韓国映画界を象徴する「興行の神」として君臨してきた名優ハ・ジョンウ(하정우)が、大きな転換点を迎えています。
なんと、彼が約19年ぶりにテレビドラマの世界に戻ってくることが発表されました。作品タイトルは『大韓民国でビルオーナーになる方法(原題)』。彼が最後にテレビドラマに出演したのは2007年のMBCドラマ『H-it[ヒット](連続殺人犯を追う女性刑事の活躍を描いた捜査劇)』ですから、まさにファンにとっては待ちに待った、そして少し驚きのニュースです。
なぜ、映画界のトップスターである彼が今、あえて「お茶の間」への復帰を選んだのか。そこには、現在の韓国エンタメ界が直面している厳しい現実と、ハ・ジョンウ自身の俳優としての覚悟が隠されていました。
■「興行不敗」の神話に陰り?ハ・ジョンウが直面した試練
ハ・ジョンウといえば、日本人ファンの間でも『暗殺』や『お嬢さん(パク・チャヌク監督による官能的サスペンス)』、『神と共に(死後の世界を描いた大ヒットファンタジー)』シリーズなど、数々のメガヒット作で知られる「信じて見る俳優(出演作なら間違いない、という意味の韓国の褒め言葉)」の代名詞でした。
しかし、ここ数年の彼の歩みは、決して順風満帆とは言えませんでした。2022年に配信されたNetflixシリーズ『ナルコの嵐(原題:スリナム)』こそ世界的な話題をさらったものの、スクリーンでの成績は苦戦が続いています。
『非公式作戦(原題)』『1947 ボストン』『ハイジャッキング(原題)』、そして最新作の『ブロークン(原題)』と、期待された作品が次々と興行面で伸び悩みました。また、彼自身が監督を務めた作品も、観客から熱狂的な反応を得るまでには至りませんでした。
かつては「ハ・ジョンウという名前だけで観客が入る」と言われたほどの圧倒的なブランド力に、今、変化が起きているのです。
ここで少し、韓国の文化的な背景を補足しましょう。韓国では日本以上に「映画俳優」と「ドラマ俳優」の境界線がかつては明確でした。特にトップクラスの映画スターがドラマに出演することは、ある種の「格下げ」と見なされる時代もありました。
しかし近年、韓国の映画市場は観客数の減少と投資の冷え込みという二重苦に喘いでいます。一方で、OTT(動画配信サービス)の台頭により、ドラマのクオリティは飛躍的に向上しました。かつての「映画スター」たちが、より長い時間をかけてキャラクターを深掘りできるドラマやシリーズ作品へ活動の場を広げるのは、今の韓国芸能界では合理的な選択となっているのです。
■「ビルオーナー」というタイトルの裏側と、彼が語った「朝・昼・晩」の哲学
復帰作となる『大韓民国でビルオーナーになる方法』というタイトルにも、韓国ならではの世相が反映されています。
韓国では「創造主の上にビルオーナー(建物主)あり」という言葉があるほど、不動産収入で暮らすビルオーナーは、誰もが羨む「成功者の最終形態」として語られます。熾烈な競争社会の中で、誰もが一度は夢見る「ビルオーナー」という題材を、ハ・ジョンウがどう演じるのか、タイトルだけで期待が高まります。
今回のドラマ復帰について、ハ・ジョンウ本人は「成績が振るわないからといって、戦略を変えたわけではない」と語っています。
制作発表会で彼は「一人の人間が一生の仕事として俳優を続けるなら、こういう(不振の)時期も経験し、受け入れなければならない。朝があり、昼があり、夜があるように、この作品が輝かしい太陽が昇る『朝』になることを願っている」と、非常に謙虚かつ力強い言葉を残しました。
この「朝・昼・晩」という表現は、非常に彼らしい比喩です。一時の成功に一喜一憂せず、俳優という人生を長いスパンで捉えている彼の哲学が感じられますね。
■最強のパートナー、ユン・ジョンビン監督との「背水の陣」
ドラマ復帰の一方で、彼は自身の原点とも言える場所でも勝負をかけています。それが、盟友ユン・ジョンビン(윤종빈)監督との再タッグです。
二人の絆は、ハ・ジョンウの出世作『許されざるもの(軍隊内の人間模様を描いた独立映画)』から始まりました。その後、『ビースティ・ボーイズ』『悪いやつら(韓国の犯罪映画の金字塔)』『群盗』、そして『ナルコの嵐』に至るまで、韓国映画界で最も象徴的な「監督・俳優コンビ」として知られています。
ユン・ジョンビン監督は、男たちの集団の中にある上下関係や暴力、欲望、裏切りを鋭く描き出すことで定評があります。ハ・ジョンウは、その荒々しくも複雑な内面を持つキャラクターを演じる時、最もその真価を発揮すると言われています。
現在撮影中の新作映画『普通の人々(仮題)』で、二人は再び手を組みました。業界では「この二人の再会なら間違いない」という期待と同時に、「お馴染みの組み合わせゆえの新鮮さの欠如」を危惧する声もあります。まさに、彼らにとっても「背水の陣」とも言える重要な一戦なのです。
■まとめ:ハ・ジョンウの「第2章」が始まる
19年ぶりのドラマ復帰と、盟友との映画制作。ハ・ジョンウはいま、自身のキャリアにおける大きな荒波を、真っ向から受け止めようとしています。
韓国のファンやメディアは、これを単なる「スランプ脱出のためのあがき」ではなく、一人の巨匠がさらなる高みへ登るための「充電と挑戦」の期間として見守っています。
『大韓民国でビルオーナーになる方法』で見せてくれる新しい顔、そしてユン・ジョンビン監督との新作で見せる牙。この二つのプロジェクトが、彼に再び「輝かしい朝の太陽」をもたらすのか、その行方に注目が集まっています。
『チェイサー』の頃のギラついた彼も素敵でしたが、酸いも甘いも噛み分けた今のハ・ジョンウが演じる「ビルオーナー」や「普通の人」は、きっと深みが違うはず。皆さんは、ハ・ジョンウのどんな演技をまた見たいですか? 彼のドラマ復帰、楽しみに待ちましょう!
出典:https://www.dailian.co.kr/news/view/1620457/?sc=Naver
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