推しの本音はどう引き出す?韓国メディア界で話題のキャスティング力と心を動かすインタビューの極意

韓国エンタメの世界をのぞき見ると、華やかなスターたちのインタビュー記事や動画が溢れています。私たちが日々楽しんでいる「推し」の深い言葉や意外な素顔。それらを引き出しているのは、実は記者やエディターたちの並々ならぬ「執念」と「愛」だったことをご存知でしょうか。

最近、韓国のインタビュー専門マガジン『topclass(トップクラス)』の編集長、キム・ミンヒ(김민희)氏が明かした「インタビューイ(取材相手)の心を射止める方法」が、業界内外で大きな話題を呼んでいます。今回は、韓国メディア界の裏側にある「ソブェ(出演交渉)」のリアルと、日本人のファンも知っておきたい韓国ならではの文化的背景を紐解いてみましょう。

■「ソブェ」はもはや戦争?逆転したメディアとスターの立場

韓国の芸能ニュースやバラエティ番組を見ていると、よく「ソブェ(섭외)」という言葉を耳にします。これは日本語で「出演交渉」や「キャスティング」を指す言葉ですが、現在の韓国ではこの「ソブェ力」こそがメディアの命運を分けると言っても過言ではありません。

キム・ミンヒ編集長によれば、20年前はメディア側が電話一本入れれば、スター側が「ありがとうございます!」と喜んで受けてくれる時代だったそうです。30年前には、トップスターのS(実名は伏せられていますが、誰もが知る大物俳優でしょう)が自ら新聞社を訪れ、記者一人ひとりに挨拶回りをしたという伝説のような逸話もあるほどです。

しかし、現在は状況が激変しました。YouTubeやSNSなどの個人メディアが台頭し、地上波放送局や大手紙に勝る影響力を持つインフルエンサーが増えたことで、スターたちが伝統的なメディアのインタビューに応じるメリットが相対的に減ってしまったのです。

今や、丁寧に書いた依頼書を送っても「イッスィ(읽씹)」されるのが日常茶飯事。これは「読んで無視(既読スルー)」を意味する韓国の若者言葉ですが、プロの世界でもこの「イッスィ」が記者たちの心を折れさせています。韓国では心の傷を「マサン(마상 / 心の傷を意味する「マウムエ・サンチョ」の略)」と言いますが、まさに記者たちは日々「マサン」を負いながら、推しとの対話を求めて奔走しているのです。

■「ファン心」をプロの仕事に昇華させる奇跡

そんな厳しい状況の中でも、驚異的な成功率を誇る「伝説のインタビュアー」たちがいます。彼らに共通しているのは、徹底して「相手(スター)の立場」に立って考える視点です。

「なぜ、彼は限られた時間を使ってまで、私のインタビューに応じるべきなのか?」

この問いに答えられない依頼は、韓国では「ッテンカン(떼깡 / ダダをこねる、無理強いする)」と呼ばれ、プロ失格とみなされます。

ここで、ある一人の韓国人ライターのエピソードを紹介しましょう。ノマド・インタビュアーのソ・ボムサン(서범상)氏です。彼は特定の組織に属さない個人でありながら、なんと「ChatGPT」の開発者であるオープンAIのCEO、サム・アルトマン(샘 알트만)氏への単独インタビューを成功させました。

韓国の巨大メディアでも成し遂げられなかったこの奇跡。その秘訣は、4年間で10回以上送ったという「手紙」にありました。アルトマン氏が今何に悩み、どんな不便を感じているか。それを解決するために自分ができることは何か。徹底的に相手に寄り添い、ついには全知(大きな模造紙)サイズの用紙にキーワードを詰め込んだマインドマップまで作成して熱意を伝えたそうです。

「純粋に好きだという気持ち」をエネルギーに変え、専門的な深みへと昇華させる。これは、私たち日本のファンが「推し活」を通じて専門知識を深めていく姿にも重なる、究極のプロの姿と言えるかもしれません。

■ドラマファン必見!名作『悪魔判事』作家を口説き落とした執念

さらに、韓国ドラマファンなら見逃せないエピソードがあります。ドラマ『ハンムラビ法廷~初恋はツンデレ判事!?~(2018年のリーガルドラマ)』や『悪魔判事(チソン主演のディストピア法廷劇)』の脚本家として知られる、ムン・ユソク(문유석)氏のインタビュー秘話です。

ムン・ユソク氏はもともと現職の裁判官であり、ベストセラーエッセイ『個人主義者宣言』の著者としても有名です。彼は滅多にインタビューに応じないことで知られていますが、キム・ミンヒ編集長はどうしても彼に会いたいと願っていました。

そこで彼女が取った行動は、まさに「チトス精神(韓国のCMコピーで『いつか必ず食べてやる』という執念を指す言葉)」そのものでした。ムン氏が裁判官を辞め、新作『自分として生きる決心(나로 살 결심)』を出版する最高のタイミングを数年間待ち続けたのです。

依頼メール一通を送るのにも、通勤中、シャワー中、寝る前まで何度も脳内で書き直したと言います。一度断られたら終わり。その緊張感の中で紡がれた言葉が、ついに「鉄壁」と呼ばれたムン氏の心を動かしました。

■インタビューは「新しい世界」との出会い

キム・ミンヒ編集長は、20年以上のキャリアを持ち、700人以上の人々に会ってきても、いまだに出演交渉は慣れず、毎回が「初めての出会い」だと語ります。

韓国には儒教的な価値観から「謙遜」を美徳とする文化が根強く残っています。そのため、素晴らしい功績を持つ人ほど「私なんて……」と取材を固辞することも少なくありません。そこをこじ開けるのは、記者のテクニックではなく、相手に対する「どれほど深く理解しようとしたか」という誠実な姿勢なのです。

私たちが雑誌やウェブサイトで目にする1ページのインタビュー。そこには、一通のメールに魂を込めたライターの孤独な戦いと、それに応えたスターの信頼関係が刻まれています。

次に大好きな俳優やアイドルのインタビュー記事を読むときは、ぜひその「行間」にある熱量も感じてみてください。きっと、推しの言葉がもっと深く胸に響くはずです。

さて、あなたが今まで読んだインタビューの中で、一番心に残っている「推しの名言」は何ですか?インタビューの裏側にあったかもしれない記者さんの奮闘を想像しながら、ぜひコメントで教えてくださいね!

出典:http://topclass.chosun.com/news/articleView.html?idxno=35896

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