙な関係、そして偶然の重なりを描くスタイルが似ているためです。しかし、近年の批評では、ロメールよりも道徳観に縛られず、物語の断片化がより進んでいる点が強調されています。

監督自身、2004年のインタビューで「人々は私が現実に根ざした映画を作っていると言うが、それは誤解だ。私は自分が構想した構造に基づいて映画を作っている」と語っています。また、1991年にパリに1年間滞在していた経験もあり、その際に出会ったロベール・ブレソンの著作などからも深い影響を受けていることが知られています。

■ 30年の進化と「繰り返し」の中にある自由

デビューから30年、34本におよぶ長編映画を発表してきたホン・サンス監督のスタイルは、年を追うごとに自由さを増しています。初期の作品で見られた、お酒を飲みながら長い会話を交わす「ソウルフルな韓国的風景」は、今や一つの様式美となりました。

特に評論家が転換点として挙げるのが、2011年の映画『北村方向』です。ユ・ジュンサン(유준상)演じる主人公が元恋人を訪ねるシーンでは、激しい感情の吐露の直後に、冷徹なカットによって関係性が遮断されるなど、形式と人物の心理が巧みにリンクしています。他にも『誰の娘でもないヘウォン』でのチョン・ウンチェ(정은채)のモノローグや、『正しい日 間違えた日』での反復構造など、観客の予測を裏切る「遊び心」が随所に散りばめられています。

近年、2017年以降の作品ではプロットがさらにミニマル(最小限の要素に削ぎ落とすこと)になり、かつての不安げな男性像から、自立した女性や人生を受け入れる老人へとキャラクターの重心も変化しています。常に「同じような映画を作っている」と揶揄されることもありますが、その単純な表面の下には、映画の慣習を打ち破る果敢な試みが隠されているのです。

出典:http://www.cine21.com/news/view/?mag_id=109943&utm_source=naver&utm_medium=news

📚 Buzzちゃんの豆知識

■ シネフィル(Cinephile)

フランス語で「映画通」や「映画狂」を意味する言葉です。単に映画が好きというだけでなく、映画の歴史や技法、監督の作家性にまで深い関心を持ち、批評的な視点で映画を楽しむ層を指します。韓国やフランスの映画界では、こうした熱心な観客層が映画文化を支える重要な存在となっています。

■ ミニマリズム(Minimalism)

装飾や説明を極限まで削ぎ落とし、最小限の要素だけで表現する手法のことです。ホン・サンス監督の近年の作品は、登場人物も場所も限定され、カメラの動きもシンプルですが、その分、一つ一つのセリフや俳優の表情が際立つようになっています。

Buzzちゃんの感想

ホン・サンス監督の作品といえば、やっぱりお酒を飲むシーンが印象的ですよね。私は財閥ドロドロ系やミステリーが好きなので、恋愛や日常がメインの監督の作品は少し難しく感じることもありますが、あの独特な「気まずい空気感」の描写はすごいなと思います!皆さんは、物語が劇的に動くエンタメ作品が好きですか?それとも、ホン監督の作品のように日常をじっくり観察するような作品が好きですか?

  • X

コメント

PAGE TOP