「生まれつきの才能じゃなく、努力してるんです」——映画『ナンバーワン』の開封を控えたチャン・ヘジン(장혜진)がこう語った。かつて『パラサイト 半地下の家族』(2019年)で認識を新たにした韓国を代表する俳優のひとりが、自分の仕事への向き合い方をこう表現する。その言葉の背景には、意外な経歴と、不器用なまでに仕事に向き合う姿勢があった。
■9年のブランクを経て、今があるまで
日本でも『パラサイト』での박충숙役で強く記憶されているチャン・ヘジンだが、実は華々しいデビューから離れた時期がある。ソウルの名門・韓国芸術総合学校演劇部の第1期出身で、映画での実績もあったはずなのに、卒業後に「自分には演技の才能がない」と判断。故郷の釜山に戻り、スーパーマーケットやデパートで働く日々を送ったのだ。
その時代、彼女は「販売王」に上り詰めるほどの実直さを備えていた。しかし2007年、イ・チャンドン監督の『ミリャンク』(邦題『秘密と嘘』)で演技に戻る転機が訪れる。それ以来、ドラマや映画で様々な役柄を演じ、『パラサイト』を境に「誰もが知る女優」へと昇華したのだ。
今回のインタビューで特に印象的なのは、その勤勉さである。彼女は句読点ひとつまで役作りに反映させるほどの「台本主義者」だという。言葉遣い、間の取り方、そして沈黙までもが計算尽くされている。キム・テヨン監督から「ダッシュを前に寄せろ」「後ろに押せ」と指示されれば従い、ダッシュが2つと3つでは印象が異なることを感じ取る。これはテクニシャンというより、日々の役への献身の結果だ。
「タレント性で生きる女優じゃないんです」という言葉の奥行きが、ここにある。
■『パラサイト』親子が再タッグ『ナンバーワン』の見どころ
『ナンバーワン』は、『パラサイト』で母と息子を演じたチャン・ヘジンとチェ・ウシク(최우식)の再共演として話題を呼んでいる。今作でも親子関係を演じることになった。
物語は奇想天外だ。ある日、息子のハミンの目に「数字」が見え始める。母が作った食事を食べるたびに、壁や床から突如現れた数字が1ずつ減少していくのだ。その数字がゼロになる時、母親の恩実も死ぬ。この運命を知ったハミンは、釜山の家を離れソウルへと向かう。
チャン・ヘジンが演じる恩実は、早くに夫を失い、長男まで事故で亡くしている。ハミンがソウルに去った後も頻繁に息子を思いながら、それでも必死に現在を生きる女性だ。「悲しみに沈まない、たくましい姿勢が好きだった」とは本人の言葉。
実は、彼女がママ役を演じるのは今回が初めてではない。『セゲセンムン』『ヴィッグ・シティ・ラブ』『恩中と相演』といった近年の作品から、『愛の不時着』『パラサイト』まで遡ると、枚挙にいとまがない。それでも「ママ役から抜け出したいのか」と問われると、首を横に振る。
「それぞれのママが全然違うじゃないですか。性質も、好みも、表現の仕方も。ママを演じるけど、『ママでいいや』という感じではない。だから毎回新鮮なんです」
■努力で積み上げた信頼と、キャリアへの姿勢
昨年だけでも『トリガー』(Disney+)、『魔女』(チャンネルA)、『ばったり騙された』『恩中と相演』(Netflix)、『ラブ・ミー』(JTBC)、そして映画『セゲセンムン』と、チャン・ヘジンは多作の俳優だ。
役選びの際、作品の大きさや役のウェイトはあまり気にしないという。一シーン程度の出演でも「面白そうだ」と感じたら引き受ける。興味深いことに、「不思議なことに」ちょうど消化できるだけのオファーが舞い込むのだという。
「日常の自分ではしないことをやるのが面白い。常に『これが最後だ』と思いながら臨みます。俳優というのはキャスティングがなければ終わる職業。次の作品が来るか心配するより、今作が最後だと思って全力を注げば、作品を終えても心残りがないはずです」
その姿勢は、小さな工夫にも表れている。年齢の割に早めにママ役を任されるようになったとき、「ママとして長くやろう」と決めたそうだ。かつて女優がママ役を敬遠していた時代があったが、今はそうではない。むしろ、早期に同じポジションを確立することで、より自由な選択肢を手に入れられるという戦略的な判断がそこにある。
極めつけは、彼女の「モデル」としての側面だ。役が作中で病気なら、その撮影前日、チャン・ヘジン本人も実際に体調を崩してしまうという。風邪をひいたり、声が出にくくなったり——役への没入が身体に先行してしまうのだ。だからこそ、撮影現場では直前まで世間話をしてから、ぱっと演技に入る。綿密な準備があるからこそ可能な、この軽やかさ。
「『それでも、なお』という言葉をよく使うんです」
彼女は語った。人生を振り返ると、常に良いことばかりではなく、辛いことも多かった。しかし「それでも、なお」歩み続けた。そうした経験が演技に表現され、それが感謝につながるのだと。
「冗談のように言いますが、『私の人生が私を女優にした』って。平坦だったら、こんなに多くの感情は表現されなかったでしょう。過ぎ去った人生が演技の奥行きを作っていて、自分が引き受けたキャラクターを見ると『それでも、なお』しっかり立っているという感じがするんです」
才能ではなく努力。生きることの苦さを知っているからこそにじみ出る、その言葉の重みと説得力——それが、チャン・ヘジンという俳優の本質なのだろう。映画『ナンバーワン』での、彼女の演技がどのように観客の心を揺らしていくのか。その答えを見に映画館へ足を運ぶ価値は、十分にある。
出典:https://www.sisain.co.kr/news/articleView.html?idxno=57323
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