映画監督のパク・ジョンウォン(박종원)が初めて演出した韓国国立オペラ団の『ウェルテル』が、映画的な技法で高く評価されています。4:3の画角や二重スクリーンなど、舞台と映像を融合させた新しい表現が特徴です。
■ 映画監督が挑むオペラの新しい「言語」
韓国国立オペラ団(韓国を代表する国立のオペラ制作団体)が上演した『ウェルテル』が、これまでにない革新的な演出で大きな話題を呼んでいます。今回、演出を手がけたのは映画監督として知られるパク・ジョンウォン(박종원)です。映画界で培った視覚的な感性をオペラの舞台に持ち込み、ジャンルの垣根を超えた新しい美学を提示しました。
作品のベースとなっているのは、フランスの作曲家ジュール・マスネ(Jules Massenet)が1892年に発表したオペラ『ウェルテル』です。これはヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)の名作『若きウェルテルの悩み』を原作とした作品で、登場人物の繊細な心理描写が特徴の「フランス・リリク・オペラ(19世紀後半のフランスで発展した、抒情的で繊細な感情表現を重視するオペラ形式)」を代表する傑作として知られています。
■ 4:3のフレームが呼び起こす「古典映画」の記憶
今回の舞台で最も特徴的なのは、舞台の比率です。通常のワイドな舞台空間をあえて制限し、初期の映画で使われていた「4:3」に近いフレームを採用しました。この選択により、客席全体が古典映画を鑑賞しているかのような独特の雰囲気に包まれます。
演出のパク・ジョンウォン(박종원)は、幕ごとに異なる映画史のスタイルを引用しています。第1幕ではオーソン・ウェルズ(Orson Welles)の監督作品『偉大なるアンバーソン家』を彷彿とさせる、没落直前の豊かな家族風景を描きました。続く第2幕では『風と共に去りぬ』のような郷愁を誘うトーン、第3幕では1940〜50年代のフランス印象主義映画のメランコリーな空気感、そして第4幕ではドイツ表現主義やスカンジナビア映画特有の冷たく形而上学的な空間を演出しています。
このように一編のオペラの中で映画史の変遷を辿るような構成は、演出家の深い映画的教養が作品の感情の流れと見事に合流した結果と言えます。
■ 二重スクリーンと物理的な「ズームイン」
技術面での大きな成果は、舞台の後方と前方の両方に映像を投影する「二重スクリーン構造」です。舞台奥には風景や時間の流れを映し出し、手前には半透明のスクリーンを下ろして多層的な映像を作り出しました。
特に印象的なのは第1幕の舞踏会のシーンです。原作のオペラでは舞台裏の出来事として処理されることが多いこの場面を、映像のシャンデリアや窓枠を重ねることで、幻想的な風景として観客の目の前に再現しました。
さらに、第4幕のオープニングでは驚くべき仕掛けが用意されています。スクリーンの中では小さな点に過ぎなかったウェルテルの宿舎が、スクリーンが上がるのと同時に実際の舞台装置として客席側へゆっくりと前進してくるのです。これは映画の「ズームイン」という視覚効果を、舞台装置の物理的な移動で再現したものであり、観客自身がカメラレンズとなってウェルテルの最後の場所へ引き込まれるような体験を提供しました。
■ 音楽と演出の完璧な調和
今回の『ウェルテル』は、単なる映像の引用に留まらず、舞台芸術が持つ物理的な制約を映画の語彙で突破しようとする試みです。ウェルテルが自ら命を絶つ瞬間に背景に広がる血のイメージなど、視覚的な詩とも言える演出が、音楽と見事に調和しています。
映画監督による初めてのオペラ演出という挑戦は、舞台芸術の可能性を一段階引き上げたという評価を得ており、今後の韓国オペラ界における演出の多様化に大きな影響を与えることが期待されています。
出典:https://www.gukjenews.com/news/articleView.html?idxno=3570655
📚 Buzzちゃんの豆知識
■ 韓国国立オペラ団
1962年に設立された韓国を代表するオペラ制作団体です。ソウルにある芸術の殿堂(ソウル最大級の複合芸術施設)を拠点に活動しており、世界的な演出家や歌手を招いた公演を定期的に行っています。近年はクラシックの伝統を守りつつも、今回のように映画監督を起用するなど、現代的で実験的な試みにも積極的です。
私は『財閥家の末息子』のように、複雑な構成や凝った演出がある作品が大好きなんですが、今回のオペラも「映画の手法」を取り入れるなんて本当にワクワクしちゃいます。恋愛中心の物語はちょっと切なすぎますが、ここまで視覚的に美しいと絶対に見入ってしまうと思うんです。皆さんは、舞台で映像技術をバリバリ使う最新の演出と、昔ながらの伝統的な舞台、どちらに惹かれますか?



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