2023年の第59回百想芸術大賞にて、脳性麻痺を持つ俳優のハ・ジソン氏が演劇部門の演技賞を受賞しました。障害者俳優の受賞は同賞史上初で、授賞式では車椅子の高さに合わないマイクなどバリアフリーの課題も浮き彫りとなりました。
■ 百想芸術大賞59年の歴史で初の快挙
韓国エンターテインメント界において、2023年は障害者俳優にとって歴史に刻まれるべき重要な一年となりました。第59回百想芸術大賞(韓国で最も権威のある総合芸術賞の一つ)にて、演劇『ティーンエイジ・ディック』でリチャード・グロスター役を演じた俳優のハ・ジソン(하지성)が、演劇部門の演技賞を受賞したからです。
百想芸術大賞が始まって以来、障害を持つ俳優が受賞者として名前を呼ばれたのは、59年の歴史の中で彼が初めてのことでした。非障害者の候補者たちと肩を並べて自身の名前が呼ばれた瞬間、ハ・ジソンは喜びを隠しきれない様子で、車椅子に乗りながら左手を何度も振ってステージに上がりました。
しかし、その感動的なシーンの中にも、韓国社会のバリア(障壁)が露呈する一幕がありました。授賞台に設置されたマイクが車椅子に座る彼の高さに合っておらず、関係者が手でマイクを支えなければならなかったのです。この光景は、華やかな授賞式の空間さえも、非障害者を基準に設計されているという現実を象徴していました。
ハ・ジソンは「マイクをもっと下げなければならないのが残念です」と切り出し、ゆっくりと、しかし力強く受賞の喜びを語りました。「演技をしながら、膨大なセリフの量や3時間近く舞台に立ち続けること自体に恐怖を感じていました。それでも、演出家や共演者たちが私の苦労を理解してくれたからこそ、演技を続けることができました」と、仲間への感謝を述べました。そして、スピーチの最後に家族への感謝を伝えた彼は、父親に向けてこう言葉を贈りました。「お父さん、これも現実だよ」
■ 「俳優は趣味」と言い続けた父への証明
授賞式でのこの言葉には、ハ・ジソンの深い葛藤と決意が込められていました。後日のインタビューで彼は、父親が長い間、自分の俳優活動を職業として認めていなかったことを明かしています。
父親は、息子が演技を楽しむ姿を応援してはいたものの、あくまで「趣味」として捉えていたといいます。「演技をすることは支持するが、仕事は公務員を目指しなさい」と、安定した職業に就くことを強く望まれていました。ハ・ジソンにとって、百想芸術大賞という最高の舞台で賞を手にすることは、自分を「一人のプロの俳優」として認めてもらうための、父に対する最大のメッセージだったのです。受賞後、父親はようやく俳優を彼の職業として認めるようになったといいます。
ハ・ジソンの俳優としてのキャリアは、決して短いものではありません。彼は2010年に重症障害者劇団「恋人(エイン)」が再解釈した演劇『ゴドーを待ちながら』でデビューし、それから10年以上にわたって『認定闘争』『一千万個の都市』など数多くの舞台に立ち続けてきたベテラン俳優です。
彼が俳優の道を志した理由は、障害によって経験した「孤独」でした。先天的な脳性麻痺を患う彼は、小学生の頃までは友人とサッカーを楽しめるほどでしたが、中学生の頃から足に補助具をつけなければ歩けなくなりました。手術や治療を重ねても症状は改善せず、友人たちとの距離は徐々に遠ざかっていきました。一人で過ごす時間が長くなる中で、「誰かと対話したい」という欲求が募り、台本を通じて人と繋がることができる演劇の世界へ飛び込んだのです。
■ 終わりのない「認定闘争」とこれからの挑戦
障害者俳優として活動を続ける中では、今もなお多くの困難が立ちふさがっています。ハ・ジソンの場合、脳性麻痺の影響で特定の音(特に韓国語のパッチム「ㄹ(リウル)」など)の発音が難しく、セリフの練習には並々ならぬ努力が必要です。また、非障害者の俳優と共演する際には、練習のスピードや呼吸を合わせるため、周囲の理解とさらなる個人の努力が求められます。
彼は自身の俳優人生を「認定闘争(自分の価値を社会に認めさせるための戦い)」と表現しています。障害者俳優は、演出家や観客、そして社会全体から「一人の芸術家」として認められるために、非障害者以上に自分の能力を証明し続けなければならない現実があるからです。
実際に、韓国の演劇界では今も偏見が残っています。2023年末には、ソウル演劇協会の正会員加入の審査過程で、面接官が障害者俳優中心の公演に対して「専門的な演劇ではないようだ」と発言し、差別問題へと発展しました。ハ・ジソンはこの問題に対しても、SNSを通じて積極的に声を上げ、芸術における「正常性」の基準を問い直そうとしています。
ハ・ジソンは現在、演劇だけでなくSNSを通じても、障害者と非障害者の社会を繋ぐ架け橋になろうと活動しています。「演技をすることが嫌いになったことは一度もありません。人々と出会うために、これからも演技を続けたい」と語る彼の挑戦は、これからも続いていきます。
出典:https://www.pressian.com/pages/articles/2026042417592469968?utm_source=naver&utm_medium=search
📚 Buzzちゃんの豆知識
■ 百想芸術大賞(ペクサンイェスルデサン)
1965年から続く、韓国で最も権威のある総合芸術賞の一つです。映画・テレビ・演劇の3つの分野を対象としており、その規模と歴史から「韓国のゴールデングローブ賞」とも呼ばれます。演劇部門は一度廃止されましたが、2019年に復活し、現在は再び韓国演劇界の重要な指標となっています。
■ 認定闘争(インジョントゥジェン)
自分の存在や価値が、他者や社会から正当に認められるために戦う過程を指します。韓国では、障害者や社会的マイノリティが、単なる「支援の対象」ではなく「専門性を持った一人の人間」として社会の一員に認められるための活動や努力を表現する際によく使われる言葉です。
私は『財閥家の末息子』のような、厳しい現実の中でも自分の価値を証明していく物語が大好きなんですが、ハ・ジソンさんの人生もまさに一つのドラマですよね。お父さんへの「これも現実だよ」という言葉は、俳優としての意地と誇りが詰まっていて本当に格好いいと思うんです!発音のハンデを乗り越えて舞台に立ち続ける情熱、心から尊敬しちゃいます。皆さんは、障害者俳優の方が出演されている作品を観たことがありますか?また、ハ・ジソンさんのように反対されても貫きたい夢ってありますか?
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