舞台に命を吹き込み続けて60年。韓国演劇界の至宝パク・ジョンジャが語る一瞬の煌めきと現役であることの矜持

韓国のエンターテインメント界において、俳優の「格」を決めるのは、華やかなドラマの視聴率や映画の動員数だけではありません。その根底にあるのは、やはり「舞台(演劇)」への情熱とキャリアです。今回ご紹介するのは、韓国演劇界の生ける伝説、パク・ジョンジャ(박정자)さんのインタビュー。御年80歳を超えてなお、現役のトップランナーとして舞台に立ち続ける彼女の言葉には、日韓のファンが学ぶべき「人生の極意」が詰まっていました。

■韓国演劇界の巨星、パク・ジョンジャとは?

韓国の俳優界には「演劇出身」という言葉に特別な重みがあります。パク・ジョンジャさんは、まさにその頂点に立つ人物。1962年に舞台『フェドラ』でデビューして以来、なんと60年以上もの間、一度も休むことなく舞台に立ち続けてきました。

彼女が出演した作品は160編を超えます。日本でも馴染みのあるアガサ・クリスティ原作の舞台や、名作『エクウス(1970年代に世界的人気を博したサイコドラマ)』、そして彼女の代名詞とも言える『19そして80(日本タイトル:ハロルドとモード)』など、韓国現代演劇の歴史は彼女の足跡そのものと言っても過言ではありません。

韓国では、単に年長者であるだけでなく、その生き方や知恵で周囲に影響を与える女性を「ヨジャ・オルン(直訳:女性の大人)」と呼び、深い敬意を払います。今回のマリー・クレール誌のインタビューは、そんな「真の大人」としての彼女の姿を浮き彫りにしています。

■「私にしかできないやり方」という誇り

インタビューの冒頭、彼女は非常に印象的な言葉を残しています。
「これは私がやらなきゃ、という思いがあるの。でも、それは妄想よね。私じゃなきゃできない? とんでもない、誰だってできますよ。でもね、それでも『私ができるやり方』はあるんです。そのやり方だけは、誰にも代わることができない。それは誰にもできないことなの」

この言葉は、過酷な競争社会である韓国の芸能界で生き抜いてきた彼女の、確固たるアイデンティティを感じさせます。他人の代わりはいくらでもいるけれど、自分の「表現」だけは唯一無二であるという自信。これは、推しのアイドルや俳優を応援する私たちにとっても、自分らしく生きるためのヒントになるのではないでしょうか。

■「死ぬまで緊張する」――ベテランが見つめる舞台の刹那

60年以上も舞台に立ち、数えきれないほどの賞を手にしてきた彼女ですが、今でも舞台に上がる前は緊張すると言います。「死ぬまで緊張するでしょうね。たぶん、どんどんひどくなる。それは全く良くならない。緊張するということは、それだけ執着や未練を捨てきれないということだから」と笑う彼女の姿は、あまりにも人間味にあふれています。

韓国のファンが彼女を愛してやまない理由は、この「常に真剣勝負」な姿勢にあります。演劇は映画やドラマのように形として残りません。その場で消えてしまう「刹那(せつな)」の芸術です。
彼女はそれを「酸化する」と表現しました。その一瞬のために全精力を注ぎ込み、自分を燃やし尽くす。その過酷なまでの誠実さが、観客の心を震わせるのです。

■「ブラボー」の一言に救われた瞬間

インタビューの中で、彼女は2023年に出演したサミュエル・ベケットの名作『ゴドーを待ちながら』のエピソードを披露してくれました。彼女が演じたのは、セリフが一切ない荷物持ちの「ラッキー」という役。しかし、劇中で突然8~9分間もの間、脈絡のない言葉を猛烈な勢いで吐き出し続けるという、俳優にとって最も過酷なシーンがあります。

「息もできないほど言葉を吐き出した後、劇場が静まり返ったんです。その時、2階席の遠くから、ある中年の男性がポツリと『ブラボー』と呟いたんです。その一言が、正確に私に突き刺さりました。……ああ、これだ。私はこのために演劇をやっているんだ、と思ったわ」

このエピソードは、韓国の演劇ファン(いわゆる『ヨングッ・ドギ(演劇オタク)』)の間でも語り草になっています。言葉が通じるかどうかではなく、魂が触れ合った瞬間の喜び。パク・ジョンジャという俳優が、いかに観客との対話を大切にしているかが伝わってきます。

■挑戦は続く――ミュージカル『ビリー・エリオット』への出演

そんな彼女は、今年4月から開幕するミュージカル『ビリー・エリオット(バレエダンサーを目指す少年の物語)』で、ビリーの祖母役として再び舞台に立ちます。今回で3度目の出演となりますが、やはり「もっと楽しみたいけれど、また緊張してしまうはず」と謙虚に語っています。

韓国には「テハクロ(大学路)」という、100以上の小劇場が集まる演劇の聖地があります。K-POPやドラマで韓国文化に興味を持った方も、いつかこの街を訪れ、パク・ジョンジャさんのような伝説の俳優の舞台を肌で感じてみてほしいと思います。

彼女の生き方は、私たちに教えてくれます。「今この瞬間を精一杯生きること」の美しさを。80歳を過ぎてなお、新しい舞台に挑戦し続ける彼女の姿に、大きな勇気をもらえるはずです。

60年以上も一つの道を極め、それでもなお「緊張する」と語るパク・ジョンジャさん。皆さんは、彼女のように長く情熱を傾け続けているものはありますか? 彼女の言葉で心に残ったフレーズがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね!

出典:https://www.marieclairekorea.com/culture/2026/03/the-legends-jeongja-park/?utm_source=naver&utm_medium=partnership

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