韓国ドラマや映画を観ていると、必ずと言っていいほど登場するのが「お酒」のシーンですよね。仕事終わりに緑の小瓶(焼酎)を酌み交わしたり、チキンと一緒にビールを楽しむ「チメク(チキン+メクチュ/ビールの造語)」は、もはや韓国文化の代名詞。しかし今、そんな韓国、そして世界で「お酒の危機」が叫ばれているのをご存知でしょうか。
かつては「人生の潤滑油」だったお酒が、なぜ今、敬遠され始めているのか。その背景には、私たちの推し活とも深く関わる「Netflix(ネットフリックス)」や、最新のダイエット事情が隠されていました。
■ 世界中で「お酒」が余っている?驚きの現状
現在、世界のアルコール市場は未曾有の停滞期にあります。アメリカではバーボンウイスキーの在庫が溢れかえり、フランスでは余ったワインが大量に廃棄処分されるというショッキングなニュースが続いています。
具体的な数字を見ると、その深刻さがわかります。
・アメリカの象徴「ジムビーム」:在庫過多により、主要蒸留所の稼働を90年ぶりに停止。
・ハイネケン(オランダの世界的大手ビール企業):2027年までに全社員の7%にあたる約6000人の解雇を発表。
・中国の高級酒「マオタイ(茅台酒)」:投資対象としても人気でしたが、価格が30%以上も暴落。
かつて「お酒は不況に強い」と言われてきましたが、その神話が崩れつつあります。投資家の間では「お酒はタバコのように、衰退していく産業(斜陽産業)になるのではないか」という不安さえ広がっているのです。
■ 理由その1:Z世代が恐れる「SNSへの刻印」
なぜこれほどまでにお酒が売れなくなったのか。真っ先に理由として挙げられるのが、1990年代後半から2010年代初頭に生まれた「Z世代」の価値観の変化です。
韓国の最新統計によると、20代男性の「高リスク飲酒率(一度に大量のお酒を飲む割合)」は、2018年の17%から、昨年は9.7%へと激減しました。これは40代の飲酒率の半分にも満たない数字です。
韓国の若者がお酒を控えるようになった面白い理由の一つに、「SNSへの恐怖」があります。
「お酒の席で失敗して醜態をさらすと、誰かに撮影されてSNSにアップされ、一生消えないデジタルタトゥー(ネット上に残る記録)として刻まれるのが怖い」という心理が働いているのです。
かつて韓国では「お酒が強くてこそ男らしい」という儒教的な名残もある価値観がありましたが、今の若者にとって酔っ払うことは「カッコ悪いこと」であり、自分を律して健康的な体を維持すること(ウェルビーイング)こそが「ヒップ(洗練されていて格好いい)」なスタイルなのです。
■ 理由その2:お酒のライバルは「Netflix」だった
もう一つの大きな要因は、私たちの自由時間の奪い合いです。
アサヒグループホールディングスの勝木敦志(かつき・あつし)社長は、海外メディアのインタビューで「過去10年間でゲームや動画配信などの娯楽が増え、お酒が与えてくれる楽しみの比重が相対的に減った」と分析しています。
想像してみてください。仕事が終わって家に帰り、寝るまでの3〜4時間。
「友達と外でお酒を飲む」のと、「家でNetflix(ネットフリックス)の新作ドラマを一気見する」のと、どちらがより充実した時間だと感じるでしょうか。
特に韓国では、コロナ禍を経て「ホン술(ホンスル/一人でお酒を飲むこと)」文化が定着しました。わざわざ職場の飲み会(フェシク)で気を使いながら飲むよりも、自分の好きなコンテンツを楽しみながら、リラックスして過ごすことを選ぶ人が増えています。お酒の最大のライバルは、競合他社のビールではなく、私たちの心を掴んで離さない「コンテンツ」そのものだったのです。
■ 理由その3:最新ダイエット薬「ウィゴービー」の影響
さらに意外な伏兵が登場しています。それが、世界中でブームとなっている肥満治療薬「ウィゴービー(一般名:セマグルチド)」です。
本来はダイエット目的で服用されるこの薬ですが、使用者の多くから「お酒を飲みたいという欲求がなくなった」という報告が相次いでいます。脳の報酬系に作用し、ドーパミン(快楽を感じる物質)の出方をコントロールすることで、依存的な飲酒欲求を抑える効果があるのではないかと研究が進められています。
科学の進歩が、人々の「酔いたい」という本能的な欲求さえも変えようとしているのかもしれません。
■ 変化する韓国の夜、私たちはどう楽しむ?
もちろん、お酒が完全に消えてしまうわけではありません。
韓国でも最近は、高級な「ウイスキー」を少量ずつ楽しむ文化や、伝統酒をモダンにアレンジしたお店が人気を集めています。単に酔うためではなく、自分の好みやスタイルに合わせた「価値ある一杯」を求める傾向が強まっています。
韓国ドラマの名シーンには欠かせないお酒ですが、現実の韓国の夜は、少しずつ静かに、そして自分時間を大切にする方向へと変わりつつあるようです。
これからは、ドラマの中の豪快な飲みっぷりを「懐かしい文化」として眺める日が来るのかもしれません。皆さんは最近、お酒を飲む機会が増えましたか?それとも「お酒よりNetflix」派でしょうか?ぜひ、あなたの最近の夜の過ごし方をコメントで教えてくださいね!
出典:https://www.donga.com/news/Economy/article/all/20260227/133435220/1
コメント