済州島の美しさと家族の絆を届ける映画制作会社GooPixとは?新作果てしない愛が描く現代韓国のリアル

「韓国のハワイ」とも称され、多くの日本人観光客を魅了する済州島(チェジュド)。青い海や美しい山々といった絶景が魅力のこの島から、今、人々の心に深く染み入る「小さな映画」の波が起きているのをご存知でしょうか。

最近、韓国の映画ファンの間で注目を集めているのが、済州島を拠点とする映画制作会社「GooPix(グピックス / 구픽스)」です。彼らが手掛けた最新作『果てしない愛(原題:끝사랑 / ッケッサラン)』が、済州島の映画館で上映され、多くの市民の涙を誘っています。派手なアクションも超豪華なスターもいないこの映画が、なぜこれほどまでに人々の心を打つのか。その背景には、今の韓国社会が抱えるリアルな課題と、済州島ならではの温かい文化がありました。

■市民が作り上げた「私たちの物語」映画『果てしない愛』とは?

去る2月23日、済州島のロッテシネマ(韓国の大手シネコンチェーン)で開催された『果てしない愛』の上映会には、多くの市民が詰めかけました。客席を埋め尽くしたのは、普段あまり映画館に足を運ばないような中高年層。彼らが熱い視線を送ったのは、自分たちの日常と地続きにある、ある夫婦の物語でした。

映画の主人公は、トラブルに巻き込まれ刑務所に服役することになったダルヨン(달영)。そして、彼を待ちながら認知症を患ってしまった妻のオクブン(옥분)です。特別休暇を得て一時帰宅したダルヨンは、何度も同じ食事を並べる妻の異変を察しながらも、黙ってその愛を受け入れます。しかし、ついに出所して戻った家には、オクブンの姿はありませんでした……。

この映画の特筆すべき点は、市民による「小資本映画」であることです。出演者はわずか10人ほど。音楽や背景も派手なものではなく、俳優たちの演技も時には初々しさが残るものです。しかし、85分間の上映中、客席からはため息や笑いが絶えず、上映後には割れんばかりの拍手が巻き起こりました。

それは、この物語が「どこかの誰かの話」ではなく、今の韓国を生きる人々にとっての「自分たちの話」だったからです。韓国では日本と同様に急速な高齢化が進んでおり、認知症の家族を支える「老老介護」は切実な社会問題となっています。劇中で描かれる、認知症の妻を探し回る夫の姿や、それを助ける近所の人々の姿は、観客自身の人生と重なり、深い共感を呼びました。

■済州島が誇る「三無(サム」の精神が息づく映画作り

本作のメガホンを取ったイ・チグァン(이치광)監督は、実際に義理の母親の認知症介護を経験したといいます。その実体験に基づいた描写が、映画に圧倒的なリアリティを与えています。さらに、この映画には済州島ならではの文化的背景が色濃く反映されています。

かつての済州島には「三無(サム / 삼무)」という誇るべき伝統がありました。これは「乞食がいない、泥棒がいない、そして(家を閉ざす)門がない」という、互いを信じ合い、助け合う精神を指します。映画では、認知症になったオクブンを村中の人々が我がことのように心配し、一緒に探し回るシーンが描かれます。

監督は、「済州の文化や自然、そして人々に穏やかな感動の服を着せたかった」と語っています。現代社会で失われつつある「お隣さん同士の絆」や、伝統的な済州の風景(サンバンサン山周辺や海岸道路)が、映画を通じて瑞々しく記録されています。済州島を訪れたことがあるファンなら、スクリーンに映し出される見慣れた風景に、より一層の愛着を感じることでしょう。

■「誰もが主人公になれる」GooPixが目指す映画の形

この映画を制作した「GooPix(グピックス)」は、2023年にも女性旅行客が直面する問題を扱った映画『楔(原題:쐐기 / スェギ)』で注目を集めた制作会社です。代表のカン・ベクサン(강백산)氏は、済州島で20年以上「里長(イジャン / 日本の自治会長にあたる役職)」を務めてきた人物。地域の文化が消えていくことを惜しみ、映画を通じて済州への愛を表現し続けています。

『果てしない愛』は、春川(チュンチョン)映画祭に招待されたほか、海外の国際映画祭からも10カ所以上の招待を受けるなど、そのメッセージ性は国境を越えつつあります。カン氏は「もっと多くの人々と共に、私たちの人生の物語、私たちの文化を守り伝える映画を作りたい」と意欲を燃やしています。

3月からはまた新しい作品の準備に入るというGooPix。「映画制作に興味があれば、誰でも主人公になれる」という彼らの開かれた姿勢は、K-コンテンツが世界を席巻する中で、また違った形の「韓国映画の底力」を見せてくれています。

大作映画の華やかさも素敵ですが、時にはこうした「自分たちの隣にいる誰か」の体温が伝わる映画に触れてみるのはいかがでしょうか。済州島の美しい風と、そこに暮らす人々の温かさが、きっとあなたの心も癒してくれるはずです。

済州島の美しい景色の中で描かれる家族の絆。皆さんは、認知症や家族の介護というテーマを扱った作品で、心に残っているものはありますか?ぜひコメントで教えてくださいね!

出典:http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=215939

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