「推しのコンサート、チケットは取れたのに会場が遠すぎる……」「もっと大きな会場で、最高の音響でパフォーマンスを見たい!」
K-POPファンなら一度は抱いたことがある、この「会場問題」。実は今、K-POPの本場・韓国で、ファンの夢を叶えるような「巨大アリーナ建設」の話題が熱く盛り上がっています。しかし、その華やかな期待の裏側で、冷静な議論が巻き起こっているのをご存知でしょうか?
今回は、韓国の地方選挙を前に次々と飛び出す「アリーナ建設公約」の現状と、私たちファンにとっても他人事ではない「現実的な課題」について、韓国現地の視点から詳しく紐解いていきます。
■ 止まらないK-POP熱!「アリーナ建設」が選挙の目玉に?
今、韓国では6月3日の「地方選挙(지방선거)」を控え、各地域の候補者たちがこぞって「我が街に世界レベルの大規模公演場(アリーナ)を誘致する!」という公約を掲げています。
背景にあるのは、もちろん世界を席巻するK-POPの圧倒的なパワーです。ビーティーエス(BTS(방탄소년단))やブラックピンク(BLACKPINK(블랙핑크))といったトップアーティストの活躍は、もはや単なる音楽の枠を超え、巨大な経済効果を生む「国家産業」として扱われています。
韓国政府もこの流れを後押ししており、首都圏に「K-カルチャーアリーナ」を建設するプロジェクトを推進中。さらに、外国人観光客3,000万人時代の早期達成を掲げ、観光産業の起爆剤として大規模な公演施設を重要視しています。
日本人ファンにとってもお馴染みの玄関口、仁川(インチョン)広域市では特にこの動きが活発です。既存の「文鶴(ムナク)競技場(仁川にある多目的スタジアム)」や「アシアド主競技場(2014年アジア大会のメイン会場)」を改修して活用しようという意見から、近未来的な街並みでドラマのロケ地としても有名な「松島(ソンド)国際都市」、空港にほど近い「永宗島(ヨンジョンド)」、さらには「青羅(チョンラ)国際都市」や「桂陽(ケヤン)区」など、あちこちで建設の名乗りが上がっています。
■ なぜ「アリーナ」が必要なのか?韓国の意外な会場事情
ここで少し、韓国の文化的な背景を補足しましょう。実は、K-POPがこれほど世界的に成功している一方で、韓国国内には「コンサート専用」の大規模アリーナが日本に比べて圧倒的に不足しているという課題があります。
例えば、日本では「さいたまスーパーアリーナ(収容人数最大約3万7千人)」や各都市のドーム球場など、1万人から5万人規模を収容できる施設が充実しています。一方、韓国でこれまで主流だったのは「オリンピック公園 KSPOドーム(ソウルの室内アリーナ、収容人数約1万5千人)」や、体育館、あるいは屋外のスタジアムでした。
スポーツ用の施設は音響設備がコンサートに最適化されていないことが多く、ファンからも「もっと没入感のある専用会場が欲しい」という声が長年上がっていました。また、世界的なポップスターがツアーを行うには「5万席以上」の規模が求められることが多く、今の韓国ではその条件を満たす会場を確保するのが非常に難しいという現実があるのです。
■ 「バラ色の公約」に潜むリスクと課題
しかし、韓国の有力紙「京仁日報(キョンインイルボ)」の社説は、こうした政治家たちの「アリーナ公約」に警鐘を鳴らしています。
まず指摘されているのが、「経済性と現実性」です。
大規模なアリーナを建設・運営するには、莫大な費用がかかります。5万人規模の会場を維持するためには、年間を通じて高い稼働率を維持しなければなりませんが、そのための需要調査が十分なのかという疑問です。
次に、「過熱する地域間競争」への懸念です。
「自分の街に誘致したい」という自治体同士の争いが激しくなると、不必要な葛藤が生まれ、選定に漏れた地域には大きな遺恨が残ります。また、政府の予算が足りないからと、安易に民間資本を導入して無理な計画を進めると、途中で事業がストップしたり、完成しても赤字続きの「負の遺産(エムルダンジ:厄介者の意)」になってしまうリスクがあるのです。
さらに、アリーナだけを作ればいいわけではありません。数万人のファンが一度に移動するための交通インフラや、遠征ファンが泊まる宿泊施設の確保など、周辺環境の整備もセットで考えなければなりません。
■ 過去の教訓を忘れずに、ファンのための「本物」を
同紙は、過去の選挙で「ニュータウン開発(大規模な再開発計画)」の公約が乱立したものの、結局は不動産景気の低迷で実現せず、多くの住民を失望させた「希望拷問(ヒマンゴムン:中途半端に期待を持たせて苦しめること)」の事例を挙げています。
アリーナ建設が、単なる「票集めのためのパフォーマンス」に終わってしまっては、一番悲しむのはアーティストであり、私たちファンです。
もし、本当に素晴らしい音響と設備を備えたアリーナが仁川や京畿道(キョンギド)に誕生すれば、日本からの遠征もずっと快適で楽しいものになるでしょう。空港からのアクセスが抜群の場所に、5万人規模のK-POPの聖地ができる――そんな未来は、ファンにとってまさに「夢」そのものです。
だからこそ、有権者(そして私たちファン)は、その計画が単なる「バラ色の青写真」ではないか、具体的な財源や運営計画に基づいているのかを冷静に見極める必要があります。
韓国で今、熱く議論されているアリーナ建設問題。皆さんは、もし韓国に新しい巨大アリーナができるなら、どんな施設やサービスがあったら嬉しいですか?「空港からの直行バスが欲しい!」「会場内に公式グッズの常設ショップがあったらいいな」など、皆さんの理想のアリーナ像をぜひコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.kyeongin.com/article/1759710
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