韓国の演劇界がいま、熱い視線を注いでいる場所があります。それは、ソウルの中心部・明洞(ミョンドン)の喧騒から少し離れた南山(ナムサン)の麓に位置する「三一路(サミルロ)倉庫劇場」です。
2026年3月17日、この韓国演劇の「聖地」とも呼ばれる場所で、「2026 ソウル国際モノドラマフェスティバル」が華やかに幕を開けました。単なる演劇の祭典ではありません。たった一人の俳優が舞台に立ち、その圧倒的な演技力と存在感だけで観客を物語の世界へと引き込む「モノドラマ(一人芝居)」の祭典です。
今年は記念すべき第3回を迎え、名称も「ソウル・モノドラマフェスティバル」から「国際」という言葉が加わり、世界中からアーティストが集結するグローバルな祝祭へと進化を遂げました。
■韓国演劇の「伝説」が息づく三一路倉庫劇場とは?
今回のニュースの舞台となっている「三一路倉庫劇場(サミルロチャンゴ・クッジャン)」について、日本の韓流ファンの皆さんに少し解説しましょう。
ここは1970年代、韓国の現代演劇が産声を上げた象徴的な場所です。当時の韓国は、表現の自由が厳しく制限されていた時代。そんな中、古い倉庫を改造して作られたこの小劇場は、実験的で挑戦的な作品が上演される「抵抗と自由の砦」でした。
日本で言えば、下北沢の本多劇場や新宿の紀伊國屋ホールのように、演劇人なら誰もが一度は立ちたいと願う「聖地」に近い感覚です。特に1977年に故チュ・ソンウン(추송웅)氏が上演した一人芝居『赤いピーターの告白』は、当時の韓国演劇界に空前のブームを巻き起こし、モノドラマというジャンルを大衆に定着させた伝説として語り継がれています。
今回のフェスティバルは、まさにそのチュ・ソンウン氏の精神を継承し、21世紀の新たな才能を世界へ送り出そうという願いが込められているのです。
■「一人の俳優が一つの宇宙を作る」モノドラマの魅力
開会式で韓国演劇協会のパク・ヒョンスン(박현순)理事長は、「韓国演劇の象徴的な拠点である三一路倉庫劇場で、国際的なネットワークを構築できることは非常に意義深い」と語りました。
また、海外審査委員として参加したポーランド・クラクフフェスティバルの運営委員、ジエン・ラシャド氏は、モノドラマの魅力をこう表現しています。
「モノドラマは、たった一人の俳優が舞台の上に一つの宇宙を広げる、最も親密な芸術形式です」
韓国の俳優たちは、映画やドラマで活躍する一方で、演劇の舞台を「自分を磨く原点」として大切にする傾向が非常に強いです。例えば、映画『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホ(송강호)さんや、ドラマ『賢い医師生活』のチョ・ジョンソク(조정석)さんも、演劇舞台でその圧倒的な基礎力を培いました。
今回のフェスティバルでも、そんな「未来のスター」や「実力派のベテラン」が、マイクを使わず、CGにも頼らず、ただ体一つで観客と対峙します。その緊張感と感動は、映像作品では味わえない格別なものになるはずです。
■日本との縁も!世界から集まった珠玉のラインナップ
今回のフェスティバルには、海外から70チーム、韓国内から41チーム、そして新人部門に24チームという多数の応募がありました。その中から厳選された12作品が上演されます。
注目すべきは、その国際色豊かなラインナップです。
・北マケドニア:開幕作『カルメン』
・インド・スリランカ合作:『スイング・オブ・ラブ』
・日本・ドイツ合作:『レターズ・フロム・チラン(知覧からの手紙)』
・ルーマニア:『リチャード3世、ザ・マン』
日本とドイツの合作『レターズ・フロム・チラン』のように、歴史的なテーマを扱った作品が韓国の舞台でどのように演じられるのか、非常に興味深いですね。
さらに、国内の公式参加作には、『朝がある(아침이 있다)』、『グレタ・オト(그레타 오토)』、『そのように山を越える、消えない(그렇게 산을 넘는다, 사라지지 않는)』、『オタ活の理解(덕질의 이해)』など、タイトルを聞くだけで好奇心をそそられる作品が並んでいます。
特に、タイトルの「オタ活(ドッチル)」という言葉は、日本のファンの皆さんにもお馴染みですよね。韓国でも自分の好きなアイドルや俳優を熱狂的に応援する文化を「ドッチル(덕질)」と呼び、今や一つの社会現象として定着しています。これをモノドラマでどう表現するのか、ファンならずとも気になるところです。
■若手育成の「インキュベーティング・ファクトリー」
今回のフェスティバルで新設されたのが、青年芸術家の発掘・支援を目的とした「インキュベーティング・ファクトリー(Incubating Factory)」部門です。
韓国の芸能界や芸術界は、非常に競争が激しいことで知られています。特に演劇の世界では、才能があっても公演資金の調達が難しく、夢を諦めてしまう若者も少なくありません。今回のプロジェクトでは、そんな若手クリエイターたちに実験的なステージを提供し、リレー形式で公演を行うことで、新しいエネルギーを注入しています。
さらに、国内部門の優勝チームには、2026年5月にポーランドで開催される「クラクフフェスティバル」への進出機会が与えられます。韓国の演劇がアジアを越え、ヨーロッパへと羽ばたく大きなチャンス。まさに、K-DRAMAやK-POPの次に続く「K-THEATER」の夜明けを感じさせます。
■観客と俳優が「一つ」になる時間を求めて
「2026 ソウル国際モノドラマフェスティバル」は、3月17日から4月25日まで、約1ヶ月半にわたって開催されます。
明洞のショッピングも楽しいですが、少し足を伸ばして、歴史ある劇場の木の椅子の温もりを感じながら、俳優の呼吸が届く距離で演劇に浸る……そんな韓国旅行も素敵だと思いませんか?
たった一人の俳優が、言葉の壁を超えて感情を揺さぶる瞬間。それは、私たちが大好きな韓国ドラマや映画の「深み」がどこから来ているのかを教えてくれる貴重な体験になるはずです。
韓国の演劇界を支える「演技の力」を感じるこのフェスティバル、皆さんはどの作品が一番気になりますか?「オタ活の理解」なんて、私たちの推しへの情熱がそのまま舞台になっているかもしれませんね(笑)。気になる作品や、行ってみたい劇場について、ぜひコメントで教えてください!
出典:http://www.enewstoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=2407752





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