今、韓国の音楽シーンで最も熱い鼓動を刻んでいるのは「4分の4拍子」のリズムです。K-POPといえば、かつては激しいダンスパフォーマンスと複雑な曲構成が代名詞でしたが、最近の音源チャートを覗いてみると、ある特定のジャンルが勢力を急速に拡大していることに気づきます。それが「ハウス・ミュージック(House Music)」です。
おしゃれで都会的、それでいてどこか懐かしい。そんなハウスのリズムがなぜ今、再びK-POPの心臓部を動かしているのか。その背景と最新のトレンドを紐解いていきましょう。
■ 始まりはシカゴの倉庫から!ハウス・ミュージックとは?
まず「ハウス」というジャンルについて簡単におさらいしましょう。ハウスは1970年代後半、アメリカ・シカゴの「ウェアハウス(The Warehouse)」というクラブから生まれたと言われています。ジャンル名の由来もこのクラブ名から。DJフランキー・ナックルズ(Frankie Knuckles)らが、ディスコ・ミュージックをより機械的で中毒性のあるビートにアレンジしたのが始まりです。
ハウスの最大の特徴は「フォー・オン・ザ・フロア(Four-on-the-Floor)」と呼ばれるリズム。1小節に4回、正確にバスドラムの音が「ドン・ドン・ドン・ドン」と刻まれる4分の4拍子のビートです。これにシンセサイザーの華やかな音色が加わることで、踊りだしたくなるような高揚感を生み出します。
日本でも90年代のJ-POPシーンで一世を風靡したジャンルですが、韓国の音楽シーン、特にアイドルグループの楽曲においても、このハウスの要素は非常に重要な役割を果たしてきました。
■ 「SMエンターテインメント」が築いたハウスの黄金時代
K-POPにおけるハウス・ミュージックの歴史を語る上で欠かせないのが、大手事務所「SMエンターテインメント(東方神起やEXOが所属する韓国4大芸能事務所の一つ)」の功績です。
2010年代半ば、SMは洗練されたハウス・サウンドをアイドル歌謡に落とし込み、独自のカラーを確立しました。その代表格が、2015年に発表されたシャイニー(SHINee)の「View(ビュー)」と、エフエックス(f(x))の「4 Walls(フォー・ウォールズ)」です。
当時、ロンドンを拠点とするプロデュースチームのロンドン・ノイズ(LDN Noise)を起用し、深みのある「ディープ・ハウス(Deep House)」を取り入れたこれらの楽曲は、それまでの「アイドルの曲=派手で騒がしい」というイメージを覆しました。ルナ(LUNA)のソロ曲「Free Somebody(フリー・サムバディ)」や、東方神起(TVXQ!)の「運命(The Chance of Love)」、ボア(BoA)の「ONE SHOT, TWO SHOT」など、SM所属アーティストたちの楽曲には、今もハウスのDNAが脈々と受け継がれています。
■ 第5世代も「ハウス」に夢中!最新チャートを彩る名曲たち
そして今、このハウス・ブームが「第5世代」と呼ばれる若手グループを中心に再び爆発しています。
最近、韓国の主要音源チャート「Melon(メロン)」でトップ100の1位に輝き話題をさらったのが、スターシップ・エンターテインメント(IVEなどが所属)からデビューした新人ガールズグループ、キキ(KiiiKiii)の「404 (New Era)」です。この曲は「UKハウス」をベースにした中毒性のあるビートが特徴で、一度聴いたら耳から離れない「スルメ曲」としてリスナーの心を掴みました。
他にも、ハウスの要素を巧みに取り入れたヒット曲が続々と誕生しています。
・エスパ(aespa):「Whiplash(ウィプラッシュ)」
力強い「ダーク・ハウス」のビートが、彼女たちの持つ近未来的なコンセプトと完璧に融合しています。
・ライズ(RIIZE):「Impossible(インポッシブル)」
ハウスの中でも高速なステップが特徴的な「ハウス・ダンス」をパフォーマンスに取り入れ、大きな反響を呼びました。
・エヌシーティー・ドリーム(NCT DREAM):「When I’m With You」
爽やかなハウス・ビートが、彼ららしい初々しさと洗練さを同時に感じさせてくれます。
・トゥモロー・バイ・トゥギャザー(TOMORROW X TOGETHER(투모로우바이투게더)):「きっと帰ってきて(Waiting for You)」
UKガラージの流れを汲むハウス・スタイルで、切なさと疾走感を表現しています。
さらに、(G)I-DLE(ジー・アイドゥル)の「mono(モノ)」や、新人グループのリセーヌ(RESCENE)、エーディーワン(AD1)なども、ハウスのリズムを基調とした新曲を発表。まさに今のK-POP界は「ハウス戦国時代」と言っても過言ではありません。
■ なぜ今「ハウス」なのか?その理由は「イージーリスニング」
なぜこれほどまでにハウスが好まれるのでしょうか。その理由は、現代の音楽トレンドである「イージーリスニング」というキーワードにあります。
かつてのK-POPは、サビで一気に盛り上がる劇的な構成や、高音を張り上げるボーカルが主流でした。しかし、SNSや動画プラットフォームを通じて音楽に触れる機会が増えた現在、日常のBGMとして何度も繰り返し聴ける「聴き心地の良さ」が重視されるようになっています。
ハウス・ミュージックの規則正しいビートは、ランニング中や通勤・通学、作業中のバックグラウンドミュージックとして非常に相性が良いのです。派手なパフォーマンスを重視しつつも、音源としては「ミニマリズム(最小限の要素で構成すること)」を追求する。このバランスこそが、現在のK-POPが世界中で愛される理由の一つかもしれません。
単なるダンスミュージックの枠を超え、K-POPの新たな「必勝パターン」となったハウス・ミュージック。次々に誕生する新曲たちが、次はどんな新しいリズムを私たちに届けてくれるのか目が離せません。
皆さんの「推し」の曲の中に、実はハウスのリズムが隠れているかもしれません。最近お気に入りの「4打ちソング」があれば、ぜひコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.newsen.com/news_view.php?uid=202603181612192610





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