世界中で愛されている韓国ドラマや映画。胸キュンなラブシーンや、時には息を呑むような大胆な濡れ場など、俳優たちの熱演は私たちの心を捉えて離しません。しかし、その華やかな映像の裏側で、俳優たちがどのような思いでカメラの前に立っているか、考えたことはありますか?
今、韓国の制作現場では、俳優たちの心身を守るための大きな変化が起きています。そのキーワードとなるのが「インティマシー・コーディネーター(親密なシーンの調整役)」の存在です。今回は、韓国エンタメ界で急速に普及しつつある、この「制作現場の守護神」とも言える役割と、その背景にある韓国社会の変化について詳しくお伝えします。
■「脱ぎたくない」と言えなかった過去との決別
韓国の映画やドラマの現場では、かつて監督の権限が絶対的でした。脚本にはなかった露出シーンを現場で突然要求されたり、「作品のために」という言葉で俳優に無理な演技を強いたりする、いわゆる「甲質(カプチル:地位を利用したパワハラ)」が問題視されることも少なくありませんでした。
特に女性俳優にとって、性的なシーンの撮影は大きな心理的負担を伴います。撮影後にトラウマを抱えたり、同意のない身体接触に苦しんだりするケースも後を絶ちませんでした。こうした現状を打破するために注目されているのが、インティマシー・コーディネーターです。
この役割は、露出シーンや身体接触があるシーンにおいて、監督と俳優の間に立ち、事前に「どこまで可能か」を細かく調整する専門家です。撮影現場では、俳優が不快感を感じないよう代弁し、安全な環境を整える「盾」のような存在なのです。
韓国映画性平等センター・ドゥンドゥン(한국영화 성평등센터 든든、映画界の性暴力被害支援や予防教育を行う機関)などの尽力により、最近ではNetflix(ネットフリックス)などのOTT(インターネットを通じて配信される動画配信サービス)作品を中心に、この専門家を導入するケースが急増しています。
■「パルリパルリ」から「安全第一」へ、韓国の意識変化
なぜ今、韓国でこれほどまでに「現場の安全性」が強調されるようになったのでしょうか。そこには、韓国特有の文化的背景と、グローバル市場への進出が深く関わっています。
韓国といえば、何事もスピーディーに進める「パルリパルリ(早く早く)」文化が有名です。ドラマの制作現場でも、かつては「生放送」に近い過酷なスケジュールで撮影が行われ、効率が最優先されてきました。しかし、世界中でK-コンテンツがヒットし、Netflixなどのグローバル企業と協業する機会が増えたことで、欧米基準の「人権尊重」や「安全ガイドライン」が韓国の現場にも持ち込まれるようになりました。
また、儒教的価値観が根強く残る韓国社会では、長らく「目上の人の指示は絶対」という風潮がありました。しかし、2018年頃から韓国を席巻した「#MeToo運動」を経て、若手俳優を中心に「自分の権利を主張すること」の大切さが広く認識されるようになったのです。
最近では、人気俳優のカン・ミョンジュ(강명주)らも、制作現場での性差別の撤廃や、俳優の保護を訴える活動に賛同しています。彼女たちが声を上げることで、業界全体の空気は確実に変わりつつあります。
■具体的に現場で何が行われているのか?
インティマシー・コーディネーターが現場に入ると、具体的に何が変わるのでしょうか。
まず、撮影前に俳優一人ひとりと面談を行い、「触れられても大丈夫な場所」「露出できる範囲」を契約書レベルで明確にします。撮影当日は、俳優の肌を守るための「パッチ(肌を保護する粘着テープ)」や「肌色のアンダーウェア」などの小道具を準備し、カメラに映らない部分でも俳優が安心できる環境を作ります。
また、監督が「もっと激しく」と要求した際も、コーディネーターが「それは事前の合意を超えています」とブレーキをかける役割を担います。これにより、俳優は「わがままだと思われるかも」と心配することなく、安心して演技に集中できるようになりました。
こうした取り組みは、単に俳優を守るだけでなく、作品の質を高めることにも繋がっています。俳優が精神的に安定しているからこそ、より深く、リアルな感情表現が可能になるからです。
■私たちファンが応援できること
私たちが大好きな作品が、誰かの犠牲の上に成り立っているのではなく、すべてのスタッフ・キャストが尊重される環境で作られている――。そう知るだけで、作品を見る時の安心感や没入感も変わってくるはずです。
今後は、エンドロールに「Intimacy Coordinator」の名前を見つけることが当たり前になっていくでしょう。韓国エンタメが世界一と言われる理由は、ストーリーの面白さだけでなく、このように時代に合わせてアップデートし続ける「現場の柔軟さ」にもあるのかもしれません。
皆さんは、好きなドラマのメイキング映像などで、現場の雰囲気の良さを感じたことはありますか?最近の韓国ドラマを見ていて「昔より俳優さんがのびのび演じている気がする!」と感じる作品があれば、ぜひコメントで教えてくださいね。
出典:https://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0003215311&CMPT_CD=P0010&utm_source=naver&utm_medium=newsearch&utm_campaign=naver_news
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