音楽で世界を魅了した巨匠ユン・イサン、激動の時代と東ベルリン事件に翻弄された芸術家の生涯

Buzzちゃんの見どころ

1967年に起きた「東ベルリン事件」で韓国中央情報部に拉致され、スパイ容疑で無期懲役を宣告された作曲家ユン・イサン(윤이상)。世界的な評価を得ながらも、南北のイデオロギー対立に生涯苦しめられた足跡を辿ります。

■ 西洋の楽器で「韓国の音」を奏でた独創的な技法
かつて韓国がまだ貧しく、伝統文化が西洋文化に圧倒されていた時代、西洋の音楽言語を用いながらも韓国の精神を世界に知らしめた作曲家がいました。それがユン・イサン(윤이상)です。彼は西洋音楽の理論にそのまま従うのではなく、韓国音楽の根源を深く掘り下げました。

ユン・イサンは、西洋の音が鉛筆で引いた鋭い線のようなものだとしたら、韓国の音は筆で描いたような厚みと余韻のあるものだと定義しました。西洋の音が単一の音で表現されるのに対し、韓国の音は一つの音の中に複数の周辺音が共存していることに注目したのです。この独自の視点から、伝統音楽の「農弦(ノンヒョン、弦を震わせて余韻を作る技法)」を現代音楽に取り入れ、独自の「音響複合体」という手法を確立しました。これは1960年代のヨーロッパ現代音楽をリードしたリゲティ・ジェルジュ(György Ligeti)らと肩を並べる、極めて先駆的な試みでした。

■ 貧困と戦争を乗り越え、遅咲きの留学で掴んだ成功
ユン・イサンは1917年、日本統治時代の韓国に生まれました。5歳から漢学を学び、新式の学校でオルガンに出会ったことが音楽人生の始まりでした。13歳ですでに作曲を始め、その曲が地元の映画館で演奏されるほどの才能を見せていましたが、体系的な教育を受ける機会にはなかなか恵まれませんでした。

1935年に日本へ留学した際も、音楽を反対する父親の意向で商業学校に通いながら隠れて音楽を学ぶという苦労を重ねました。その後、太平洋戦争の勃発により帰国を余儀なくされますが、韓国では密かに抗日活動に参加し、解放後は音楽教師として活動しました。38歳という遅い年齢でフランス、そしてドイツへと渡り、1966年にドナウエッシンゲン現代音楽祭で発表した管弦楽曲『礼楽(イェアク)』が大きな反響を呼び、一躍世界的な作曲家の仲間入りを果たしました。

■ 国家権力による拉致と「東ベルリン事件」の悲劇
成功の絶頂にあった1967年、悲劇が彼を襲います。当時の韓国中央情報部(KCIA)の手によって西ベルリンから拉致され、ソウルへと強制送還された「東ベルリン事件」です。当時、ベルリンは東西の往来が比較的容易で、ユン・イサンは北朝鮮に渡った旧友の消息を知るために北朝鮮を訪問していました。これがスパイ容疑とみなされ、無期懲役という重い判決を受けることになったのです。

この事件は国際的な非難を浴び、巨匠ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)やイーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)ら名だたる音楽家たちが韓国政府に抗議の署名を送りました。その結果、1969年に大統領特赦で釈放されましたが、その後、彼は二度と故郷である慶尚南道の統営(トンヨン)の土を踏むことはできませんでした。

晩年も韓国の民主化運動を支援し続け、1980年の光州事件をテーマにした『光州よ、永遠に』を発表するなど、音楽を通じて民族の痛みと平和を訴え続けました。1995年、ドイツでその生涯を閉じましたが、彼の音楽は今もなお、東洋と西洋を結ぶ架け橋として世界中で愛されています。

出典:https://www.joongang.co.kr/article/25432468

📚 Buzzちゃんの豆知識

■ 東ベルリン事件(東ベクトン事件)

1967年に当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権下の韓国中央情報部(KCIA)が、西欧に滞在する韓国人の芸術家や留学生ら約200人が北朝鮮と接触しスパイ活動を行ったと発表した事件です。実際には強引な捜査や拉致が行われ、後に多くの人々の無実が判明したり、政治的に利用された側面が指摘されたりしています。

■ 統営(トンヨン)

韓国の南部に位置する港町で、ユン・イサンの故郷です。「韓国のナポリ」と呼ばれるほど美しい景色で知られ、現在は彼の功績を称えて毎年「統営国際音楽祭」が開催されるなど、韓国を代表する音楽の街として有名です。

Buzzちゃんの感想

歴史の荒波に揉まれたユン・イサンさんの生涯を知ると、今のK-POPや韓国コンテンツが世界で自由に愛されている状況が、どれほど貴重なものかを感じますよね。個人的には、スパイ容疑をかけられながらも獄中で作曲を続けたというエピソードに、芸術家の凄まじい執念を感じて圧倒されちゃいました。皆さんは、政治的な理由で才能が制限されてしまう歴史について、どう感じますか?芸術は政治から切り離されるべきだと思いますか?それとも時代背景も含めて芸術だと思いますか?

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