韓国映画界で旋風を巻き起こしている『王と暮らす男』が、500万観客の大台を目前に控えている。KBS1の時事番組『ササゴンゴン』(事あるごとに、様々な社会現象を検証する番組)で、大衆文化評論家・金憲植氏が、この映画の異例の大ヒットの秘密に迫った。
朝鮮時代の第6代国王・端宗(たんしゅう)が、江原道栄月で流刑生活を送った歴史を題材にした本作は、2月20日時点で累計観客数441万名を記録。2005年に歴代最大級の大ヒットとなった『王の男』(1230万観客動員)よりも、400万観客達成までのペースが速いという。
金氏の分析によると、『王の男』は17日で400万観客を突破したのに対し、『王と暮らす男』は15日での達成。昨年最大のヒット映画『ゾンビ娘』(564万観客)と同じペースで、さらに2日前倒しされたことになる。制作規模が小さい中小型映画である本作は、損益分岐点が260万観客に設定されており、すでに440万観客を超えた現時点で、製作費の2倍以上の利益を上げているという異例の成功を収めている。
本作の異なる視点が観客の心を掴んでいるようだ。従来の時代物映画は権力の頂点に立つ主人公の野心や権力争いに焦点を当てることがほとんどだった。しかし、本作は権力争いの描写をしながらも、一般庶民の生活を同時に映し出す「生活時代劇」として機能しているという。
監督を務めた張皓準氏は、これまでのメディアで端宗の物語は、王位奪取の過程である「계유정난(けいゆうせいなん)」までに集中していたと指摘。王位を奪われた後の端宗の人生が、韓国映画で描かれることはなかったと述べている。本作は「王位を失った幼き王と、最後までその王を守ろうとした人々の忠義と友情」に焦点を当てることで、新たな歴史解釈を試みている。
金氏は現代の価値観とのリンクを指摘する。現代の若い世代は出世や昇進を目指すことから離れつつあり、高い地位にはストレスが伴うという認識が広がっているという。流刑地で村人たちと共に暮らし、日常の生活の大切さを知る端宗の姿は、「今を生きることの価値」を求める現代人の心理と合致しているのだ。
映画では、端宗が「これまで自分は何の決定も自由もなく、ただ命令に従うだけだった」と語る場面がある。王としての地位よりも、平凡で自由な日常生活こそが、彼にとって最も人間らしい時間だったという解釈が、観客の深い共感を呼び起こしているとも考えられる。
評論家はまた、歴史的事実にも言及。241年後に端宗は復権され、ノサン大君の身分から昇格された。史実では、端宗の遺体埋葬を禁じた厳命に逆らい、어몽도なる人物が遺体を収める。映画製作者は「なぜ端宗は毒杯を飲まされたのか」「なぜ埋葬を禁じられながらも遺体を守る者がいたのか」という歴史の空白を、合理的な想像力で埋めようとしたという。
タイトルが示す通り、「王になる人生」よりも「王の傍らで生きる人生」に光を当てる本作。主役ではなく脇役の人間ドラマに惹かれ、映画館に足を運ぶ観客の姿が、現代人の価値観の変化を象徴しているのかもしれない。
出典:https://news.kbs.co.kr/news/pc/view/view.do?ncd=8489518&ref=A

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