韓国ドラマや映画を観ていると、きらびやかな財閥の世界だけでなく、妙に生々しい「庶民のリアル」に胸を締め付けられることはありませんか?格差社会、不動産バブル、そして終わりの見えない就職難……。そんな「今の韓国」を生きる人々の体温を、韓国を代表する若手作家たちが小説として描き出すプロジェクトが始動しました。
韓国の大手経済紙「ヘラルド経済」は、12日から「今日についての私たちの物語(오늘에 대한 우리 이야기)」というシリーズ連載を開始しました。この企画には、今もっとも注目を集める16人の若手作家が参加。私たちのすぐ隣にいるような「普通の人々」の日常を、鋭い視点と自由な想像力で切り取っていきます。
今回のニュースは、単なる文学の連載という枠を超え、次なるヒットドラマの「原作」が生まれる場所としても、韓流ファンなら見逃せないトピックとなっています。
■ドラマ「ハッシュ」の原作者、チョン・ジニョンが描く「リアルすぎる韓国人」の日常
シリーズの記念すべき第1回を飾ったのは、チョン・ジニョン(정진영)作家です。彼の名前に見覚えがある方も多いかもしれません。彼は、ファン・ジョンミン(황정민)と少女時代のユナ(윤아)が主演を務めた人気ドラマ「ハッシュ 〜沈黙注意報〜」(2020年・JTBC)の原作者として知られています。
チョン・ジニョン作家は、長年記者として活動してきた経歴を持ち、そのリアリティあふれる描写には定評があります。ちなみに、彼の奥様はドラマ「シュルプ(王座をかけた教育バトル)」など数々の名作に出演する名脇役のパク・ジュンミョン(박준면)さん。夫婦揃って韓国のエンタメ界を支える存在です。
そんな彼が今回発表した短編のタイトルは「コッコッコ(껄껄껄)」。このタイトル、実は韓国の社会現象を象徴する言葉なんです。
韓国では投資(株や不動産)で失敗したりチャンスを逃したりした際、「あの時買っておけば(サ・コッ)」「売っておけば(パ・ロッ)」と後悔する人を、語尾の「コッ(〜すればよかった)」とオウムの「エンムセ」をかけて「コンムセ(껄무새)」と呼んだりします。この「コッコッコ」というタイトルには、そんな現代人の悲喜こもごもが凝縮されているのです。
物語に登場するのは、京畿道(キョンギド/ソウル周辺のベッドタウン)からソウルへ、誰よりも忙しく通勤する「あなた」です。同僚とコーヒーを飲みながら株の話に花を咲かせ、マンションの前に地下鉄が通ると聞けば「資産価値が上がる」とほくそ笑む。一方で、不動産で儲けた友人の話を聞くと、お腹が痛くなるほど嫉妬してしまう……。
「これ、私のこと?」と思わず苦笑いしてしまうような、美化されていない「韓国のリアル」がそこにはあります。
■投資、不動産、通勤地獄…若手作家16人が紡ぐ「私たちの今」
今回のプロジェクトが興味深いのは、チョン・ジニョン作家だけでなく、総勢16人もの作家が名を連ねている点です。
「あの日、兄貴が死んだ」などのミステリーで知られるチャン・ガンミョン(장강명)作家をはじめ、現在の韓国文学界を牽引する若手が集結しました。彼らがテーマにするのは、以下のような「今の韓国」を取り巻く切実な問題です。
・高騰し続ける不動産価格と「家を持つこと」への執着
・乱高下する株価や仮想通貨に一喜一憂する投資ブーム
・気候変動や社会的不平等といった普遍的な不安
・そして、中東情勢の影響を受ける韓国経済の波
韓国では近年、こうした社会問題を真正面から扱った「ハイパーリアリズム小説」が、ドラマや映画の原作として選ばれる傾向が非常に強まっています。「イカゲーム」や「パラサイト 半地下の家族」が世界を熱狂させたように、韓国特有の、しかし世界共通の「生きづらさ」を描く力が、今の韓国文学には溢れているのです。
ここで少し韓国の背景を補足すると、韓国は日本以上に「ソウル一極集中」が激しく、ソウル市内の家賃が高騰しているため、多くの若者や会社員が往復3〜4時間をかけて京畿道から通勤しています。これを韓国では「出退勤地獄」と呼び、ドラマ「私の解放日誌」でも大きなテーマとなりました。今回の小説シリーズも、そうした「移動するだけで疲れ果ててしまう日常」の中で、スマホを握りしめながら夢を見る人々の姿が描かれています。
■ネットで手軽に読める短編小説が、次なるヒットドラマの種に?
この連載は、まず「ヘラルド経済」の公式サイトで先行公開され、その後、NAVER(ネイバー)やDaum(ダウム)といった韓国の主要ポータルサイトでも配信される予定です。
原稿用紙20枚程度の「葉編(ヨッピョン/掌編小説)」という形式なので、忙しい現代人でも通勤の合間にサッと読めるのが魅力。こうしたウェブ発の短編から、魅力的なキャラクターや独創的な設定が注目され、ドラマ化の話がトントン拍子に進むケースが今の韓国では非常に多いのです。
チョン・ジニョン作家の作品が、これまでに「ハッシュ」だけでなく「ジェンガ」なども映像化が進行しているように、今回の16人の作家たちの物語からも、私たちが数年後にNetflix(ネットフリックス)などで熱狂する新作ドラマのヒントが隠されているかもしれません。
韓国の若手作家たちが、ペン(あるいはキーボード)という鋭いメスで解剖する「今日の韓国」。そこには、私たちがドラマを観ているだけでは気づかない、より深い韓国社会の素顔と、それでもたくましく生きる人々のエネルギーが詰まっています。
チョン・ジニョン作家が描く「投資に一喜一憂する日常」、皆さんも共感できる部分はありますか?「あの時買っておけばよかった……」なんて後悔、実は国を超えて共通の悩みかもしれませんね。あなたが今、一番「リアルだな」と感じる韓国ドラマのシーンや、今回の連載で気になる作家さんがいたら、ぜひコメントで教えてください!
出典:https://biz.heraldcorp.com/article/10692725?ref=naver





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