「ハッピーエンディングはない。それでも尚。」
映画『パバンヌ』(監督:イ・ジョンピル)の主人公・要漢(変要漢 分)のセリフだ。寂しさの中に美しさを貫く言葉である。
本作は心の扉を閉ざして生きていた3人の人物が、互いに光となることで、人生と愛に向き合っていく映画だ。『三進グループ英語TOEIC班』『脱獄』で知られるイ・ジョンピル監督の最新作で、繊細さが随所に散りばめられている。文尚民(ムン・サンミン(문상민))、高アソン(コ・アソン(고아성))、変要漢(ビョン・ヨハン)が主演を務める本作は、韓国エンタメ界の注目が集まるプロジェクトとなっている。
■オープニングから衝撃的な大人の恋愛模様
映画は李鳳連とパク・ヘジュンの演技でオープニングを飾る。レトログラマーなロマンスである。1つのリンゴが割かれ、それぞれの領域に分かれていくように、彼らの愛も熱かったが急速に冷め、1つずつ分離していく。文尚民が演じた経록(キョンロク)の両親の物語だ。特にパク・ヘジュンの演技は秀逸。映画『花様年華』(監督:ウォン・カーウァイ)を連想させる強烈さを観客に与える。
イ・ジョンピル監督は試写会後の座談会で、「原作小説では経録の父親の背景がかなり分厚く描かれている。やらないわけにはいかなかった。文尚民のキャラクターの親というより、男女の愛として見てほしかった。ボロボロの食堂で起こる貧乏な人たちの愛。『우묵배미의 사랑(ウムクベミの愛)』のような」と説明。さらに「レストランのシーンは『花様年華』のオープニングを想像して撮影した。移動動線などの部分を。お母さんについても入れたかったし、パク・ヘジュンには『夫婦の世界』(Netflixドラマ)が連想されるようにK-ドラマを衝突させたいという意図もあった」とコメントした。それほどまでに『パバンヌ』のオープニングは冒頭から強いインパクトを放っている。
■夏のような"ベタベタしているけど爽やか"な雰囲気
オープニング以降の展開は落ち着いている。静かであり、かつ退屈ではない。全体的な雰囲気は夏のようだ。ベタベタした粘性を感じさせながらも、涼しい風が吹いて爽やかで青々しい感覚がある。
経録、美貞(ミジョン、高アソン 分)、要漢はユートピア百貨店で出会い、縁を結ぶ。経録は端正な外見で多くの関心を集めるが、特別な感情を感じることなく、人付き合いも得意ではなく、自分の道を歩む。そんな経録の前に要漢と美貞が現れ、状況が変わり始める。暗く無彩色だった経録の人生に、徐々に色が生まれ始めるのだ。その後、経録の直進的な行動により、美貞との出会いが現実のものとなる。要漢もこの2人を応援し始め、3人の友情ストーリーが本格的に幕を開ける。
各自の傷も、この過程で明かされていく。友情と愛が調和し、穏やかな波に小さな波動が起こる。そうして熱い夏が冷たい冬となり、春へ向かっていく。このストーリーに、イ・ジョンピル監督の繊細な演出、映像美、音楽、俳優たちの熱演が調和し、シナジーが爆発する。
■照明使いの妙が光る映像表現
監督は照明を面白く使用している。経録と美貞の初対面では、恐怖ともとれるように電灯が消えたり点いたりを繰り返し、強烈な初対面を描き出す。経録が美貞と出会いバスに乗るときに映る光は、多義的な意味を持たせている。
クラシック映画と古典音楽を愛する主人公たちと相まって、ナレーションと台詞が混在するシーンは新鮮だ。会話をしていたが、ナレーションのように続く瞬間は、吹き替え映画や古典名作を観ているかのような感覚をもたらす。映像美と音楽も適切だ。美しく爽やかである。過去に来たかのような、薄くほこりが被ったような感覚は、『パバンヌ』が与えるアナログ的な楽しみを演出している。状況に応じて変わる音楽も聴く喜びがある。
経録と美貞がLPに関わる思い出があるように、クラシックと大衆音楽を行き来する音楽の使い方が魅力的だ。時には確実にベタベタとした音楽を機知に富んだ形で使用し、楽しさを提供している。
■3人の俳優が織りなす完璧なアンサンブル
文尚民はボード(スケートボード)の演技から歌、踊りまで、すべてを燃やし切る。みずみずしい経録を完成させた。駐車場で繰り広げられるボード演技はスピード感を感じながらも自由な感覚を与え、現代舞踊では夢を探す青春の幸福を表現している。高アソンと絡むときは可愛らしくも迫力のある魅力を見せ、変要漢との掛け合いではユーモラスな魅力が引き出される。
高アソンはビジュアル的にインパクトを残す。装飾しない素朴な姿がポイントだからだ。素に近いビジュアルを消化した高アソンは、登場時点で周囲を驚




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