ミュージカルの聖地・大学路に激震?演出家チュ・ジョンファが新作ジョーカーに込めた笑う男誕生の秘話

韓国エンタメ界において、ドラマや映画、K-POPと並んで熱狂的な支持を集めているのが「舞台」の世界です。特にソウルの大学路(テハンノ)は、大小さまざまな劇場が立ち並び、「韓国のブロードウェイ」とも呼ばれる演劇・ミュージカルの聖地。今、この場所で一人のカリスマ演出家が、新たな伝説を作ろうとしています。

デビュー14年目を迎えた実力派演出家、チュ・ジョンファ(추정화)。彼女が手がける最新作、創作ミュージカル『ジョーカー(조커)』が、まもなくそのベールを脱ぎます。

■ ミュージカルの聖地・大学路から届いた新作「ジョーカー」の鼓動

「ジョーカー」と聞くと、多くの人がDCコミックスのヴィランを思い浮かべるかもしれません。しかし、本作が描くのは、あのダークヒーローのモデルにもなったと言われる名作『笑う男』の生みの親、文豪ビクトル・ユゴーの物語です。

舞台は1800年代、ナポレオン3世のクーデターに抵抗し、亡命生活を送っていたビクトル・ユゴーの執筆室。彼がのちに代表作となる『笑う男』を書き上げる過程で、どのような葛藤を抱え、自身の孤独と向き合ったのか――。他人の欲望によって口を裂かれた悲劇の主人公「グウィンプレン」というキャラクターが誕生するまでの、壮絶な「創作の苦しみ」が描かれます。

主役のビクトル・ユゴーを演じるのは、変幻自在な演技力を持つイ・ハンミル(이한밀)。そして、彼の傍らで孤独を分かち合うジュリエット役には、透き通るような歌声が魅力のヒョウン(효은)がキャスティングされました。

韓国のミュージカル界では、新作の初演(チョヨン)は非常に注目度が高く、熱心なファンは「どのような解釈が加えられるのか」と固唾をのんで見守ります。今回の『ジョーカー』も、その情報の少なさからファンの間で「一体どんな舞台になるのか」と期待が膨らんでいた一作です。

■ 俳優が恐れるほどの完璧主義?演出家チュ・ジョンファの情熱とこだわり

演出を手掛けるチュ・ジョンファは、もともと俳優としてキャリアをスタートさせた人物です。2013年の『月を抱いたスーパーマン(달을 품은 슈퍼맨)』で演出家に転身して以来、数々のヒット作を世に送り出してきました。

そんな彼女の現場は、実は俳優たちの間で「過酷」であることでも有名です。
「チュ・ジョンファの作品は避ける俳優もいる」と彼女自身が笑いながら明かすほど、そのこだわりは凄まじいもの。練習中はコーヒー一杯飲む暇もなく、トイレに行くことさえ忘れて没頭することもしばしばだと言います。台詞一行の意味を問うために数時間を費やし、衣装の袖の形ひとつにもキャラクターの背景を求める。そんな「執着」ともいえる情熱が、作品の密度を高めていくのです。

特に今回の『ジョーカー』で彼女が心血を注いだのが「衣装」です。
「1800年代のフランスをただ真似るのではなく、その服を着ることで俳優の歩き方、自信、そして人生までもが変わるようなものでなければならない」と語る彼女。衣装製作に時間をかけるあまり、俳優のプロフィール撮影を延期したというエピソードからは、彼女の一切妥協しない姿勢が伺えます。

韓国には、目上の人を敬い、師の教えを忠実に守るという儒教的な背景が今も色濃く残っていますが、舞台の世界における演出家と俳優の信頼関係も非常に熱いものがあります。俳優たちは彼女の厳しい要求に応えることで、自身の限界を超え、観客からの熱狂的な拍手を手にするのです。

■ ビクトル・ユゴーへの心酔が生んだ、創作の苦しみと歓喜の物語

チュ・ジョンファがこの作品を構想したきっかけは、ビクトル・ユゴーが遺した「金持ちの楽園は、貧しい者たちの地獄の上に築かれている」という言葉に衝撃を受けたことでした。

彼女はユゴーの精神を深く理解するため、なんとPCバン(韓国のネットカフェ)にこもり、分厚い『レ・ミゼラブル』全巻をパソコンでタイピングしながら読破したといいます。「ただ目で読むだけでは刻み込まれない」と考えた彼女は、まるで写経のように文字を打ち込み続けました。その過程で、彼女はユゴーを「ビッグ(Big)でトール(Tall)で、誰よりも高い(韓国語で“ウィ(上)”+“コ(高)”)存在だ!」と、名前にかけたジョークを飛ばすほど崇拝するようになったそうです。

同じ「書く人間」として、チュ・ジョンファはユゴーの苦悩に自分自身を投影しています。
「なぜこんな文章を書くのか」と批判を浴びることもあれば、正解のない創作に迷うこともある。それでも彼女は、「作家はメッセージを明確に残す責任がある」と断言します。たとえ不快な題材であっても、それを観客に届ける理由が明確であれば、勇気を持って提示すべきだという彼女の信念は、多くの表現者に勇気を与えるものでしょう。

大学路の小さな練習室で、A4用紙の台本を握りしめて汗を流す俳優たち。彼らの声が歌となり、物語が形を成していく瞬間。3月12日に幕を開けるミュージカル『ジョーカー』は、単なるエンターテインメントを超え、表現者の魂の叫びを聴く場所となるはずです。

これまで韓国ドラマやK-POPを中心に楽しんできた方も、ぜひ一度、大学路の熱気に触れてみてはいかがでしょうか? チュ・ジョンファが命を懸けて作り上げたユゴーの物語は、きっと皆さんの心に深い爪痕を残すことでしょう。

あなたは表現者の「執念」が詰まったこの舞台、誰と一緒に見に行きたいですか? また、皆さんが今までで一番「魂を揺さぶられた」韓国ミュージカルがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね!

出典:https://www.harpersbazaar.co.kr/article/1897835

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