ナポリの風を韓国から届ける。エッセイストのキム・スクヨンが綴る名曲フニクリ・フニクラと韓国人のカンツォーネ愛

韓国のエンタメ界において、圧倒的な歌唱力を誇るボーカリストたちは常に注目の的です。K-POPアイドルの中にも、練習生時代にクラシックの基礎を学んだり、音楽番組でイタリアの名曲「カンツォーネ」を披露したりするアーティストは少なくありません。

今回、韓国の地方紙「忠北日報」に掲載された、エッセイストであり音楽家でもあるキム・スクヨン(김숙영)氏の寄稿が、音楽ファンたちの間で「改めて名曲の背景を知るきっかけになった」と話題を呼んでいます。テーマは、日本でも運動会の定番曲として馴染み深い「フニクリ・フニクラ」。この曲を通じて、韓国の人々がいかにして西洋の古典音楽に親しみ、それを自分たちの感性で消化してきたのか、その背景を紐解いてみましょう。

■ 誰もが知るメロディに隠された「世界初のCMソング」の歴史

キム・スクヨン氏は、自宅でリラックスしていたある日、テレビから流れてきたイタリアのカンツォーネに足を止めたといいます。画面に映し出されていたのは、イタリア・ナポリの美しい風景と、雄大なヴェスヴィオ火山。そこで流れていたのが「フニクリ・フニクラ(Funiculì, Funiculà)」でした。

実はこの曲、世界最古の「コマーシャルソング(CMソング)」の一つと言われているのをご存知でしょうか。1880年、ナポリ市はヴェスヴィオ火山の山頂まで登る観光用の鉄道(フニクラ)を設置しました。しかし、当時の人々は「火山が噴火するのではないか」と恐れ、なかなか乗ってくれませんでした。

そこで、ナポリ市は広報活動の一環として、作曲家のルイージ・デンツァ(Luigi Denza)と作詞家のペッピーノ・トゥルコ(Peppino Turco)に依頼し、「この鉄道は安全で楽しいよ!」というメッセージを込めたロゴソングを作らせたのです。

キム・スクヨン氏は、「多くの人がこの歌に合わせて軽快に鉄道を楽しめるよう、速く明るいイメージで表現された」と解説しています。結果としてこの戦略は大成功を収め、多くの観光客が訪れるようになりました。残念ながら、鉄道自体は1943年の噴火や戦争の影響で運行を停止してしまいましたが、歌だけはイタリア民謡として世界中で愛され続けています。

■ 韓国の音楽教育と「カンツォーネ」の深い繋がり

韓国では、この「フニクリ・フニクラ」のようなカンツォーネやイタリア歌曲が、日本以上に身近な存在として親しまれています。

キム・スクヨン氏も、自身の大学時代を振り返りながら、教授がテノールの歌声で朗々とこの曲を歌い、学生たちにその魅力を伝えてくれた思い出を綴っています。韓国の音楽大学や声楽の世界は非常にレベルが高く、また、一般の音楽教育でもこうした西洋歌曲が積極的に取り入れられてきました。

ここで注目したいのが、韓国で使われる「カンツォーネ(Canzone)」という言葉の響きです。本来は単にイタリア語で「歌」を意味しますが、韓国では特に18世紀から19世紀にかけての叙情的なナポリ民謡や、その情熱的なスタイルを指すことが多いです。

韓国人の気質は、しばしば「情(ジョン)」や「興(フン)」という言葉で表されますが、イタリア人の情熱的で開放的な気質とどこか通じるところがあると言われています。そのため、韓国の歌手たちが歌うカンツォーネは、単なるカバーを超えて、聴く者の心を揺さぶる「韓国流の情熱」が加わっているのが特徴です。

■ 現代の韓国エンタメに受け継がれる「クロスオーバー」の精神

現在、韓国では「ファントム・シンガー(JTBCで放送された、クロスオーバー男性4人組ボーカルグループ結成オーディション番組)」という番組が大ヒットした影響もあり、クラシックやカンツォーネをポップスと融合させる「クロスオーバー」というジャンルが非常に人気です。

フォレステラ(Forestella)やラ・ポエム(LA POEM)といった人気グループが、現代的なアレンジでこうした名曲を歌い継いでいます。K-POPファンの方なら、推しのグループのメインボーカルが、音楽バラエティ番組などで見事な高音を響かせながら「フニクリ・フニクラ」や「オ・ソレ・ミオ」を歌う姿を見たことがあるかもしれません。

キム・スクヨン氏のエッセイは、忙しい日常の中でふと足を止め、音楽を通じてナポリへの旅を夢見る「心の余裕」の大切さを教えてくれます。

「行こう、行こう、あそこへ。フニクリ・フニクラ……」

この陽気なリズムは、140年以上経った今もなお、韓国の音楽家たちの手によって、私たちの耳に新しい感動を届けてくれています。

皆さんも、お気に入りの韓国人アーティストがカバーしたクラシックやカンツォーネはありますか?「この人の歌声で聴いてみたい!」というリクエストがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。

出典:https://www.inews

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