韓国の国民的俳優たちが共演し、公開当時320万人以上の観客を動員した感動の名作が再びお茶の間に届けられます。韓国の教育放送局EBS(日本のNHK Eテレに近い教育専門の公共放送)の「韓国映画特選」にて、映画『アイ・キャン・スピーク(아이 캔 스피크)』が放送されることが決定し、改めてその作品性が注目を集めています。
本作は、単なるコメディ映画だと思って見始めると、中盤からの衝撃的な展開に涙が止まらなくなる「人生の1本」として多くのファンに愛されている作品です。今回は、主演のナ・ムニ(나문희)とイ・ジェフン(이제훈)の魅力とともに、本作がなぜこれほどまでに韓国人の心を揺さぶるのか、その背景を深掘りしていきましょう。
■「苦情の女王」と「原則主義の公務員」が巻き起こす絶妙なケミストリー
物語の舞台は、活気あふれる市場がある町。主人公のオクブン(ナ・ムニ(나문희))は、20年間でなんと8000件もの民情(役所への苦情や要望)を叩き込み、公務員たちから「鬼のばあさん」と恐れられている有名人です。そんな彼女の前に、一切の妥協を許さない原則主義の9級公務員、ミンジェ(イ・ジェフン(이제훈))が現れます。
ちなみに「9級公務員(韓国の公務員試験で最も一般的な初任職級)」は、韓国では非常に競争率が高く、安定した職業の象徴。ミンジェのような若くてエリート気質な公務員にとって、オクブンのような存在は最も頭の痛い相手です。
そんな二人の接点は、意外にも「英語」でした。どうしても英語を学びたいオクブンは、ネイティブ並みの実力を持つミンジェに「英語の先生になってほしい」と猛アタックを開始します。反発し合いながらも、マンツーマンの英語レッスンを通じて、二人は次第に年齢を超えた友情を育み、家族のような絆で結ばれていきます。
■笑いの裏に隠された「伝えたい言葉」の真実
映画の前半は、ナ・ムニのコミカルな演技とイ・ジェフンのツンデレな魅力が光る軽快なテンポで進みます。しかし、中盤から物語のトーンは一変します。オクブンがなぜこれほどまでに必死に英語を学ぼうとしていたのか、その理由が明らかになるからです。
実はこの作品、2007年にアメリカ下院議会で行われた「慰安婦謝罪決議案(HR121)」の公聴会で、実際に証言に立ったイ・ヨンス(이용수)さんとギム・グンジャ(김군자)さんの実話をモチーフにしています。
制作陣によると、本作は「日本軍『慰安婦』被害者シナリオ企画案公募展」で75倍という高い倍率を勝ち抜いた作品です。デリケートで重いテーマを、あえて「近所の元気なおばあちゃんの日常」という親しみやすい視点から描くことで、より多くの世代の共感を呼びました。審査員からも「怒りや悲しみだけでなく、ハツラツとしたアプローチで問題の本質に切り込んだ」と絶賛され、韓国映画界でも非常に高い評価を得た一作です。
■「国民のおばあちゃん」ナ・ムニと、実力派俳優イ・ジェフンの圧倒的演技
主演を務めたナ・ムニ(나문희)は、現在80代にして現役バリバリのレジェンド女優です。韓国では「国民のおばあちゃん(국민 할머니)」の愛称で親しまれ、ドラマ『ナビレラ -それでも蝶は舞う-(나빌레라)』などの名演でも知られています。本作で見せた、市場でのパワフルな姿と、議場で震えながらも毅然と立ち向かう姿のギャップは、まさに圧巻の一言。この作品で彼女は、青龍映画賞や百想芸術大賞など、その年の主演女優賞を総なめにしました。
対するイ・ジェフン(이제훈)は、日本でも大ヒットしたドラマ『シグナル(시그널)』や『模範タクシー(모범택시)』シリーズで知られるトップスターです。彼は実在のアナキストを演じた映画『金子文子と朴烈(박열)』に続き、本作のようなメッセージ性の強い作品を立て続けに選んだことで、俳優としての信念が高く評価されました。2025年のSBS演技大賞でも大賞を受賞するなど、今最も勢いのある俳優の一人です。
また、脇を固める俳優陣も豪華です。ドラマ『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜(더 글로리)』や『マスクガール(마스크걸)』で圧倒的な存在感を見せたヨム・ヘラン(염혜란)が、オクブンの親友役として出演しており、今見返すと非常に贅沢なキャスティングとなっています。
■最後に:今だからこそ見たい「心の声」
映画のタイトル『アイ・キャン・スピーク』は、単に「英語が話せる」という意味だけでなく、「私は(真実を)語ることができる」という強い意志が込められています。
政治的な文脈を抜きにしても、一人の女性が過去のトラウマを乗り越え、大切な人のために、そして自分自身のために声を上げる姿は、見る者すべてに勇気を与えてくれます。特に後半、オクブンが議場に立つシーンは、韓国映画史に残る名場面と言えるでしょう。
ナ・ムニとイ・ジェフンが作り出す、笑





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